昨日の台風8号は、幸いなことに神奈川県では予報で言われていた程には大きな被害は出ませんでした。それでも昨日の悪天候から一転して今日はまた厳しい暑さが戻り、そこに昨日の雨が一気に蒸発して一段と不快指数の高い日となりました。
こう暑いと、人間どうしても爽やかな気分になれるものを欲するものです。で、耳にも爽やかなものをと思って、今日は
ハイドンの《クラヴィーア協奏曲ニ長調》を聴くことにしました。
ハイドンは1750年から1770年頃にかけて鍵盤楽器のための協奏曲を何曲か書いていますが、このニ長調はそれよりも後の1780年代の曲とみられていて、作曲の経緯や正確な作曲年代は明らかではありませんが1784年にウィーンのアルタリア社から作品37として出版されています。1781年頃にハイドンはモーツァルトと親しくなっていることから、この曲には後輩であるモーツァルトのピアノ協奏曲からの影響が他のクラヴィーア協奏曲よりも多く見られるものとなっています。
《クラヴィーア協奏曲ニ長調》はウィーンでの出版と同じ年に、パリとロンドンからも出版されました。出版された時のタイトルは『チェンバロまたはフォルテピアノのための協奏曲(Concerto per il clavicembalo o fortepiano)』となっていて、チェンバロでもピアノでもどちらでも演奏できるように書かれています。
ハイドンのピアノ・ソナタや弦楽四重奏団にみられるような軽やかなメロディラインが楽しい第1楽章、穏やかな中にもハイドンらしい転調を重ねて展開していく第2楽章、そして『ハンガリー風ロンド』というタイトルが付けられた心浮き立つような第3楽章と、円熟期に入ったハイドンならではの充実した音楽が展開されていきます。勿論チェンバロでの演奏もいいのですが、軽やかな音色のフォルテピアノで聴いてみるとチェンバロでの重厚さとはまた違った魅力が感じられます。
そんなわけで、今日はハイドンの《クラヴィーア協奏曲ニ長調》をお聴きいただきたいと思います。チェンバロやモダンピアノとは一味違う、フォルテピアノならではの素朴な音色での演奏をお楽しみください。