今日も日中は暑くなりました。9月に入ってから涼しい日が続いていましたが、どうやらあの涼しさは幻だったようです…。
さて、今日9月13日はイタリアの作曲家ジローラモ・フレスコバルディ(1583〜1643)の誕生日です。
…誰?と思われるかも知れませんが、イタリア古典歌曲集の歌を歌ったことのある方には、ある意味お馴染みの作曲家です。
現在のイタリア・フェラーラに生まれたフレスコバルディは、1608年にはローマカトリックの総本山であるサン・ピエトロ大聖堂のオルガニストに就任したほどの人物でした。また1628年から1634年まではフィレンツェ・メディチ家の宮廷オルガニストも務めています。
フレスコバルディの作品の大多数はオルガンやチェンバロのために作曲されたもので、後に門人であるヨハン・ヤーコプ・フローベルガー(1616〜1667)によって当時のフランスとドイツの音楽界に紹介され、両国のバロックオルガン楽派に多大な影響を与えました。また1635年には自身が作曲したミサに用いるオルガン曲をまとめた《音楽の花束》を発表していますが、この曲集はバッハが筆写譜を蔵書していたほど有名な作品でした。
鍵盤作品で有名なフレスコバルディですが、歌曲もいくつか遺しています。中でもとりわけ有名なのが《そよ風吹けば(Se l'aura spira)》という作品です。
この曲は
音楽大学生や声楽を習った方々なら必ずお世話になるイタリア古典歌曲集にも収録されているので、もしかしたら御存知の方もおられるかと思います。歌詞の大意は
Se l'aura spira tutta vezzosa, la fresca rosa ridente sta,
la siepe ombrosa di bei smeraldi d'estivi caldi timor non ha.
A balli, a balli, liete venite, ninfe gradite, fior di beltà.
Or, che sì chiaro il vago fonte dall'alto monte al mar sen'va.
Suoi dolci versi spiega l'augello, e l'arboscello fiorito sta.
Un volto bello all'ombra accanto sol si dia vanto d'haver pietà.
Al canto, al canto, ninfe ridenti, scacciate i venti di crudeltà.
そよ風が爽やかに吹けば瑞々しく薔薇の花は咲きこぼれ、
美しくエメラルド色に繁った生け垣は夏の暑さを恐れない。
楽しく踊り集え、美しい花のような麗しのニンファ達よ。
美しき泉が山頂から湧き出して海へと流れゆく今、
鳥は優しく唄を奏で、若木は花を付けていく。
木陰に寄りそう面影よ、誇りのままにその慈悲を与えよ。
歌に集え、さざめき笑うニンファ達よ。無慈悲な風を追い払え。
というものです。そして、この詞につけられたフレスコバルディの音楽は何とも軽やかで、小品ながら一度聴いたらスッと印象に残るものとなっています。
そんなわけで、今日はフレスコバルディの誕生日によせて《そよ風吹けば》の演奏動画を転載してみました。昨日のマーラーとは違って(笑)たった2分少々の小品ですが、イタリア初期バロックの一輪の花の如き佳曲をお楽しみください。