今日もいいお天気の一日となりました。と同時に、かなり雨が降らない日が続いているので、乾燥が気になるようにもなっています。
ところで今日、6年生の音楽の時間に邦楽の鑑賞がありました。最初に紹介されたのは、
千年前から続く世界最古の宮廷楽団である宮内庁楽部をはじめ、様々な社寺によって連綿と伝えられてきた雅楽です。その例として鑑賞教材に採り上げられたのは、言わずと知れた雅楽の代表的楽曲《越天楽》です。
音楽の先生の解説を聞いているだけでは何だかよく分からなそうな顔をしていた子どもたちですが、CDで曲が流れるとほぼ一様に
「あぁ〜!」
という反応を示していました。恐らく初詣に行った時に神社でかかっていたりしたのを、聴くともなく聴いていたのかも知れません。
…と思っていたら、子どもたちから一番多く出た反応が
「結婚式で流れる曲じゃん!」
というものでした。確かに神式の結婚式では三々九度の盃を交わすような場面でのBGMとしてかけられることが多いかも知れません。
しかし、どのクラスにもヤンチャな奴はいるもので、一人の男子がいきなり
「眠いしダサいし、結婚式にしか使い道ない曲なんかつまんないの。」
と言い放ちました。そこで一瞬空気が悪くなりかけたので、ちょっと出過ぎた真似かと思いつつ
「そうでもないですよ。確かに今聴いた『平調』の《越天楽》はお祝い事に使われることが多いですけど、同じ《越天楽》でも『盤渉調』という調で演奏するバージョンはお葬式に使いますから。」
と釘を刺したら
「えぇ〜っ?!」
と逆に騒然となってしまいました(汗)。
雅楽には大まかに6つの調 〜 平調(ひょうぢょう)・双調(そうぢょう)・太食調(たいしきちょう)・壱越調(いちこつちょう)・黄鐘調(おうしきちょう)・盤渉調(ばんしきちょう) 〜 があり、用途や場面によって使い分けられています。この6つの調性の何が違うのか…ざっくり言うと、それぞれ基準となる音の高さが違います。
例えば雅楽全体の基調でもある平調は西洋音階のミの音が基準となり、それで演奏される《越天楽》が明るい響きであることに対して、盤渉調はシの音が基準となり、それで演奏される《越天楽》は憂いや哀愁を帯びた響きであると考えて頂ければいいと思います。盤渉調で演奏される《越天楽》は一般的な平調のものよりも抑制された響きがするため、そのこともあってか今日ではよく神式の葬儀でよく聞かれます。
こうした調性の使い分けは、特に西洋の教会音楽の世界にも存在しています。例えば同じレの音を基準とした調性でも、明るいニ長調は『神の栄光』を意味するものとして祝典的な楽曲に使われることが多いのに対して、暗いニ短調は『死』を意味するものしてレクイエムで使われることが多くなります。
勿論完全に一致するわけではありませんが、それでも音楽の特定の調性にある性格をもたせる傾向が洋の東西を問わずあるということは、何とも興味深いものです。
そんなわけで、今日は盤渉調での《越天楽》を聴いてみて頂きたいと思います。平調のものはお馴染みだと思いますが、盤渉調のものを聴いてみると恐らく
「同じ曲なの?!」
と驚かれると思います。
他の国には無い、日本国に千年続く音楽をお楽しみください。