共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

今日はグノーの誕生日〜時を超えたバッハとのコラボレーション《アヴェ・マリア》

2022年06月17日 17時30分17秒 | 音楽
朝のうちこそ涼しかったものの、今日は事前の予報通りの暑さに見舞われました。ここ数日の涼しさに慣れきっていた子どもたちも久々の暑さにすっかりバテ気味になっていて、特に午後からの授業は後ろから見ていても気の毒なくらいでした。

ところで、今日6月17日はグノーの誕生日です。



シャルル・フランソワ・グノー(1818〜1893)はフランスで活躍した作曲家です。『フランス近代音楽の父』とも呼ばれ、美しい旋律や色彩感に満ちたハーモニーを伴った優雅でやさしい音楽は、今日も広く愛されています。

パリ近郊のサン・クルーに生まれたグノーはピアニストの母から音楽の手ほどきを受け、少年時代から楽才を発揮しました。1835年にはパリ音楽院に入学し、ピアノや作曲などを学んびました。

1839年にはローマ大賞を受賞し、翌年から3年間ローマに留学しました。この間にメンデルスゾーンの姉ファニー・ヘンゼルと出会い、バッハ、ベートーベンらのドイツ音楽を深く知るようになります。

またバチカンのシスティーナ礼拝堂でパレストリーナの音楽を聴き、説教師ラコルデールと出会ったことから宗教に傾倒したグノーは一時は聖職者を目ざし、パリ帰着後も1850年までは世俗を離れて宗教音楽の作曲と演奏に専心しました。1851年に友人の歌手のためにオペラ《サッフォー》を作曲したのを機にオペラに進出したものの成功しませんでしたが、一方で1855年に発表した《聖チェチーリア荘厳ミサ曲》が成功したことで、グノーの名は一躍高まることとなりました。

1859年に発表したオペラ《ファウスト》は大成功し、1869年にバレエ付きのグランド・オペラに改作した版により一層の成功を勝ち得たことで、グノーはオペラ作曲家として注目されるように》なりました。その後、1864年発表の《ミレイユ』、1867年発表の《ロメオとジュリエット》などで立て続けに成功を収めました。

さて、グノーと言われても今一つピンとこない方が多いかと思いますが、《グノーのアヴェ・マリア》といえばご存知の方も多いのではないでしょうか。

《グノーのアヴェ・マリア》はグノーが1859年に、



ヨハン・セバスティアン・バッハの《平均律クラヴィーア曲集 第1巻》の「前奏曲 第1番 ハ長調」を伴奏にして、そのメロディの上にラテン語の聖句「アヴェ・マリア」を歌詞に用いて完成させた声楽曲です。19世紀フランスの歌曲レパートリーとしての枠を越えて、ヴァイオリンやチェロ、フルートといった様々な楽器とピアノのための二重奏曲として編曲されたものもよく演奏されています。

ただ、実はグノーの引用した伴奏譜は、厳密にはバッハのものとちょっと違います。というのも、この伴奏には前奏曲1番の22小節目の後にクリスティアン・フリードリヒ・ゴットリープ・シュヴェンケ(1767〜1822)という後の時代の人物が新しい音形を1小節挿入したものが使われているのです。

シュヴェンケがどうしてこの1小節をバッハに付け足してしまったかは定かではありません。ただ、この1小節が入ったことによって、歌曲の伴奏としては自然な流れのものとなっていることは確かです。

そんなわけで、グノーの誕生日である今日はその《アヴェ・マリア》をお聴きいただきたいと思います。ディアナ・ダムラウのソプラノとグザヴィエ・ド・メストレのハープによる演奏で、バッハとグノーによる130余年の時を超えたコラボレーションをお楽しみください。



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 待てど暮らせど来ぬ人を… | トップ | ワルター・フォルテピアノに... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。