今日は日中はよく晴れて、気温も上がりました。昼間は相変わらず水分補給が欠かせない状況が続いています。
ところで、今日9月10日は中秋の名月です。例年この時期は天気が悪くなることが多いのですが、今年は天気が良くなったので
このくらいには名月を観ることができました。
肉眼では、もっとハッキリと月を観ることができていましたが、スマホのカメラではこれが限界のようです。折角機種変更して新しいスマホになっても、こればかりはどうにもならなそうです…。
まぁ、一応月が出なかった時のために
コンビニでお月見団子も買ってきて、仏壇にあげておきました。もっと沢山入った山積みタイプの月見団子もあったのですが、一人暮らしで口がひとつしかない我が家にはこの串団子タイプで十分です(汗)。
さて、クラシック音楽にも月に関する音楽は数々あります。有名なところではベートーヴェンのピアノソナタ《月光》やドビュッシーの前奏曲《月の光》などがありますが、今日は
一昨日誕生日だったドヴォルザークの歌劇《ルサルカ》の中で歌われる『月に寄せる歌』を取り上げてみようと思います。
ドヴォルザークが1900年に作曲した歌劇《ルサルカ》は、簡単に言えばアンデルセン童話の『人魚姫』のようなストーリーです。オペラは全3幕から構成されていて、あらすじは以下の通りです。
【第1幕】
森の奥にある湖に住む水の妖精ルサルカは、ある日湖に泳ぎに来ていた人間の王子に恋をする。そして魔法使いのイェジババに「人間の姿の間はしゃべれない」「恋人が裏切った時にはその男と共に水底に沈む」ということを条件に人間の姿に変えてもらう。
美しい人間の娘になったルサルカを見た王子は彼女を見初め、城に連れ帰って結婚することを決める。
【第2幕】
結婚の祝宴でも口をきかないルサルカを冷たい女だと不満に思った王子は、祝宴にやってきていた外国の王女に心を移してしまう。
祝宴の中、居場所をなくしたルサルカが庭へ出ると、水の精たちによって池の中に連れ込まれてしまう。その様子を見た王子は恐怖のあまり王女に助けを求めるが、王女は王子を見捨てて逃げ去ってしまう。
【第3幕】
森の湖へ移されたルサルカに魔法使いは「元の姿に戻すには裏切った男の血が必要だ」と語ってナイフを渡す。しかしルサルカは「愛する王子を殺すことはできない」とナイフを湖に捨ててしまう。
ルサルカを探して湖にやって来た王子は、水の妖精たちから自分がルサルカを裏切ったことの罪を聞かされて、絶望的にルサルカを呼ぶ。
姿を現したルサルカに王子は抱擁と口づけを求める。それは王子に死をもたらすものだとルサルカは拒むが、王子は「この口づけこそ我が喜び、幸いのうちに私は死ぬ」と答える。
ルサルカは最早逆らうことをやめ、王子を抱いて口づける。その口づけを受けて落命した王子の亡骸を抱いて、ルサルカは共に暗い水底へと沈んでゆく。
そしてこのオペラで一番有名なのが、第1幕に登場する『月に寄せる歌』と題されたルサルカのアリアです。
『月に寄せる歌』は
Měsíčku na nebi hlubokém,
空の深みのお月さま、
světlo tvé daleko vidí,
あなたは遥か遠くから、 明るい光を送り出し、
po světě bloudíš širokém,
広い世界を移ろいながら、
díváš se v příbytky lidí.
人々の住みかを見つめている。
Měsíčku, postůj chvíli,
月よ、しばらくそこにいて!
řekni mi, kde je můj milý!
教えて、いとしい人はどこ?
Řekni mu, stříbrný měsíčku,
伝えて、銀のお月さま。
mé že jej objímá rámě,
私はあの人をいつもこの手に抱きしめている。
aby si alespoň chviličku
たとえ、束の間だとしても、
vzpomenul ve snění na mne.
私の夢を見るように。
Zasvit mu do daleka,
照らして…彼方のあの人に。
řekni mu, kdo tu naň čeká!
伝えて!ここで待ってると!
O mně-li duše lidská sní,
ああ人の心が、私の姿を夢に見れば、
at' se tou vzpomínkou vzbudí!
きっと目を覚ましてくれるでしょうに!
Měsíčku, nezhasni, nezhasni!
ああ、消えないで…お月さま消えないで!
という切ない恋心を歌ったアリアです。このアリアはオペラを離れて単独で歌われるだけでなく、そのメロディの美しさからヴァイオリンなどの楽器で演奏されることもあります。
そんなわけで、中秋の名月の今日はその『月に寄せる歌』をお聴きいただきたいと思います。儚い運命をたどる水の妖精の恋心を、ルネ・フレミングによる歌唱でお楽しみください。