今日は先週の疲れを取るべく休みました。あまりに休み過ぎて、気づけば午後になっていました…。
のそのそ起きてきてラジオをつけると、FMでマリア・カラスの歌う《椿姫》が流れてきました。
『おぉ、いい音楽が流れてるな。』
と思いつつ暫く聴いていたのですが、段々と耳が疲れてきてしまって途中でラジオのスイッチを切ってしまいました。《椿姫》自体は好きなのですが、どうも個人的にマリア・カラスの声、特にあるところから上の高い音域の声を長時間聴いているとコメカミのあたりがキンキンしてきてしまって疲れるのです。
ただ、折角《椿姫》を耳にしたので、どうせならちゃんと全編観たいなと思い、我が家にあるDVDを引っ張り出してきました。
これは1992年に、《椿姫》が初演されたヴェネツィアのラ・フェニーチェ歌劇場で行われた公演を収めたものです。ラ・フェニーチェ歌劇場は1996年に放火によって全焼してしまっている(2001年再建)ので、この映像は焼失前の貴重なものとなっています。
ヴィオレッタ…エディタ・グルベローヴァ
アルフレード…ニール・シコフ
ジェルモン…ジョルジョ・ザンカナーロ
指揮…カルロ・リッツィ
因みに、1853年にこの歌劇場で初演された《椿姫》の公演は大失敗だったといいます。理由は肺病で死にそうなはずのヴィオレッタを巨漢のソプラノがつとめてしまったためだとか…。
この映像は《椿姫》の初演された劇場でのものだけあって、演奏し慣れたオーケストラや合唱団、きちんと作り込まれた舞台、そして安定感のあるソリスト群に恵まれています。特にプリマドンナであるエディタ・グルベローヴァの歌唱はヴィオレッタの過酷で哀しい運命を、時に激しく、時に切々と歌い上げていて、聴くものの胸に迫ってきます。
その完璧に近い歌唱ゆえに、ともすると「機械人形のよう」とも評されるグルベローヴァですが、華やかな夜会からひとり残されて歌う名アリア『ああ、そは彼の人か〜花から花へ』ではアルフレードに抱いた本当の愛に揺れる心を歌い上げますし、ジェルモンに促されて心ならずもアルフレードとの別れを決意する場面はあまりにも切なく、胸が締め付けられる思いになります。
すっかり忘れていましたが、もしコロナウィルス騒ぎが無ければ昨日は演奏会だったはずでした。今はオペラどころかそんな演奏会までが開けない状況ですが、いつかまたこんな舞台に関われるようになる日が来ることを待ちたいと思います。
このDVDと同じ映像の動画があったので、以下に転載しました。グルベローヴァによる『ああ、そは彼の人か〜花から花へ』をお聴きください。