共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

今日は《ローエングリン》初演の日〜『エルザの大聖堂への行列』

2021年08月28日 17時50分50秒 | 音楽
今日も今日とて神奈川県には熱中症警戒アラートが発令され、危険な暑さとなりました。割りと曇天模様だったにもかかわらずこれだけの暑さになったわけですから、天気予報で言われている『9月から気温が落ち着いてくる』という言葉が、にわかには信じられなくなっております…。

ところで今日8月28日は、ヴァーグナーの歌劇《ローエングリン》が初演された日です。



1843年、ヨハン・ヴィルヘルム・ヴォルフが編纂した『オランダ伝説集』が出版されました。この伝説集の中に



コンラート・フォン・ヴュルツブルクによる『白鳥の騎士』という話が含まれていて、ヴァーグナーはこれを読んで歌劇の着想を得たと考えられています。

1845年11月、前作《タンホイザー》のドレスデン初演の直後にヴァーグナー自ら《ローエングリン》の台本を完成させました。翌年春から作曲にとりかかって1847年8月には全3幕のオーケストラのスケッチを完成させ、1850年の今日、フランツ・リストの指揮によってヴァイマール宮廷歌劇場で《ローエングリン》が初演される運びとなりました。

ヴァーグナーは何とかして《ローエングリン》の初演を観たいと思っていましたが、実は前年の1849年に無政府主義者たちと共に参加したドレスデンでの5月蜂起が失敗して体制側から指名手配されてしまい、リストの助けを得てスイスのチューリヒに亡命していた身でした。その協力者たるリストに制止されたこともあってヴァーグナーは初演を観ることを断念せざるを得ず、結局自身が全篇上演を観ることが叶ったのは初演から10年以上も経った1861年、ヨハン・シュトラウス2世がヴァーグナー紹介に努めたウィーン宮廷歌劇場による舞台でした。

この《ローエングリン》には第1幕や第3幕への前奏曲や、今でも結婚式でよく使われる『結婚行進曲』といった数々の名曲がありますが、私が個人的に印象深いのが『エルザの大聖堂への行列』の音楽です。

『大聖堂への行列』は第2幕第4場でヒロインのエルザが騎士ローエングリンとの婚礼を挙げるために大聖堂へと向かう場面で奏される音楽で、木管楽器による祈りにも似た清楚な旋律から始まって次第に高揚していきます。原曲では主役の二人を祝福する合唱が加わりますし、曲のクライマックスで悪役であるオルトルートが行列の邪魔をしに来ますが、演奏会用に編曲されたものでは無事に明るく終わります。

この曲は単体でも採り上げられることがあり、初演の指揮者を務めたフランツ・リストによるピアノ編曲版(『タンホイザーとローエングリンからの2つの小品 S445』の2曲目)も存在しています。また冒頭部から管楽器が大活躍することもあってか吹奏楽編曲による演奏もよく知られていて、吹奏楽コンクールでは金賞を獲るような学校がよく自由曲に採り上げています。

私がこの曲と出会ったのは、吹奏楽コンクールに参加していた中学生の頃でした。当然ながら上手な学校の吹奏楽部が自由曲として演奏していたのですが、柔らかな木管楽器のアンサンブルから始まって徐々にクライマックスに進んでいく音楽を聴きながら

『いい曲だなぁ…』

と聴き惚れていたことをよく覚えています。

そんなわけで、《ローエングリン》の初演された日である今日は、私の個人的思い入れの深い『エルザの大聖堂への行列』の動画を転載してみました。ヴァーグナーならではの分厚いアンサンブルの響きをお楽しみください。



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