今日も日中は暑くなりました。朝夕が涼しいだけに、日中の厳しい暑さが身体に堪えます…。
ところで、今日9月5日はヨハン・クリスティアン・バッハの誕生日です。
ヨハン・クリスティアン・バッハ(1735〜1782)はヨハン・セバスティアン・バッハ(1685〜1750)の末子としてドイツに生まれた作曲家・クラヴィーア奏者で、イタリアでデビューした後で主にロンドンに住み、オペラ作曲家として、またコンサートの開催によって名声を得ました。
父の大バッハがドイツ国内で生涯を終えたのと違い、ヨハン・クリスティアン・バッハはイタリアで人気を得た後にロンドンに移住し、そこで成功を勝ち得たために『ロンドンのバッハ』とも呼ばれていました。そのロンドンでは幼いモーツァルトとも対面し、その後のモーツァルトの作品にも多大な影響を与えました。
ヨハン・クリスティアン・バッハの時代はバロック音楽が終焉し、古典派に連なる新たな音楽の波がやってきていました。オペラの序曲であるシンフォニアから独立したソナタ形式での交響曲などが作られ、やがてハイドンやモーツァルト、ベートーヴェンへと発展して行くこととなります。
大バッハに比べ、とかく息子たちはその存在が忘れられがちです。しかし、現在主流の音楽は実はこの時代に萌芽してきたものと言っても過言ではなく、逆に言えばヨハン・クリスティアン・バッハがいなければ古典派の姿はもっと違ったものになってしまっていたかも知れないのです。
そんなヨハン・クリスティアン・バッハの作品から、今回は《交響曲ト短調 作品6-6》を取り上げてみようと思います。この曲はヨハン・クリスティアン・バッハが1770年頃にオランダ・アムステルダムで出版した『6つの交響曲作品6』の最終曲で、第1番が1764年に完成していたことが判明しているので、この作品もそれに近い頃に完成したものと思われています。
1764年というと、ちょうどモーツァルトがロンドンに滞在していた時期と重なります。実際にモーツァルトがロンドン郊外のチェルシーで書いたスケッチブックにはト短調の交響曲の断片が収められていて、そこには映画『アマデウス』のオープニングテーマとして有名になった《交響曲第25番ト短調》の特徴が見出されていることから、モーツァルトの創作にヨハン・クリスティアン・バッハのこの交響曲が少なからず影響を及ぼしているのではないかと言われています。
そんなわけで、今日はヨハン・クリスティアン・バッハの《交響曲ト短調 作品6-6》をお聴きいただきたいと思います。モーツァルトの名交響曲に影響を与えたという、疾走感あふれる前古典派の名作をお楽しみください。