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野次馬

 私の市の市議会議員選挙は早くも終盤を迎え、選挙カーからの叫び声も悲鳴に近くなってきた。誰も応援していない私はただじっと様子を窺っているだけだが、近隣に住む候補者の動向はやはり気になる。A候補の選挙事務所には人が少ないだとか、B候補は動きが活発だとか、もれ伝わってくる情報も多くなってきた。そんな折、私が以前このブログで取り上げた市会議員候補の応援に、衆議院議員の亀井静香がやって来ることになり、物好きな私は出かけてみた。
 午後2時に近所の空き地で応援演説をするという話だったから、先に用事を済ませておこうと1時頃に選挙事務所の横を通ったら、もう亀井議員が壇上に上って演説を始めていた。
  「おお、亀井静香だ!」とまるで芸能人を見たような反応をした
 妻に、「写真を撮ってくれ」とカメラを渡した私も同じくらいミーハー
 だが、こんな田舎に全国的に知名度の高い人物が来ることなん
 て滅多にないことだから、ついつい浮かれてしまう。議員の「どう
 せ泣くなら、勝って泣きましょうよ」などと、浪花節的な第一声は
 車の中からでも聞こえた。さすがに、演説はうまいものだな、と感
 心しながらその場を通り過ぎた。
  用事を済ませて、また選挙事務所の近くを通ったら、人だかりがしていてまだ亀井議員はいるようだった。「じゃあ、見に行くか」とすぐ横にある親戚の家の駐車場に車を停めて、事務所まで歩いていった。すると、演説を聴きに来た人たちと記念撮影をしている議員の姿が見えた。「何てサービス精神の旺盛なおっさんだ」と感心したが、さすがに近くまで行くのは憚れた。離れたところに立っていたら、私の従姉妹が子供を抱いてやって来たのでしばらく話をした。すると、
「本当は空き地でやるはずだったけど、人が少ないから選挙事務所の前でやることになったよ」と裏話を教えてくれる。さらに、「あの背広の人たちは警察だって。5人いるらしいよ」と小声で話すので、じっと見ていたら、確かに耳にイヤホンをした男たちが亀井議員が動くのを囲むようにしている。絶えず周囲に目を配りながら、油断ない素振りをしている。「本当だ!」と思ったが、長崎市長が銃撃されたばかりだから、要人の警護には神経を尖らすのも当然だ。長崎市長の死は私にも大きな衝撃だった。犯人が市との間にトラブルがあったとも報道されているが、暴力によって物事を解決しようとしては絶対にならない。そうした当たり前のことが当たり前でなくなりつつある現代の危うさが浮き彫りにされたようで暗澹たる思いがする。
 そうした身の危険がいつ及んでくるかもしれない恐怖を、事件後政治家誰もが味わっているだろうが、それにひるんではならないと思う。亀井議員もそうした決意を持って全国を遊説して回っているのだろうが、表面上はあくまでも飄々としている。写真撮影が終わった後は壇上に戻ってなにやら訳の分からぬ歌を一曲歌った。陽気というか豪胆というか、いくら護衛に守られているとはいえそこまで伸びやかに振舞えるのはすごいものだ、などと言っては買いかぶりすぎだろうか。


応援を受けた候補者は、亀井議員の所属する政党から公認をもらって選挙戦を戦っている。初めは政党の公認候補というのを前面に押し出していたが、反発する声が高まったのか、途中から政党名を叫ばずに、「地元の候補」というのを連呼するようになった。亀井議員の応援で事態が好転するとは思えないが、私としては政治の中央で長く活動できる男のしたたかな一面を間近で見られたのは勉強になった。やはり女性と記念写真を撮るときは相手の肩に腕を回して親密さをアピールすることが肝要なんだな・・・。
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