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自転車

 最近妻が自転車に乗りたいと言い出した。妻は自転車に乗れない、と言うか乗ったことがない。生家が、ダンプの走り回る道路近くにあったものだから、自転車に乗ることは危険だと思った両親によって禁じられていたのだそうだ。乗れないことを不自由に感じたことはあまりなかっただろうから、何を急に言い出すのか、とたずねたところ、最近のガソリン価格の高騰に伴い、買い物には自転車で行ったほうがお金がかからなくてすむ、などと殊勝なことを思いついたからだと答えた。確かにそれはそうであろう、自転車に乗れれば、ガソリン代が浮くだけでなく、環境にも配慮することになるし、適度な運動ができて体にもよい。それは良いに決まっているが、いかんせん妻も私と同い年で今年の末には50歳になる、そんな年で自転車に乗れるようになるなんてことが可能だろうか?かなりのチャレンジャーである。一笑に付すこともできようが、その心意気は買うべきだと思って、一度試してみた。
 自転車は娘が乗っていたママチャリ、簡単な変速機が付いたごくシンプルなタイプのものだ。


もう何年も倉庫の隅に放置してあったので、各所が錆ているしタイヤもパンクしていた。気づいた父がパンクを直してくれたので、何とか乗れるようにはなったが、初心者には少々乗りにくいかもしれない。でも、いつ挫折するかもしれないのだから、これで我慢するしかない。
 さあ、練習だ。サドルにまたがった妻を私が後ろの荷台を持って進ませようとするが、ペダルを漕ぐということをしたことがない妻は、どうしたらいいのか分からないらしい。ペダルに足を乗せることさえ覚束ないのだから、困ってしまった。無理やり私が自転車を押してみても、1m行くか行かないうちに足を地面についてしまう。「だって転ぶと痛いし・・」それじゃあ無理だ、転びながら覚えていくものなのに・・。様子を見ていた父が私に代わって自転車を押す役を買って出た。「子供や孫は全部こうやって俺が乗れるようにしてやったが、まさか嫁さんまでもやるとは思わんかった」などと苦笑しながらも、まんざらではなさそうだ。一生懸命後ろで支えてくれたが、やっぱりどうにも進歩しない。ダメだな・・。
 その日はそれで中止したが、何か良い手はないかと考えてみた。その結果、何の準備もなくいきなりペダルを漕がせるというのは無理だと言う結論に達した。やはり子供たちがするように補助輪の付いた自転車から始めて、ペダルを漕ぐ感覚を覚え、平衡感覚を徐々に身に付けていくのが望ましいと思った。しかし、問題は補助輪だ。子供たちがつけていた補助輪を探してみたが見つからない。自転車屋に行って、大人用の自転車に付けられる補助輪はないか?と尋ねてみたが、子供用の20インチくらいの自転車にしか付けたことはないから、多分どこにもそんなものはないと言われてしまった。そうか、残念だが、ないものは仕方がない。まさか子供用の補助輪の付いた自転車を買ってきてそれで練習するわけにも行かないだろう。どうしよう?
 まあ、あきらめるのが一番手っ取り早いが、本人はあきらめきれない様子だ。ならば、なんとか良い手はないかとまたまた考えた。そして、私が鬼教官となって乗れるようになるまで妥協を許さずスパルタ的特訓をするしかないと結論に達しかけたとき、「なんだ、3輪自転車なら乗れるじゃないか」と突然閃いた。後輪が二輪になった、大人用の3輪自転車があるはずだ。それを買えば、転ぶ心配もないし、上達も早いんじゃないかと思いついた。で、早速ネット上で調べたら、あった。


 その名は「スイングチャーリー」。「スイング機能によりカーブが曲がりにくい三輪車の弱点を完全に解決!身体と共に車体を左右に傾けることができ、安全・快適に曲がれます」とうたい文句も素晴らしい。価格は30010円というが、安いのか高いのかよく分からない。しかし、これなら自転車に乗れない妻でも簡単に乗れそうだ。さあ、どうする!

 今は妻の判断待ちだ。

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