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序盤

 8試合を終えたばかりで、今シーズンの松井を占うなんて慧眼は持ち合わせていないが、序盤戦を見る限り、いつの間にか忘れていた「松井の打席でのワクワク感」が戻ってきたのが嬉しくてたまらない。8試合で、打率.357、打点6、本塁打2と数字としてもかなりの成績であるが、何よりも試合を決める一打を連発していることに胸躍る。昨年など松井の一打で試合を決めたのはたった1試合だったような気がするが、今年は開幕戦での満塁でセカンドゴロによる勝利打点、TB第3戦での決勝2ランを始めとして、全6打点中無駄な打点がないように思う。「打ってくれ」、と思うところで打ってくれるのが私の求める松井像であるが、今年の序盤はそんな理想形に近い活躍をしていると思う。何とも頼もしい限りだ。
 開幕戦で8番に起用されたのが結果としてはよかったのかもしれない。相手投手が警戒せずにどんどん松井と勝負してくれたのが、ケガで出遅れ、オープン戦での打席数が少なかった松井には、いい実戦練習になったなったのではないだろうか。それを証明するかのように、8試合で松井は打率と出塁率がまったく同じである。つまり四死球で出塁することなく、全てヒットで出塁していると言うことだ。もちろん今シーズンの松井が積極的に打ちに行っているのも事実だ。昨年までは妙にボールを待ちすぎて、打てそうな球を見逃して、追い込まれたカウントで無理して打って凡打を重ねる、そうした場面が少なからずあり、歯がゆい思いばかりしていたから、この積極性は気持ちがいい。しかし、どんな球にでも喰らい付くダボハゼのようなバッティングをしているのではない、あくまでも自分が打てると判断したボールを積極果敢に打ちに行っているという印象だ。
 決勝HRを打ったTORとの試合後NHKのインタビューに答えて、「崖っぷちですから」と必死な思いを吐露していたが、自分が思っていることをなんの衒いもなく、率直に明らかにできる開き直りが感じられ、それが積極的な打席につながっているように思った。前日に満塁で三振に倒れたことに触れ、「昨日が悔しかったですから」と語ったのも、面白みのない彼のインタビューに慣れていた私には、「松井がちょっと変わったんじゃないか」という印象を受けた。ナイスガイだとか、不動心だとか、ヤンキース入団後人格者のレッテルを貼られてしまい、日本にいた頃の鷹揚さがだんだんと影を潜めてしまい、内心忸怩たる思いがずっとしていた私にはこの変化は歓迎すべきことだ。自他共に認める逆境に追い込まれた松井が、反転攻勢をかけるにはやはり今までと同じような気持ちでいては叶わないだろう。今年にかける思いがどうしたって前面に出てくるだけの闘争心を持ち合わせていなければ、いくら松井の力を持ってしても、この逆境を乗り越えるのは相当困難であろう。そんな松井の猛々しい心が、全ての打席での強い打球となって表れているように思う。それほど、ここまでの松井の打球の鋭さ、強さには眼を見張るものがある。
 今の松井は本当にいい顔をしている。ヘルメットをかぶり、打席にたったときの松井の顔は精悍そのもので、獲物を狙う猛獣のごとく眼光鋭く相手投手を見据えている。背筋をピンと伸ばし、自然体に近い姿勢でボールを待ち、打てる球なら鋭く振りぬく--アメリカに渡って一番の状態ではないかとさえ思いたくなる。しかも、先のインタビューでは、「これからまだまだよくなる」とさえ言っていたのだから、私の胸は期待ではちきれんばかりだ。
 折りしもチームは故障者続出で、かなり状況が苦しくなっている。いくら松井の調子がいいといっても、松井一人で勝てるわけでもない。そんなことは重々承知している私ではあるが、今の松井なら一人で試合を決めてしまえる!そんな気がして仕方がない。ただ、まだまだヒザが完治したわけでもない今の状態で決して無理だけはしないで欲しい。チーム事情も事情だが、ここで無理をして体のどこかに余分な負担をかけてしまっては元も子もなくなってしまう。幸いよき伴侶を得たばかりであるから、婦唱夫随で体調管理に細心の注意を払い、一年間安定した力を発揮して欲しいものだ。体調さえよければ今くらいの調子などずっと維持できるに決まっている。
 とにかく毎日試合が楽しみで仕方がない。
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