☆ アベノミクスは、金融、財政そして成長戦略を掲げるが、一向に庶民の暮らしは楽にならない。それはなぜなのか。
☆ 資本主義というシステムが瀕死の状態で、もはや栄養剤を入れ、強心剤を注射しても、回復は望めない。ここは死を受け入れ、新たなシステムで生まれ変わらざるをえない。そんなことを感じた。
☆ 本書はずごい。今、世界で起こっていることのカラクリをすべて暴露してしまった。
☆ 資本主義がどのようなシステムで、それはもともと格差を生む構造を内蔵していること。日本を含む先進国が豊かさを享受し、「一億総中流」などと謳歌できたのは世界の貧しい人々を踏み台にした結果であること。今や地球上に安価で資源を確保でき、また商品を高く売れる「地理的・物理的空間」はなく、無理やりつくられた「電子・金融空間」はリーマン・ショックとして破裂してしまった。
☆ 「中心」と「周辺」の組み換え作業であるグローバリゼーションは、北半球の先進国(富める国)、南半球の途上国(貧しい国)といった構図を、それぞれの国での格差拡大へと変えた。具体的には、アメリカのサブプライムローン問題であり、日本の非正規雇用の問題であり、ヨーロッパのギリシャ、キプロス問題となって現れている。(42頁)
☆ 本書はこうしたことを綿密なデータで実証している。私は経済学が苦手で、細かい数字はわからないが、資本主義が終焉を迎えようとしているのはよくわかった。
☆ さて、では次のシステムはどのようなものか。それについては著者も明確にはわからないとしている。ただいくつかの示唆を書いている。
☆ まず大きく二つのシナリオがあるという。ハード・ランディングとソフト・ランディングである。
☆ ハード・ランディングは、マルクスが19世紀に予言したような階級闘争や戦争の危機。
☆ ソフト・ランディングは、成長中毒を放棄し、「ゼロ金利、ゼロ成長、ゼロインフレ」といった「定常状態」(ゼロ成長社会)を維持し、次のシステムの登場に備えよ、というものだ。具体的には、財政の健全化(収支の均衡)、安価なエネルギーの開発、労働条件の改革(正社員化、ワークシェアリング)、富の再配分(法人税を下げず、富裕層に課税する)などが提言されている。
☆ まったくの正論だと思うが、経済同様、政治もわずか数パーセントの富裕層が牛耳っているから、社会主義化とも思えるこれらの政策を積極的に実現しようとするかは疑問だ。ただ、こうした備えをしておかねば、富裕層の先に待っているのは断頭台かも知れない。
☆ 資本主義が民主主義と表裏一体であるという指摘も、なるほどなぁと思った。資本主義の終焉は民主主義の危機にもなりかねない。かつて封建領主制が崩れる時、絶対王政という権力集中によってその「中世」の延命を図ったように、資本家帝国が狡猾にもアメとムチを巧みに使い「近代」の延命を図るかも知れない。ナチスのような強権が登場するかも知れない。あるいは庶民には禁欲、節制を規範とする新たな「宗教」が台頭するかも知れない。
☆ そんな窮屈な未来を避けるには、「量」から「質」へ、拝金主義から知足・幸福主義への転換が必要か。あるいは未知なるフロンティアを発見するか。いずれにせよ、地球の人口は2100年には120億に達するという推計もある。地球自体の限界が近づいている。