☆ マルクスは「経済学批判」の中で下部ー上部構造論を唱えた、今、資本主義という下部構造が転換期を迎え、それに伴ってポピュリズムという政治現象が起こっているのかも知れない。
☆ 水島治郎著「ポピュリズムとはなにか」(中公新書)を読んだ。
☆ 本書は、ポピュリズムの起源、その特徴、現代のポピュリズムの台頭について説明している。
☆ 私が面白かったのは、第3章「抑圧の論理 - ヨーロッパ極右政党の変貌」だ。この章では、まず現代ヨーロッパでポピュリズムが台頭してきた背景を分析している。背景の第1は、冷戦の終結により、「既成政党間の求心力が弱まり、政党間の政策距離が狭まったこと」(61頁)。第2は、「政党を含む既成の組織・団体の弱体化と『無党派層』の増大」(63頁)、第3は、グローバル化に伴う「格差の拡大」である。
☆ また現代ヨーロッパのポピュリズムの特徴として、第1に、マスメディアを駆使して無党派層に直接訴える政治手法(68頁)、第2に、国民投票や住民投票などの「直接民主主義」の主張(69頁)、第3に、福祉の対象を自国民に限定し、負担となる移民の排斥という「福祉排外主義」の主張である(70頁)。
☆ 第6章の「イギリスのEU離脱」も面白かった。離脱を推進したのが、既成政党の政策によって恩恵を受けられなかった中年の底辺層の白人労働者といった「置き去りにされた」人々であったこと。「チャブ」(労働者層出身の粗野な若者層を侮蔑した表現)という言葉も知った。根底にあるのは格差の拡大だ。
☆ 第7章は、「グローバル化するポピュリズム」としてアメリカ大統領にトランプ氏が選ばれた背景を分析している。
☆ 私たちは世界史的な転換点に生きているのかも知れない。資本主義が終わろうとしている。少数の富裕層と多数の貧困層。既成政党が貧困層(多くが中流層の没落者)のニーズをくみ上げられなくなったとき、彼らの声を吸い上げるポピュリズム政党が台頭してきた。
☆ 本来なら左翼を支持しそうな人々がむしろ右翼を支持している。左翼のインテリぶったところが嫌なのだろうか。ヨーロッパの場合、左翼も政権を担ったが思うような成果が上げられなかった失望感があるのかも知れない。
☆ 日本では橋下さんが維新を立ち上げ、大阪の改革に乗り出した。東京では小池さんの「都民ファーストの会」が躍進した。既得権益のリセットが叫ばれ、自民党も民主党(民進党)も、どちらも敗れた。
☆ 民進党の弱体化は労働組合の弱体化の表れだ。労働者は今日、正規雇用と非正規雇用で分断されている。非正規雇用や日雇い労働者を労働組合は助けただろうか。
☆ 自民党も民主党も政権を握ったが、それは小選挙区ゆえの結果だ。敵失の結果だ。どちらが政権をとっても上げ足取りとスキャンダルばかりで、希望は行き渡るどころか、不安と閉塞感は募るばかりだ。日本の場合、移民問題が大きくないのは不幸中の幸いだが、いったん朝鮮半島で有事があれば、難民問題と直面することになる。
☆ 私たちはどこに向かって歩いているのだろうか。
☆ 水島治郎著「ポピュリズムとはなにか」(中公新書)を読んだ。
☆ 本書は、ポピュリズムの起源、その特徴、現代のポピュリズムの台頭について説明している。
☆ 私が面白かったのは、第3章「抑圧の論理 - ヨーロッパ極右政党の変貌」だ。この章では、まず現代ヨーロッパでポピュリズムが台頭してきた背景を分析している。背景の第1は、冷戦の終結により、「既成政党間の求心力が弱まり、政党間の政策距離が狭まったこと」(61頁)。第2は、「政党を含む既成の組織・団体の弱体化と『無党派層』の増大」(63頁)、第3は、グローバル化に伴う「格差の拡大」である。
☆ また現代ヨーロッパのポピュリズムの特徴として、第1に、マスメディアを駆使して無党派層に直接訴える政治手法(68頁)、第2に、国民投票や住民投票などの「直接民主主義」の主張(69頁)、第3に、福祉の対象を自国民に限定し、負担となる移民の排斥という「福祉排外主義」の主張である(70頁)。
☆ 第6章の「イギリスのEU離脱」も面白かった。離脱を推進したのが、既成政党の政策によって恩恵を受けられなかった中年の底辺層の白人労働者といった「置き去りにされた」人々であったこと。「チャブ」(労働者層出身の粗野な若者層を侮蔑した表現)という言葉も知った。根底にあるのは格差の拡大だ。
☆ 第7章は、「グローバル化するポピュリズム」としてアメリカ大統領にトランプ氏が選ばれた背景を分析している。
☆ 私たちは世界史的な転換点に生きているのかも知れない。資本主義が終わろうとしている。少数の富裕層と多数の貧困層。既成政党が貧困層(多くが中流層の没落者)のニーズをくみ上げられなくなったとき、彼らの声を吸い上げるポピュリズム政党が台頭してきた。
☆ 本来なら左翼を支持しそうな人々がむしろ右翼を支持している。左翼のインテリぶったところが嫌なのだろうか。ヨーロッパの場合、左翼も政権を担ったが思うような成果が上げられなかった失望感があるのかも知れない。
☆ 日本では橋下さんが維新を立ち上げ、大阪の改革に乗り出した。東京では小池さんの「都民ファーストの会」が躍進した。既得権益のリセットが叫ばれ、自民党も民主党(民進党)も、どちらも敗れた。
☆ 民進党の弱体化は労働組合の弱体化の表れだ。労働者は今日、正規雇用と非正規雇用で分断されている。非正規雇用や日雇い労働者を労働組合は助けただろうか。
☆ 自民党も民主党も政権を握ったが、それは小選挙区ゆえの結果だ。敵失の結果だ。どちらが政権をとっても上げ足取りとスキャンダルばかりで、希望は行き渡るどころか、不安と閉塞感は募るばかりだ。日本の場合、移民問題が大きくないのは不幸中の幸いだが、いったん朝鮮半島で有事があれば、難民問題と直面することになる。
☆ 私たちはどこに向かって歩いているのだろうか。