☆ 冲方丁さんの「もらい泣き」(集英社文庫)を読み終えた。
☆ 短いコラム集なので、10分程度の休憩時間に少しずつ読み進めることができた。
☆ ホロリとする作品が満載。特に、東日本大震災以降の作品は圧巻だった。一気に読み終えた。
☆ 「ノブリス・オブリージュ」
ある日本人男性がドイツで火事に巻き込まれやけどを負う。その入院中出会った老人との話。「マザー・テレサは、いったい何に優れていたと思う?」という老人の問い、そしてその答えは目からうろこが落ちるようだった。
☆ 「盟友トルコ」
助け合う日本とトルコ。トルコが好きになった。
☆ 「空へ」
著者の祖父の話。「死者の無念を背負うのではない。彼らが抱いた夢を、彼らの分まで諦めずに追い続けるべきであるのだ」 この言葉はグッとくる。
☆ 「地球生まれのあなたへ」
郵便配達人の話。その妻は天文愛好家で星に夫婦の名前をつけてもらったという。この夫婦を震災が襲う。妻の死後、妻からのメッセージを夫は受け取る。「人が心を持てるのは地球のお陰」 この言葉に託された思いとは。
☆ 「国境を超える眉毛」
初めて留学した女性が施設で出会った口の悪い老女。果たして彼女の思いは老女に通じたのか。
☆ 「先に行きます」
駅の掲示板に書かれた自殺をほのめかすメッセージ。人と人とがぶつかり合う駅ならではのエピソード。
☆ 「タクシーと指輪」
強く求めると奇跡は起こるのかも知れない。ある人が話してくれたタクシーの運転手さんの体験談とは。
☆ 「ドッグハウス・カー」
人気のある幼稚園の先生のエピソード。犬の話は犬好きにはたまらない。泣ける。
☆ いろいろな人が登場するけれど、みんな一生懸命に生きている。「インドと豆腐」のエピソードにもあったけれど、「ただ生きてゆく」そのことが実はとても難しくそしてとても大切なのかも知れないと思った。