じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

伊集院静「眠る鯉」

2020-10-08 11:38:46 | Weblog
★ 伊集院静さんの「眠る鯉」(文春文庫)から表題作を読んだ。

★ 犯罪小説のような出だし。今は魚の住まなくなった淀んだ池の岸で、老人の死体が発見された。老人は近くの大地主の奉公人。外傷はなく、心臓麻痺による突然死のようだ。ところで、老人は、この池で何をしていたのか。

★ 物語は老人の歩んだ人生を追う。そして、捕らえようとして捕らえられなかった鯉の話に進む。

★ 老人の若い日のプラトニックな想い。それを60余年胸に秘め生き続けた日々。巻末の清水良典さんの解説にもあるように、「眠る鯉」は「眠る恋」でもあったのだ。

★ 家出をする主家の娘、彼女こそが老人の若き日のあこがれの人なのだが、彼女が家を出る日に川で泳ぐシーン。幻想的で官能的な描写が美しい。
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