じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

宇佐見りん「かか」

2020-10-14 15:58:20 | Weblog
★ 宇佐見りんさんの「かか」を読んだ。圧倒される言語感覚。既成の言語世界を超越した新しい時空を体験したようだった。

★ 文藝賞を受賞した宇佐見りんさん、それに「アキちゃん」で文學界新人賞を受賞した三木三奈さん。この二人のこれからが楽しみだ。

★ 「かか」は主人公のうーちゃんが「おまん」に語るという独白体で書かれている。「かか」とはうーちゃんの母親のことで、この「かか」は独特な言葉遣いをするらしい。いわゆる「かか弁」。本作は「かか弁」で書かれている。

★ 音便や活用が既成の文法を超越。それでいて意味が通るのは、文法の骨格はしっかりしているからだろう。ときどき見られる豊かな言語表現にはド肝を抜かれる。例えば「風のくらく鳴きすさぶ山に夕日がずぶずぶ落ちてゆき、川面は炎の粉を散らしたように焼けかがやいていました」(15頁)、「かかは十四歳の娘のまだ鼠の毛のようだった柔こい髪にかおを埋めて胸一杯に吸いました。頭皮に感じる小さな痛みの先を自分の指で辿ると、髪を絡めたかかの指が涙で濡れているのんがわかります」(32頁)など。

★ 「かか」は心が病んでしまった。酒を飲んで暴れまくり、遂には病院に入れられる。背景にはババとの母娘関係やととの浮気があったようだ。その「かか」が今度は癌に冒される。うーちゃんは、妊娠して「かか」を生みなおそうと旅に出る。

★ 随所に、女性の業やアイデンティティを感じさせる表現がある。SNS世代ならではの表現も多い。

★ 時代の移り変わりを感じさせる作品だった。
コメント