じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

町屋良平「青が破れる」

2020-10-10 19:34:56 | Weblog
★ 町屋良平さんの「青が破れる」(河出文庫)を読んだ。町屋さんのデビュー作で、文藝賞受賞作。

★ ボクサー志望の主人公とその周りの同世代の人々を描いている。前半のリズムは体言止めが多く、ラップ調の感じがした。後半は散文になってきた。淡々とした文体が印象的だった。

★ 自動変換されそうな漢字が平仮名表記されているところ、作者の思い入れがあるのだろうか。

★ 濃密な表現とは程遠いが、このあっさり感が「今」的なのだろうか。芥川賞受賞作も読んでみたい。
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小池真理子「恋」

2020-10-10 11:23:08 | Weblog
★ 小池真理子さんの「恋」(新潮文庫)を読んだ。久々に熱中した。作者自身が「あとがき」に書いているが、まさに神がかり的な面白さだった。

★ 物語は葬儀の場面から始まる。ちょうど日本中が連合赤軍による浅間山荘事件に目を奪われていた時、同じ軽井沢で、もう一つの猟銃による射殺事件が起こっていた。その事件を起こした女性の葬儀であった。

★ 時代は葬儀から2年前にさかのぼる。鳥飼というノンフィクション作家が刑期を終え隠れるように暮らしていた女性、矢野布美子への取材を始める。物語はそこから彼女の証言という形で進む。

★ 学生運動が吹き荒れる1970年。大学生の矢野はアルバイトで、ある助教授の翻訳を手伝うことにした。助教授夫妻が住む世界、それは左翼グループのたまり場と化した安アパートで、日銭で暮らす彼女にとって異次元であった。

★ 彼女は、助教授夫婦の奔放な生活に翻弄されながらも、彼らとの一体感に充実を感じるようになる。

★ しかし、そのバランスがある男の出現で崩れる。助教授夫人がその男と「恋」に陥ってしまったのだ。遊びなら共々に性愛を許しあっていた助教授夫妻。しかし、夫人の本気の「恋」に夫は嫉妬し、彼らと一体化していた主人公の心も乱れていく。そして、知らされたある秘密。

★ そこから、物語は急流のようにクライマックスを迎える。

★ ストーリーの面白さ、人物の活写、文章のうまさ、構成のすばらしさ、それだけでは言い尽くせない作品だった。
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