<子ども>室内での砂遊び人気
玩具メーカー相次ぎ発売
毎日新聞 10月17日(土)12時30分配信
室内での砂遊びが広がりつつある。
天候や衛生面の問題を気にせずに遊べることから
近年、国内外の玩具メーカーなどが
特殊な加工をした砂を相次いで発売した。
清潔感や手入れのしやすさが特徴だ。
一方、屋外の砂場は子どもが「社会」を知る場でもあり、
専門家は
「さまざまな砂遊びを体験してほしい」
とも助言する。
【写真】これは楽しそう!ヘラや型抜きを使って成形した砂
「砂遊びは公園でするもの」という常識に新風を吹き込んだのが、
2013年6月に国内で初めて発売されたスウェーデン製の砂
「キネティックサンド」(910グラム、1944円)だ。
灰色と黄土色を混ぜたような色で、見た目は普通の砂と変わらない。
触感はしっとりして湿り気があり、ぎゅっと握ると固くまとまる。
手をはたくと、簡単に砂が落ちる。
素材は海岸などの自然の砂で、約2%分はシリコンだ。
表面を特殊技術で加工しているため、周囲に飛び散りにくい。
輸入元のラングスジャパンによると、東日本大震災後、
「放射能汚染が心配で砂場で遊べない」
と嘆く福島県などの保護者の声を聞き、
雪深い北欧で人気の室内用の砂に目を付けた。
「東北の保育園や幼稚園、家庭で使ってもらう場面を思い描いた」
と同社の小林美紀社長は話す。
「3万個売れるとヒット」と言われるおもちゃ業界で、
約16万個(910グラム入り)が発売直後に完売。
成分的には口に入れても安全とされる。
その後も売れ行きは堅調で、現在は青や紫など多色展開しているという。
東京都の女性(44)は2年前、娘(4)のために室内用の砂を購入した。
手先の発達に砂遊びが良いと聞いていたが、
近所の公園の砂場は猫のふんが多くて利用できなかった。
「机の上で砂遊びを始めると、他の遊びより集中して遊んでいることが多い」といい、
親子で一緒に団子を作ったり、クッキーの型で抜いたりしているという。
「砂を触るだけで落ち着く」とも話す。
国内メーカーのタカラトミーは、14年9月に
「サンズ・アライブ 天使の砂」(1350グラム、ヘラ付き、3758円)を発売した。
白くて軽く、ふわふわとして、小麦粉のような手触りだ。
材質は食品添加物にも使われているシリカなど。
同社は「抗菌性」をアピールしている。
今年9月にはバンダイが
「suna・suna」(500グラム、1922円)の販売を始めた。
こちらも自然の砂に添加物を加工し、もっちりとした感触。
手に粒がくっつく感覚が本物の砂に近い。
人気キャラクターの型が入ったセットもある。
また、玩具商社のオンダは,
カラフルな砂をアイスクリームの形にして遊べる
「お砂DEアイスショップ」(300グラム、842円)を販売している。
各社の製品を取りそろえる博品館(東京都中央区)の小堀結可さんは
「シンプルな遊びだからこそ飽きがこない。
独特の手触りは大人にも好評で、最近は社会人やお年寄り用の購入も目立つ」
と話している。売り上げも伸びている。
一般社団法人日本玩具協会によると、
砂遊び関連の商品は、12年度から13年度にかけて12%増、
13年度から14年度にかけて13%増で、今年度さらに増えるとみられている。
「種類が増えて、室内でも砂遊びをするイメージが広がった」と同協会の担当者は話す。
数ある造形遊びの中で、砂遊びの魅力は何か。
同志社女子大現代社会学部の笠間浩幸教授(幼児教育学)は
「砂遊びは五感を刺激し、子どもの発達において大切な力を育む」
と評価する。
砂を触ることで手指の感覚を養い、型やスコップなどの道具を使う練習になる。
また、自由に作ったり壊したりすることで創造性につながり、
「室内用の砂の登場で、砂遊びの機会が増えるのは良いこと」
と話す。
一方、公園の砂場では、歩きにくい砂の上を踏みしめたり、
バケツに入れた砂を持ち運んだりすることで、
筋力やバランス感覚を養成することにもつながる。
また、他の子どもたちとスコップなどを取り合ったり、
貸し合ったり、協力や役割分担をしながら
大きな作品を作り上げることもある。
このため、笠間さんは
「子ども同士の交流やトラブルが人間関係を築く力につながる」
とし、砂場で遊べる機会があれば利用を勧める。
しかし、国土交通省が3年おきに調査するkokury公園の遊具の設置状況によると、
砂場は近年減りつつある。04年度に全国の公園の7割に設置されていた砂場は13年度は6割を切った。
衛生面でみると、北海道大の研究室が03年に札幌市内の公園107カ所の砂場を対象にした調査で、
約7割の73カ所から大腸菌が検出された。
こうした状況を不安視する声は多く、動物の侵入を防止するために
シートをかぶせるなどの対策も取られているが、維持管理が難しくなっているのが現状だ。
笠間さんは「室内でも砂場でも、砂遊び中に大人が手出しや口出しをしすぎないように」
と助言する。子どもを見守りながら、一緒に楽しむことが大切という。【鈴木敦子】
最終更新:10月17日(土)17時56分