今年、「はやね・はやおき、あさごはん!」というスローガンが、
PTA連合会の重点取り組み事項として決められました。
現代の日本では、どんな子育てをしなければならないか?
まずもって、今、普段の生活の仕方を見直し、立て直さなくては…です。
『斉家(せいか)のすすめ』を一昨年度から
当園の第二第四木曜日の『子育て教室』の文集にも、掲載いただき、
皆様にお訴え申し上げています。
良い子を育てるためには、まず、家をととのえることが肝心です。
生活の基本は、「早寝・早起き、朝ご飯。テレビを見ないで、お手伝い。」
の励行を取り組まなくては、…
ですが、子どもにばかり言うのではなく、
先ずは大人の『社会力再興』(2006年 学事出版 門脇厚司 著)でしょう。
岩波新書『子どもの社会力』著者の筑波学院大学学長の門脇厚司先生の
お話を 6月12日お聞きしたが、神戸の酒鬼薔薇事件以来、今、
子どもや若い人が引き起こす 理解に苦しむ人命軽視の事件が連続している…
門脇先生は、子どもも大人も人間関係をうまくキリ結ぶ「社会力」の低下を
きたしていることに警鐘を鳴らしている。
子どもの異変の背景には、子どもの心に変化が生じる根本原因が潜んでいる。
生まれて以来、核家族で、個人主義的な生活習慣、団地住まいの人が増えて、
多様な大人や年長の兄弟姉妹や友達との関わりが希薄になり、
日常の会話が激減。
まして況や舅も姑もスープのさめない距離で、日々敬語を使う場面も激減。
それに胎教や乳幼児期から、すでにテレビやビデオ、メディア機器や
テレビゲームなどのIT機器との接触が過剰になり、
夜更かし~の夜型ライフスタイルになってしまい、睡眠不足。
朝ご飯もろくろく食べない、朝からボーっとしてやる気も学習意欲も低下し、
脳の前頭前野の機能(人間らしい思考力)も低下してしまう子ども達が増加?
それに…辛うじて食べてはいても、
子どもだけで、カップラーメン一個だけの「個食」とか
孤独な「孤食」とか… こうした、社会や子ども達の状況を受けて、
ついに「食育基本法」が、昨年平成17年6月10日に国会で成立し
子ども達の「食」に注目が集まってきました。
条文の中には、学校(幼稚園)や保育所においても
「知育」「体育」「徳育」の基礎としての「食育」の位置づけがなされて、
みずから食を選ぶ能力を含めた食の自己管理能力を育て、
ひとりひとりが自分の健康を守り、健全で豊かな食生活を送る力を育てようとするものです。
ちなみに、食育基本法の7つの基本理念は…
『おいしい楽しいうれしい保育・教育現場のための食育』 (2006年4月24日初版 出版 学研)によると 食育基本法第一章総則では、
①国民の心身の健康の増進と豊かな人間形成
②食に関する感謝の念と理解
③食育推進運動の展開
④子どもの食育における保護者、教育関係者などの役割
⑤食に関する体験活動と食育推進活動の実践
⑥伝統的な食文化、環境と調和した生産などへの配慮及び 農山漁村の活性化と食料自給率の向上への貢献
⑦食品の安全性の確保などにおける食育の役割
などがあげられている。
毎日食べる物への感謝の気持ちや
旬の食べ物から四季折々の季節の移り変わりを感じる心、
五感の働きを通しておいしいと感じる感覚など、
体だけでなく、「心」も育てるものとしてとらえられている。
ところで、あなたは、 毎朝、朝ご飯を決まった時間に食べていますか?
誰と食べていますか? 家族そろって?バラバラ?
どんなものを食べていますか?
スタンダードな一汁二菜(ごはんと汁物と副菜)?
パンだけ? サラダやハムエッグやスープは?
私のお薦めは、 ご飯と味噌汁と発酵食品(漬け物など)と小魚…
それに食後のフルーツが一皿あれば最高!
特に、長寿村として有名な山梨県棡原(ゆずりはら)村では、
麦・粟・キビ等の雑穀類と豆・野菜・山菜を組み合わせた伝統食で通している
古老たちは、今も元気に働いていますが、
一方、都市型の生活様式に変えた 若い世代では、成人病が急増し、
この村では、老父が息子の葬式を出す事が 頻繁におこっているという。
(「五穀の主食健康法」廣済堂出版 佐藤成志・高畑康子・福原洋子共著より)
高蛋白、高脂肪のごちそうや、加工食品を沢山食べて、運動不足では、
成人病や慢性病多発、そして子ども達の老化現象への序曲です。
糖尿病は、かつては成人にしかあらわれなかったが、
最近では、発症時期が 著しく年齢低下し、子どもにも見られるようになりました。
低蛋白、低脂肪、高繊維のベジタリアンには糖尿病の人はいない。
アトピー性皮膚炎やアレルギー体質の子どもが増えてきたが、これも、
欧米型の食生活が一つの大きな元凶ともいわれている。
東京都のある小学校では、毎月4回 給食のご飯に
粟かキビを15%混ぜて 炊いていると、A新聞に紹介され反響があった。
まさか、朝寝坊して、食欲無いまま、おせんべい一枚だけ?
牛乳だけ?そんな朝食で良い訳無いですね。
良い子に…と願うならば、「食育」に気合いを入れて子育てを!
シングルエイジ(0~9才)は、
果汁や離乳食に始まる味覚の感覚の発達の時期で、
特に薄味の素材の持ち味を生かした「おふくろの味」が、大事な時期です。
忙しくても手抜きをせず、
インスタント食品や、レトルト食品、コンビニ弁当等に頼らずに~
まず、ベランダの片隅でも、子どもと一緒に楽しく食材を栽培したり、育てたり、
調理にも子どもを参加させ、お手伝いもたくさんさせて、味覚や嗅覚…
微妙なだしの味がわかる伝統食の味わいの良さの文化伝承者としての風味や香りの感性を高める努力や一工夫をいたしましょう!
私の幼少時から青春時代には、
父が自家菜園で口に入る野菜を全て栽培し、
お味噌も自家製を創り、時期に応じて野草も摘みに行って、
美味しく料理しその旬の味を賞味していた。
梅干しやぬか漬けは、どこの家庭でも、家毎に独自の伝統の味を伝えていた。
ご近所にも惣菜を一皿お裾分けし、お互いに料理の腕をふるい、
また助け合い、調味料一つも調達仕合い、味見をしあっていた。
乳幼児期からたっぷり愛情を込め、手塩にかけた子育てをしていれば、
そんなに簡単に、突然、思春期にキレやすくなったり、
家庭内暴力や、不登校や、非行に走り、とんでもない事件の加害者~
心も凍る「透明な存在」の子どもにはならない。
心を込めて手作りで、三度の食事を大切に!
確かに野菜嫌い(特ににんじんやピーマンが嫌い)な偏食気味の子どもも
いますが、
①感謝の心で「もったいない」という精神も教えたいですね。
mottainai~まだ、食べられる食べ物をのこしたり、まだ使えるものを 捨ててしまっ たりするなどの行為を戒める日本語です。
ケニアの環境副大臣でノーベル平和賞受賞者のワンガリ・マータイさんが
2005年2月来日の際に、日本の「もったいない」精神に感銘を受け、
国連の「女性の地位委員会」閣僚級会合で、環境保護の合い言葉として紹介
くださった。
②「みんなで」
③「おいしく」
④「よいマナーで」
⑤「よいお通じ」
そのためには、まず、大人が、おいしそうに食べてお手本を見せましょう。
3歳以上になると、
「これを食べたら、頭がよくなる!」
「背がのびるよ。」
「血液サラサラになって、お肌がきれいになる。」
「目がよくなる。」「栄養満点で、元気モリモリになるよ。」
などというポパイのホーレンソウのような例えで
偏食が少しずつ直ることもある。
食べ物の栄養の説明をすることで、その食べ物に興味を持ち、
一口だけでもどんな味か食べてみようという気にもなる。
いわば、頭で食べることができるようになる。
4才以上ならば、
初めて食べる食材や料理は、「どんな味だった?」と、感想を聞くとよい。
味蕾の細胞が識別できる五つの味(甘味・塩味・酸味・苦味・旨味)
のなかでも 特に
旨味(昆布のグルタミン酸・鰹節や煮干しのイノシン酸・干し椎茸のグアニル酸・ 貝類のコハク酸・肉や魚やトマトにも多く含まれるグルタミン酸)
の合わせだしの微妙な相乗効果の味わいを、日本人は大事にしたい。
「しょっぱいけど、後味は甘い。」
とか
「にがい!」「渋い!」「すっぱい!」「少し辛い!」「大人の味みたい。」
などと、色々な言葉で美味しさを表現することもどんどん挑戦させてみたい。
とにかく 空腹感こそが、何でもおいしく食べる、bestソースです。
お金さえ出せば、国内外の食材や山海の珍味も手に入る
平和でゆたかな国に住み、
グルメ情報も毎日のように雑誌や新聞・テレビでも放映されていますが、
「子どもの食事」にも、もっと関心を持ち
正しいマナーや お箸の持ち方にも気をつけましょう。
「箸置き」も毎日ちゃんと使っていますか?
時には、季節の花も食卓に飾って!
身体や心の育ちに敏感になり、
回りの人との関わり方の基本のごあいさつ
「いただきます」や「ごちそうさまでした」
もキチンと手を合わせて
ご飯茶碗は左に、汁椀は右に テーブルセッティングして、
著もきちんとそろえ 言う子どもにしつけたいですね。
「おいしかった?」「おかわり!」
という笑顔の家族がそろっている食卓は、しあわせ色です。
あなたも、食卓の雰囲気作り 見直しなさってみては?
本日は、つい、長々と… 熱が入りました。
最後までお読み下さり有り難うございました。
緑ヶ丘・第二幼稚園 園長 長濱 光古