nonnon日記
部屋の上から見ていたら、お母さんは、ボクの(抜け殻になった)体の
お腹に保冷剤を置いて、バスタオルをかけた。そうしてその晩は、布団を
並べて寝た。翌朝、お母さんは朝ごはんを食べては、「ボク」の手を握り、
昼ごはんを食べては、「ボク」の頭を撫でた。そしてジーッとうつろになった
「ボク」の目を自分もうつろになって、ボーっと見つめていたー。
夕方になって息子のSさんが来た。Sさんも、ゆっくりそーっと「ボク」の頭
を撫でてくれた。(おーい、ボクはそこにいない、ここだよー。)と叫んだ
けれど、やっぱり聞こえないみたい。
「ピンポーン」誰か来た。玄関でお母さんが、「外でお願いします。」と
言ってるのが聞こえた。Sさんが、ボクをタオルでくるんで抱っこして外に
出た。ボクもカールも 「何だろう?」と浮遊して一緒に外に出た。
道に変わった型のワゴン車が停まっていた。後ろがパカっと開いて、中に
大きな金属の入れ物があって、ボクの抜け殻がそこに入れられた。
お清めの清拭とかって言って、お母さんが布で拭いた後ー「ボク」の手に
小さな数珠をはめた。男の人が、「40分位です。」と言った。
それからーお母さんは、「ハクちゃん、さよなら、ありがとう、さよなら」
と言って「ボク」を撫でて泣き出した。Sさんの目も真っ赤だった。
ーーーお母さん、泣くなよ、ボクはここだよ、ここにいるよ。
そいつは、ただの抜け殻だよ。悲しまなくていいんだよォ!
いくら叫んでも、お母さんには聞こえない。ボクは悔しかった。ーーーーー
車は動き出して、お母さんは、泣きながら見送った。
そうして、「ボクの亡骸」はお骨になって戻ってきた。