もやいマンション日記

マンション役員の体験を綴った「マンション日記」に、プライベート所感を綴った「nonnon日記」が混ざっています。

NO.364「体のないハクの物語④ペットロスの人へ」

2021-06-27 | 日記

            nonnon日記

部屋の上から見ていたら、お母さんは、ボクの(抜け殻になった)体の

お腹に保冷剤を置いて、バスタオルをかけた。そうしてその晩は、布団を

並べて寝た。翌朝、お母さんは朝ごはんを食べては、「ボク」の手を握り、

昼ごはんを食べては、「ボク」の頭を撫でた。そしてジーッとうつろになった

「ボク」の目を自分もうつろになって、ボーっと見つめていたー。

夕方になって息子のSさんが来た。Sさんも、ゆっくりそーっと「ボク」の頭

を撫でてくれた。(おーい、ボクはそこにいない、ここだよー。)と叫んだ

けれど、やっぱり聞こえないみたい。

「ピンポーン」誰か来た。玄関でお母さんが、「外でお願いします。」と

言ってるのが聞こえた。Sさんが、ボクをタオルでくるんで抱っこして外に

出た。ボクもカールも 「何だろう?」と浮遊して一緒に外に出た。

道に変わった型のワゴン車が停まっていた。後ろがパカっと開いて、中に

大きな金属の入れ物があって、ボクの抜け殻がそこに入れられた。

お清めの清拭とかって言って、お母さんが布で拭いた後ー「ボク」の手に

小さな数珠をはめた。男の人が、「40分位です。」と言った。

それからーお母さんは、「ハクちゃん、さよなら、ありがとう、さよなら」

と言って「ボク」を撫でて泣き出した。Sさんの目も真っ赤だった。

ーーーお母さん、泣くなよ、ボクはここだよ、ここにいるよ。

そいつは、ただの抜け殻だよ。悲しまなくていいんだよォ!

いくら叫んでも、お母さんには聞こえない。ボクは悔しかった。ーーーーー

車は動き出して、お母さんは、泣きながら見送った。

そうして、「ボクの亡骸」はお骨になって戻ってきた。

 

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No.363「体のないハクの物語③ペットロスの人へ」

2021-06-12 | 日記

           nonnon日記

自分に起きた変化にビックリしてー落ち着こうとして、ボクは必死でー

毛を舐めていたー。すると・・・あれ?・・・お母さんの足元に、何か

フワフワした毛の塊がくっついてる・・・のが目に入った。

よく見ると・・・それは猫だった。茶色っぽいフワフワした毛のボクより

太った猫だ。お母さんの足に体をくっつけてスリスリして甘えている。

(お母さんは全く気付かないようだけど。)ボクは跳んで行って尋ねた。

「君はだれ?」「ボク、カールだよ。君の前に飼われていた猫だよ。

14年前に体は無くなったけど、こうしてずーっとお母さんの傍にいるのさ」

「ボクは3年8か月、ここで暮らしたけど、君には、全く気付かなかったな」

ボクは、この気の良さそうな、喧嘩の弱そうな茶色猫をまじまじと見た。

「体がなくなった最初は、ショックだけどね。すぐに慣れるよ。

こうして、自由に浮くことができるし、飛ぶこともできる。行きたい所に

素早く自由に移動することもできるよ。ほーらね。」

そう言って、カールは部屋中を飛び回って見せた。ボクはすぐに真似してみた。

ワァー、本当だ!自由に飛び回れるんだ!これは、すごいぞー!

それからボクらは、仲良くなって、いっぱい、いっぱい身の上話をした。

カールは生後3か月の時、坊ちゃんのSさんが2歳の時に、もらわれてきて

20年、一緒に育ったこと。Sさんの胸の上に乗っかって、よく一緒にお昼寝

したこと。食卓テーブルの上のコップをひっくり返すのが楽しくて、怒られ

ても怒られても絶対止めなかったこと。(何で自慢そうに話すんだ?)

クリスマスツリーの飾りを飲み込んで、獣医さんに連れて行かれたこと。

外に出た時、野良猫に襲われて、お母さんに助けられたけど、半日頭が

おかしくなって、唸り続けて・・・もう狂ったままか、と家族みんなに心配

されたけど、鰹節がきっかけで、我に返ったこと。

ボクは、あきれて聞いていたー。じいちゃんと猫4匹で育ったボクとの

違いー。こいつは、外の世界を全然知らない、’坊ちゃん猫‘じゃないかー。

「ボクが亡くなった時、お母さんは泣いて泣いて、鼻血が出てたんだぜ。

ずーっと、10年もボクのこと、想ってくれてたのに、君が来てから、

ボクはたまーにしか、思い出してもらえなくなった。」言うなり、

屈折した気持ちになったのか、カールは背中をペロペロ舐め始めた。

ボクは少し気の毒になった。ボクがお母さんに可愛がられている時、

こいつは、それを見ていて、どんだけ淋しかっただろう・・・。

いいや、「袖すりあうも多生の縁」とか誰か人間が言ってたしー。

世話は焼けそうだけど、先輩だしー仲良く暮らして行こう・・・。  

と思っていると、お母さんが、何やら向こうで電話している。

「イドウソウギシャ」(移動葬儀車?)とか言ってる。 それ何?

 

 

 

 

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No.362「体のないハクの物語②ペットロスの人へ」

2021-06-04 | 日記

            nonnon日記

ボクが体を失ったあの日のあの時ー

お母さんがボクの名前を呼んでる声は聞こえたけど、ボクは息をするのが

苦しくて、苦しくて、ハァーとふかーい息をして、分からなくなったー。

どれくらい時間が経ったのか分からないけどー気がついたら、向こうの方に

ボクの体がお人形のように固くなって布団の上に横たわっていた。

傍でお母さんが、ボクの毛を撫でながら泣いていた。

「あれっ、どうなっちゃったんだろう?」

「おかあさん、おかあさん」 呼びかけたけど、お母さんは、こっちを向いて

くれない。

不安になって、ボクは部屋中を駆け回った。でもお母さんは気付いてくれない。

どんなに大きな声で鳴いてみても、お母さんには聞こえなくて、ボクの姿は

全くお母さんには見えないみたい。チョンチョンと肩も叩いてみたけど、

いつものように「あらー、ハクちゃんー」と笑いながら振り返ってくれない。

いろいろやってみたけど、全然気付いてくれない。

そこで、ついにボクは知ったー   ボクは「透明猫」になったんだ!

ボクの猫の母さんのシロのようにー

もしかしてボクは「死んでしまった」んじゃないか?

 

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