河村顕治研究室

健康寿命を延伸するリハビリテーション先端科学研究に取り組む研究室

岡山済生会病院で研究スタート

2008-09-04 | 研究・講演
今日は午前中、大学で倫理審査委員会を開いていただき、秋以降行う人を対象とした研究の審査をしていただいた。
何度も開催してもらうことはできないので、私が直接指導している大学院生の研究を4件まとめて審査していただいた。
どの課題も特に危険性があるわけでもなく、以前であれば倫理審査などと言う大げさなことは必要なかったのだが、現在の情勢からすると倫理審査にかけておかないと論文投稿はおろか学会発表すら制限されかねない。
労力も時間もかかるが致し方ない。
審査していただいたのは以下の4課題である。

保健福祉研究所を利用した高梁市老人クラブ健康教室

Closed Kinetic Chainにおける二関節筋抑制現象の解析と臨床応用

前十字靭帯再建術患者における等尺性閉運動連鎖時の筋出力様式

表面筋電図と3次元動作解析による移乗介護動作の局面化



夕方から、岡山済生会昭和町健康管理センターにおもむき、前十字靭帯再建術を行った患者さんの筋萎縮を改善するための研究の第1号となる実験を行った。
これは7月に倫理審査を受けた課題で、大学外部で実験を行うためにこれまで何度も打ち合わせを行ってきたものであり、やっと実験にこぎつけたものである。

荷重立位周期的水平揺動刺激と筋電気刺激による筋力増強法の研究

前十字靭帯再建術を受けた患者さんの大腿の筋肉の萎縮はすさまじいものであり、多くがスポーツ選手であることから非常に大きな問題となっている。
今回の患者さんもサッカーをしている若い男性であるが、筋萎縮はかなりのものであった。
患者さんにとって今回のような電気刺激を用いたトレーニングは初めてであり、おっかなびっくりという様子であったが、萎縮した筋肉に久しぶりに刺激が入り、これから3ヶ月に渡るトレーニングも頑張ってやり遂げてくれそうで安心した。

今回の実験には済生会整形外科の若い先生も二人立ち会ってくれて、わいわいと盛り上がりすこぶる楽しい雰囲気で行うことができた。

これから長期にわたり研究が続くが、結果が非常に楽しみである。
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保健福祉研究所と大学、大学院との関係2

2008-09-04 | 保健福祉研究所
文部科学省が実施している私立大学学術研究高度化推進事業の一つであるオープン・リサーチ・センター整備事業に平成19年度採択されて5年間に渡る『健康寿命を延伸するリハビリテーション先端科学研究』がスタートした。
オープン・リサーチ・センター整備事業では研究所を建設する予算も半額補助される。
2007年6月20日、保健福祉研究所の起工式が行われた。竣工が2008年3月なので平成19年度はハードとしての研究所がない状態での5年間の補助事業の初年度となった。

研究所がないと言うことはデメリットでもあるが経費の面ではメリットもある。年間数百万円と予想される光熱費、清掃費などの経費が生じないという点である。
研究費としては研究員の個人研究費や研究科予算をかき集めて、それと同額の補助金が期待できるため年間総額2500万円の予算を計上した。この中から上述の初年度節約できる経費を利用してZebrisFDM-Tトレッドミル・システム(トレッドミル式歩行解析装置)を導入した。これはドイツ製で、全国でも初めての導入となり、研究所の目玉の一つと位置づけた。

平成19年度には補助金を利用してリサーチアシスタント(RA)を2名雇用した。
『健康寿命を延伸するリハビリテーション先端科学研究』は2つのプロジェクトから構成される。
「細胞・分子レベルでの加齢・疾患障害の予防治療法の開発」(プロジェクト1・基礎研究)と「健康増進と障害予防のためのバイオメカニクス・臨床研究」(プロジェクト2・臨床研究)である。
そこで保健科学研究科博士課程の学生を基礎・臨床のプロジェクト毎に1名雇用した。
RAで雇用された博士課程の学生にしてみれば研究をしながら学費をある程度稼ぐことができるのでかなり助かることとなった。
もう一つのティーチングアシスタント(TA)は修士課程の大学院生が本来であれば対象となるのであるが、研究所は研究をするのが務めであり、大学生の授業を行うのは本来の役割ではないため、補助事業を利用してTAを雇用することは不可能であった。

平成20年度になり、研究所が稼働し始めると年間数百万円の光熱費、清掃費などの経費が生じる。これは1年が終わってみなければ総額いくらかかるか分からないが、1年中エアコンを動かし続ける細胞培養の研究室や動物飼育室などを抱えているので莫大な額になることは最初から覚悟している。
その一方で、人的には今年からポスドク(PD)を1名雇用した。ポスドクはプロジェクト1・基礎研究に今年度初めて卒業生を出した保健科学研究科博士課程から井上君が採用された。基礎の研究能力と人柄が評価されたのである。
ちなみにPDの採用は吉備国際大学では今回初めてのケースであった。
昨年に引き続き、リサーチアシスタント(RA)は博士課程の学生からプロジェクト2・臨床研究に1名雇用した。

このように、オープン・リサーチ・センター整備事業の補助金を活用することでRAやPDを雇用することができ、これは大学院生にとっても経済的に望ましいことである。

一方ハードの面では先にあげた歩行解析装置のような研究機器だけでなく、保健福祉研究所の建物が建設されたと言うことは計り知れないくらい大きな意味を持つ。

研究所は既に先行した文化財総合研究センターと臨床心理相談研究所のある13号館の隣に15号館として建設されたため、建物自体が吉備国際大学の研究エリアとしてシンボル的意味を持つこととなった。
本年4月以降、学外からの見学のコースには必ず組み込まれ、大学のアピールに貢献している。

基礎研究の面では、これまで基礎の研究室というものが正式には存在しなかったので、研究所ができたことは画期的である。
とくに細胞や動物を扱う基礎研究は近年各省庁から厳しい制限が指示されるようになってきているので、この研究所ができなければ基礎研究は大学院でもできないという事態が予想されていた。
きちんと規定を満たす研究所ができたと言うことは、大学院の発展のためには非常に大きな意義があった。

臨床研究では1階の広大なワンフロアを活用して動作解析や健康教室の開催などが自由自在に行えることとなった。
プロジェクターとスクリーンも整備されているので多人数を集めて公開講座も行える。
床にマットを敷けば実技を取り入れた講習会も開催できる。

こうしてみると研究所の存在意義は大学・大学院にとって非常に大きいことがあらためて認識される。

(参照)保健福祉研究所のホームページ
http://kiui.jp/pc/hokenfukushi/





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