長谷川恒男著『北壁に舞う 生きぬくことが冒険だよ』を読み終えた。すっかり古典となった山岳書だ。すでに故人となった長谷川恒男だけど、僕が尊敬する数少ない山ヤの一人だ。ヨーロッパ三大北壁の冬期単独登攀を1977年にマッターホルン北壁、1978年アイガー北壁を完登し、本書は残るグランドジョラス北壁に挑んだ1979年の記録だ。
緊張で息が詰まるような孤独な登攀。僕はすっかり氷壁や岩壁登攀から遠ざかっているけど、もう一度だけでいいから攀りたいと、つい叶わぬ夢をみてしまった。
生きるということは大変だよ
父は私にいった。
生きぬくことは?
私が聞くと
父は笑っていった
冒険だよ、と。
そして、父は死んだ。
よりよく生きようと願い、努力することによって、より人間性を深めることができる。
(『北壁に舞う』より抜粋)