気づかない間に、あんだけ朝をにぎわしていたヤエヤマクマゼミが鳴りを潜めている。八重山地方は、山沿いを歩けば、まだまだタイワンヒグラシやイワサキゼミが鳴いているのだろうが、海沿いの街路樹はクマゼミの天下であった。
まだまだの炎天下の日々が続くが、確実に何かが終わっている。夏の終わりか。セミたちからしてみれば、終わりではなく、成就であったり、満願であったり、命の確実なリレーが執り行われたのだろう。今年、結実したセミの卵は、そうだな、7年後のこの街道を騒音で埋め尽くしているのだろう。
そのとき、オイラはどこでなにを。
繰り返し繰り返し、夜の世界を照らしてくれるお月様にも、時々刻々と変幻し、今朝は、下弦の二十三夜さまが、煌々とオリオンらと東の空を運行する。
この二十三やさまは、地平線や水平線から顔をお出しになるとき、鋭い光を放って世を照らし始めるのだという。この月には、勢至菩薩の力が宿り、祈れば願いがかなうのだという。とくに、女性には厚く信仰されたのだというが、オイラには、まだその意味が分からない。とにかくも、今度水平線からお顔を出す時間帯に、海に向かってみよう。
23の月 下弦
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