■【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】102 爪楊枝屋のノウハウ活かし、非接触棒を開発 1127
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■ 爪楊枝屋のノウハウ活かし、非接触棒を開発 1127
菊水産業(大阪府河内長野市)は1960年の創業で代々、爪楊枝の製造販売を営んでいる。こだわりは、伐採、製造、包装を一貫して国内の自社工場で行うこと。爪楊枝のほかに竹串や国産材の箸などの加工販売を手掛けており、飲食向け問屋や百貨店受託販売や、和菓子屋の名入れOEMなどが主な顧客だ。今年2月末頃からコロナの影響が出始め、緊急事態宣言が出て百貨店が軒並み休業の頃などの売り上げは前年同期比5割減に落ち込んだ。
爪楊枝屋として何かできる事はないか、と考えていたときTwitterの映像で中国・武漢の人達がエレベーターに設置してある爪楊枝でボタンを押しているのを見た。国産爪楊枝製造を本業とする同社は負けていられないと思った。設置タイプがあるなら持ち運べて自分専用の物があればいいなと考え、製造過程で機械に通らなくなった北海道産の白樺材を使って「非接触棒」を作った。
先を尖らす必要はないし、木材なので使用後は燃えるゴミに出すことができる。エチケットを守って捨てられるよう使用済み入れもセットして、値段は1箱120本入り568円(税別)。笑いの街・大阪の町工場らしく語呂合わせにこだわり、567円(コロナ)に勝つという意味で1円多い568円だ。パッケージには「さぁ、思う存分つつくがよい。」というコピーも添えた。
エレベーターやインターホンのボタン、クレジットカードの暗証番号入力、バスの降車ボタンなど、指で直接押したくないときに役立てばと20年4月末に発売したところ、メディアから取材依頼が来て大きな反響となった。「詰め替え用がほしい」という声に応えて、非接触棒の中身のみを簡易パッケージに入れた「おかわり」(200本×2袋)も発売した。「さぁ、もっともっとつつくがよい」のコピー付きだ。
販売数は累計約5000個。5人の従業員はみな「今まで作った事がない商品なので楽しい」と作業してくれた。テレビや新聞を見た人から励ましや応援の電話も頂いた。河内長野市の地場産業が爪楊枝であると広く知ってもらうきっかけにもなった。
小さな町工場だ。非接触棒が売れたからと言って危機的状況が劇的に変わることはないが、悲観的にならず前向きに考える事が状況を変えた。これまでは爪楊枝にこだわっていたが、爪楊枝にこだわる必要はないという新たな発見もできた。構想中の商品がまだまだあるので、順次開発していく方針だ。
出典: e-中小企業ネットマガジン掲載承認規定に基づき作成