【アジュガの花は主に青紫、十二単は白っぽい薄紫】
先日、ある「道の駅」で園芸コーナーをのぞいていると、山野草などの中に「アジュガ」があった。ところが名札には「ジュウニヒトエ」。あれっ! 花穂が直立し鮮やかな青紫色の花。どう見てもアジュガに間違いない、はず。花穂が1本だけなのに値段も随分高い。確か日本在来の野草の中に「十二単」というのがあったはずだが……。
帰宅して早速、庭のアジュガを観察、本でも調べてみた。講談社の「草木花の歳時記 四季花ごよみ」で十二単をめくると、その説明に「たくさんの小さな淡紫色の花を円錐状に咲かせる」とあった。写真を見ると、花穂の外見は確かにそっくりだが、花の色は白っぽくてアジュガの濃い青紫とは違う。そうか、アジュガは日本で「西洋十二単」と呼ばれているのか。和名を知らなかった。園芸店ではそれをさらに略して「十二単」として売っていることも多いため、日本在来の十二単と混同する人が多いという。納得!
十二単もアジュガも同じシソ科。アジュガの花はほとんどが青紫だが、ピンクのほか十二単に似た白いものもあるという。では、世界共通の学名は? アジュガは「Ajuga reptans(アジュガ・レプタンス)」、そして十二単は「Ajuga nipponensis(アジュガ・ニッポネンシス)」。えっ、頭は同じアジュガ? これじゃ、混同するのも仕方ないか。ちなみにアジュガはラテン語で「束縛が無い」を意味するそうだ。
アジュガは寒さに強い多年草で、春になると花茎の高さが20~30cmにもなる。十二単の名の由来は花が階段状に重なって咲く姿を宮中の女官の十二単に見立てたものだが、その姿はアジュガにもあてはまる。ただ、十二単は茎などを白い毛が覆っているが、アジュガにはほとんどない。繁殖力旺盛で、ランナーを伸ばして増えるため、グランドカバー用の這性植物として利用されることも多い。