【イルカショーの向こうに望むのは沖縄戦激戦地の伊江島】
国内の水族館で最も人気を集める「沖縄美ら海水族館」(本部町)。2015年度の入場者数は340万人に達し過去最高記録を更新、2位「海遊館」(大阪)の245万人、3位「名古屋港水族館」(愛知)の205万人を大きく引き離す(総合ユニコム調べ)。最大の見どころは世界最大級の大水槽の中を悠然と泳ぐジンベエザメ3匹。このうち同水族館で唯一名前が付いているオスの「ジンタ」は今年3月、飼育開始から満21年を迎えた。もちろん世界の水族館で最長、今も記録更新中だ。
大水槽は「黒潮の海」を再現したもので、その大きさは幅35m、奥行き27m、深さ10m。水量は7500トンに及ぶ。入場者との間のアクリルパネルも厚さが60cm。ジンベエザメのおなか部分は白いが、背中は灰色に白の斑点模様。それが着物の甚平に似ているとしてその名が付いた。遊泳速度は時速4キロほどで、眠っている間も終始泳ぎ続けるという。餌を食べる際には体を垂直にしてプランクトンやオキアミなど海面付近の餌を海水とともに一挙に吸い込む。食事タイムは毎日午後3時と5時だが、そのダイナミックな食事シーンを見ることができずに残念!
同水族館はサメ、エイ類を中心とした繁殖で知られる。これまでに日本動物園水族館協会の「繁殖賞」を26種類の動物で受賞しているという。繁殖賞は生まれたこどもが半年以上生存し、それが日本で初めての場合に与えられる。ジンベエザメと同じ水槽で何匹も泳ぐ巨大なエイの一種、ナンヨウマンタの繁殖も同館が世界で初めて。ミナミバンドウイルカの繁殖にも成功している。大きな目標はジンベエザメの繁殖だ。寿命は60~70年とも100年ともいわれる。いつの日か「ジンタ」の2世が誕生することを期待したい。「黒潮の海」のほか「サンゴの海」や「熱帯魚の海」なども見どころたっぷりだった。
水族館を出て次に向かったのは無料施設のイルカショー「オキちゃん劇場」。登場したのはバンドウイルカやオキゴンドウなど大小さまざまで、大きな口笛のような音で歌ったり、空中高いボールに大ジャンプしたりして、満員の観客から大きな拍手と歓声をもらっていた。会場真正面の沖合いには尖った山がそびえる伊江島が見えた。沖縄戦の激戦地の一つ。米軍が上陸した1945年4月16~21日の〝六日戦争〟で、日本軍の守備隊約2000人と村民約1500人が戦死したという。米軍は島を占拠後、日本陸軍の飛行場を補修し沖縄本島と日本本土への出撃基地とした。イルカショーの向こうに見える約70年前の悲劇の島を眺めながら、改めて平和の大切さに思いを巡らせた。