【別名アワコガネギク、黄金色の小花が密集して開花】
主に本州の東北~関東の太平洋側と近畿地方の、日当たりのいい乾いた谷間や崖に自生するキク科の多年草。草丈は1~1.5mで、直立した茎の上部で多数分枝して頭状花序を形成し、晩秋、径1.5cmほどの小花を多く付ける。花は筒状花も舌状花も鮮やかな黄金色。密集した小花が泡立つように咲く様からアワコガネギク(泡黄金菊)とも呼ばれる。
キクタニギクの名前は京都市内の地名菊渓(菊谷とも)に因む。ただ、京都府のレッドデータブック2015では絶滅危惧種に分類されており「和名のもとになった京都市東山区菊谷では絶滅」と記す。そんな中、「京都伝統文化の森推進協議会」を中心に自生地復活に向けた活動が本格化している。市民やボランティアの支援も受けながら、昨年から今年にかけてシイなど高木の伐採、苗の植栽、散策道の整備などに取り組んできた。
キクタニギクにはアブラギク(油菊)の別称もある。これはかつて花を油に漬けたものが薬用の菊油として切り傷や火傷などに使われたことによる。ただ、よく似たキクで近畿以西に分布するシマカンギク(島寒菊)もアブラギクと呼ばれる。キクタニギクは中国北部や朝鮮半島にも分布する。1990年代以降、全国各地で中国・韓国由来の種子が道路の法面緑化に広く使われた。その結果、国内で本来の分布域でない地域に帰化しており、国立環境研究所の「進入生物データベース」はその影響として「在来種との競合、在来のキクタニギクの遺伝的攪乱」を挙げている。