自分の天皇位就任の為に、又もや、その人の殺害を計画します。市辺押磐皇子です。
先ず天皇は、皇子を狩り誘います。
”近江来田綿蚊屋野猪鹿多在<オウミ キタワタノカヤノニ サワニ イシカ サワニアリ"
と。さらに、
「その角はあたかも枯木の末を並べたようであり、また、その群れ歩く足々はしなやか枝先のようです。それら鹿たちの吐く息は朝霧のようにそこら辺りに立ち込めております。どうですかご一緒にこの動物たちを狩りしようではありませんか
」 と。
10月の風もなく絶好の狩猟日和です。天皇と皇子は共に馬に乗って、近江の蚊屋野の鹿や猪の群れを追いかけます。その途中で、突然、雄略天皇は
"陽呼白猪有<イツワリて シロシカアリと ノタマワく>”
(ここにも「陽」がで出来ます。)と云いいます。そして、天皇は弓に矢をつがえ、皇子に矢を放ち殺害してしまいます。要するに騙し討ちです。初めから皇子殺害を目的にした誘いです。誠に残忍としかい言うようのない殺害方法です。その時、皇子に仕えていた「売輪」という家来は飛んできて、皇子の体を抱きかかえて、
"不解<シラズ>所由<スルスベ>反側<フシマロビ>呼<ヨバヒ>号<イラビテ>”
要するに、家来は、どうしたらよいか分からず、大声でわめきその死体を抱き抱え、その場で右往左往するだけだったのです。その家来を
"天皇尚誅<スメラミコト ナホ コロシタリ”
どのように殺したか何も書かれていはいませんが、「尚」という一字によって、その殺害方法は想像がつきますが。多分何もおっしゃらないで、その刀で、どうしたらよいか分からないでう泣き悲しんでいる家来を、無言の内に、一突きで殺されたのではないでしょうか。
この筆者の言葉選びの巧さには幾度となく感激させられる場面です。
まあ、これで天皇の大悪が終わるのかと思いましたが、書紀には、これから、まだまだ、その大悪を書き続けております。「吉備の3代美人」にまで到着するには今しばらく時間がかかると思いますがお付き合いください。