11月は三回も京都に行く機会があったのだけど、暖かすぎて葉はきれいに色づいておらず、枯れ葉色の汚い木々ばかりでがっかりだった。写真は永観堂のライトアップの初日。でも、ここ数日は冷え込んでいるから、今は少しはきれいになったかな。
ずっと行きたかった銀閣寺通りにある「草喰・なかひがし」に連れて行ってもらった。4ヶ月遅れの私のバースデー・ランチ。自分が行きたい店を選んでよし、だったので、今京都で一番ランチの予約が取りにくいという店をお願いしていた。ここ数年、中高時代の友人4人、大学時代の友人3人とそれぞれにバースデー・ランチをしているのだが、なかなかみんなの都合が合わず、結局1年中何ヶ月か遅れで誰かのバースデー・ランチをしているというのが実情で、子供には「いつまで誕生日やってんの?」ってあきれられている次第。この年になると、誕生日が嬉しいわけでもないので、ま、なかなか行く機会のない店に行く口実がみんな欲しいだけなんだよね。
「なかひがし」によく行く別の友人は、初めてなら夜に行ってほしかったな~って言ってたから、ディナーはより豪華なんだろうね。
ご主人は有名な料理旅館「美山荘」三代目、中東吉次さんの弟さんの久雄さん。現在美山荘は四代目が継いでおり、四代目の妹さんが料理研究家の大原千鶴さんというわけだ。美山荘と同じく摘草料理のお店で、毎日ご主人が山に入って摘んだ野草やきのこ、川魚を調理する。
入口を入ると赤色のカウンターがまず目に飛び込んでくるのでハッと身構えてしまう。その奥にはこれまた目を引く朱色のかまど‐おくどさん。この日の私達は二階のお座敷。訪問した日はご主人が不在だった代わりに、奥様が各皿の前にお座敷に来てくれては料理の説明をおもしろおかしくしてくれた。彼女の実家は味噌屋だそうで、「赤蕪には鮎のパテ、白蕪には20年物の大原の味噌、手前味噌ですが美味しい成人式を迎えた味噌がはさんであります」といった具合。
丹波の黒豆は1時間も煎ったもの。こんなに美味しくなるんだね。栗は膨らんだ側に深めに十文字に包丁を入れ、油で揚げればこんなに簡単にはじけるんですよ、と教えてくれる。手前の小椀には、むかごと自然薯の飯(いい)。「主人は、親子丼だと言っとけ、と」 と笑う奥様。
子持ち鮎は一度炊いてから焼き、朴葉に包んでまた焼いたものを万願寺唐辛子のピューレにつけていただく。殻付きピーナッツは千葉の叔母様が送ってきたもので、1 時間湯がいたものだとか。米はポップさせ、ゴボウは木の枝にみたててある。
白味噌汁に入っていたなめこはちゃんと天然物って言ってたけど、お浸しに使われていた椎茸は自然発生したもの、って言ってた。それってどこに?路地に?ってな感じだった。
刺身に出た鯉は全然臭くなくて、鯉に対する私の固定観念を払しょくしてくれた。秋に実がなる赤山椒とともにいただいた。
ご主人がこの店を開こうと思ったのは、信楽焼の土鍋と出会ったからだそうだ。この土鍋で炊いたご飯があまりに美味しくて、こんなに美味しいご飯が炊けるならみんなにこれを食べさせたい、と、おくどさんを中央に据え付けた店を出すことにしたそうだ。炊きあがったご飯は、一口だけ急いでよそって、すぐに食べて下さい、と持って来て下さる。「ご飯のアルダンテです」と。だからここのメイン・ディッシュは、ご飯に一番合うものということで、「めざし」に決まっている。
数年前、開店10周年記念に日本の洋食器の名門、大倉陶園にイワシ雲のお皿を作ってもらったというこだわりも凄い。大倉陶園独特の岡染めという技法で描かれた青い空、イワシ雲は実に美しかった。話を聞いていると、あえて洋食器を和食に取り入れるのもなかなか大変だったようだ。蒸らしたご飯と美しいめざし、そしてお漬け物がランチでもディナーでも最後に出てくる。ご飯はもちろん何杯でもおかわりができ、香ばしいおこげでフィニッシュさせてくれる。今までのおかわり最高記録は、18杯だそうだ。
私が一番気に入ったのはデザート。一度焼いてから冷やした柿は皮ごと食べることができ、甘くて冷たくて、これだけでも十分に美味しい。茶色い小枝は近くのチョコレート屋さんに無理を言って作ってもらっているそうで、人参の葉のシャーベットをのせて、一手間かけたなんともエキゾチックな和風デザートに仕上がっていた。
材料費は大したことないのだろうけど、一品一品に途方もない手間暇、そして繊細な美的感覚が感じられた。こんなこと、修業中の板前さんがたくさんいるからできるんだよね~なんて意地悪な私達おばさん達はつぶやいてたけど・・・
実は、「京の小袖展」を見に明日も京都へ行きます。。今月四回目の京都、これは自己最高記録だな。。きれいな紅葉が見れたらアップします。それより、どこで何食べようかな~と思案中・・・