
昨日は繁昌亭の昼席へ。
生喬が「奨励賞」を受賞し、
その記念に中トリをとる1週間。
他の日はトリがあまり好きでない春之輔だったので、
恐らく初めて、日曜の昼席に行ってきた。
1階はほぼ満席、2階も6割方埋まっていた。
大入り袋も出た様子。
「明石飛脚」(べ瓶):△+
元瓶成。
「3年目」と言っていたが、それは「べ瓶」として再入門してからで、
実際には10年程度のキャリアのある人。
いかにも演芸場に喋り慣れた感じであり、
マクラできっちり客を掴む。
ネタは米朝系のまま。
「大阪から」を終始強めに言っているが、徐々に弱くしていって良いと思う。
まあ、どうせ不自然なネタだと感じるので、
どうでも良いとも思うが。
「終わると見せかけて次の小咄をやる」でウケをとる。
「明石飛脚」「近道」「うわばみ」とやったのだが、
「近道」と「うわばみ」の間の「一度立って見せる、実は着物を直すだけ」は
ちとやり過ぎかなあ。
よくウケていたのは確かだが、少し客弄りの感がある。
「茶漬間男」(扇平):△-
誰のことを指しているのか若干分かりづらいところもあるマクラ。
小咄はまあまあ。
ネタはきちんと演ろうとしているようだが、
けっこう雑に感じた。
最初の唄も調子が変。
松ちゃんが連れてきた(自分の嫁さんだと知らない)女に声を掛けるときの
言葉遣いで乱暴なところがあること、
「暗闇で喋っている」目線の使い方や声の出し方でないこと、
などが雑と感じた理由か。
松ちゃんの前に付き合っていた具体的な女の話を
男も嫁さんもするのは悪くない。
しかし、昼席の二つ目でこのネタをするのはどうかなあ。
客席の雰囲気に水を掛けてしまっていたように思う。
「目指せ!ちょっと岳」(三風):△+
「三枝風」のマクラ、面白いけど回りくどく感じた。
もっとスパッとオチまで持っていけそう。
あと、何度も聞いているような東京と大阪の比較マクラ。
ネタも「大阪のおばちゃん」の生態を笑う、というよくある類のもの。
類型化された「おばちゃん」像。
「持っているもの」が「遭難した時に役に立つ」繋がりは悪くないが、
別にどうってことはないネタ。
よくウケていたし、落語会の雰囲気を軽くしたのは確かだが。
ジャグリング(ハッピーはるや):○-
笑丸の子どもらしい。小学校二年生。
べ瓶による紹介があり、
「お父さんが仕事をしないので」といった作文を読んでジャグリング。
色々な手を紹介してジャグリングをしていくだけだが、
「子どもが演っている」ことで客を引き付けていた。
ジャグリングそのものも上手だと思う。
「崇徳院」(のんき):△
一度座布団の前を通り過ぎて座る。
リーゼントの髪型にマクラで軽く触れる。
うーん。個人的には正直、そんなことをやらなくても良いのに、と思う。
もっと言うと、リーゼントにする意義が分からん。
ネタは松之助そのもの。
表情の堅さや崩し方など、よく似ている。
熊さんと若旦那の会話も特にギャグを入れる訳でなく、
聞いていく内に徐々にウケがきたり
次の熊さんと旦那の会話でのバラシで反応があった。
ただ松之助同様、雑に感じられる台詞が散見された。
探している途中で切っていた。
「へっつい幽霊」(生喬):△+
「へっつい」を説明するきっちりとしたマクラ。
生喬を含めて誰も「繁昌亭奨励賞」の話をしないのだが、
そんなものなのかな。
ネタもきっちりと。
ただ科白をトントンと運ばず、待つ間が多いので少しイライラする。
表情や個別の台詞でウケを取ろうとしていたようだが
あまり盛り上がらず、ちと眠くなった。
音曲漫才(めおと楽団ジキジキ):○-
東京の人らしい。
出から派手。
「お椀と茶碗で演奏」や「中国の唄」、といったギャグで笑わせ、
ピアニカの曲弾きで感心させるあたり、
非常にベタだが分かりやすく、盛り上がった。
「豆屋」(千橘):△-
久し振りに見た。20年近く見ていないのではないかな。
出方からして変。
また、座布団にまっすぐ座らない。
いきなり「竿竹売り」の売り声のマクラから入るのだが、
何の話をしているのかよく分からない。
枝雀を形だけ真似た上で無茶苦茶にしている感じ。
だいたい「筍」を言うのに座布団の上に立つのはどうだか。
ネタも落語としては破綻していると思う。
最初の「お喋り婆」が出てくるところはよく分からないし、
一人目と二人目が仕込みバラシになっている、なんて構成に主眼はない。
ただ、妙なおかしさは感じた。
「小人プロレス」や「蛇女」を見て面白い、と感じるようなおかしさか。
豆屋が客と喋っている内に、
昭和の流行歌や映画の台詞が漏れてくる。
二代目春団治っぽい台詞回しだが、
時代設定も何もない。
落語としては無茶苦茶だが、
数年に1度くらいならば短いネタを1席くらい見ても良いかも、と
感じられた色物だった。
「漫談」(楽珍):△+
これまた色物。
延々漫談をやっていた。
徳之島の「選挙賭博」「食べられないキャベツ」などの話、
面白いのは面白かった。
その流れで最後に「亡くなったおばあちゃんがマッサージ機」を使う、
という新作のサゲだけ。
「善悪双葉の松」(鶴光):○-
声も適当なギャグやシャレを入れている芸風もあまり変わらないが、
調べるともう65歳になるんだな。
東京でもっと上の芸人と一緒に定席に上がっているから、
相対的に意識が若いままなのかも知れない。
講釈種の人情噺。
そこにギャグを挟み込み、地噺っぽくなっている。
登場人物などの設定が複雑なこと、
「んなあほな」と思わせる点が多数あるのはやむを得ない。
最初に武助が「百両とは別に金を欲しがる」繰り返しギャグがあるのだが、
これは武助の人物像と合わない。
ウケをとるための設定だろうが、
全体が分かりづらくなるので入れない方が良いと個人的には思う。
脈略のないギャグの入れ方、
スムーズに本筋に戻すところは流石。