毎月1日の「TORII寄席」。
今月は染丸一門会で、東京から来ている新文治がゲストとして出演する。
満員の入りで、補助椅子も出ていた。
前説(鳥居さん)
ミナミの状況など。
多国籍化する小学校で、日本人の子どもだけ自国の文化について語れない、といった話。
ミナミでの活動について、
「フリースタイルな僧侶たちのフリーマガジン」に掲載されたらしい。(バックナンバー)
軽く読んでみたが、けっこう興味深い話も載っていた。
「みかん屋」(愛染):△+
初めて見た。顔の感じは染吉に似ている印象。
落研っぽい喋り方、表情の付け方。
声はまあ出ているし、慣れている感じはする。
微妙に語尾に訛りが出る箇所があったが、気になる程ではない。
上下が少し深過ぎるところ、
何と言ってもみかん屋にあまり可愛げがないのは気になったが、
全体にはきっちりやっていた。
みかん屋に紙を取りに行かせるくだり、
視座をみかん屋から便所の中の男に移し、
「なかなか帰って来ないな」とか言わせていたのだが、
視座を移す煩雑さはマイナスではないかなあ。
「こうやで髪を落とす」を入れないにしても、
扇子で叩いても進められる訳だし。
「いらち俥」(染太):△
英語落語の話や噺家になる前にやっていた仕事の話。
よく考えて作られてはいる。
ネタは「こうやればウケる」という型にはめようとする
表情付け、仕草が気になって楽しめなかった。
笑おうと思っても、こうやればお前ら笑うだろう、という下品さのため、
安心して笑っていられない。
一人目の俥屋は「昨日病院から出てきた」という割には元気。
そのため、二人目の俥屋とあまり差が出なかった。
巨体で飛んだり動いたり、文字通り汗をかいてやった。
ただそれも、「汗をかいてやっていますよ、大変そうでしょう」と
アピールする道具に使っているように見える。
まあプロなので、太っていることをネタにウケをとっても
商売上良いとは思うけど。
あとはごく普通。
舞鶴まで行き、「そのままピョンヤンへ」とか言っていた。
もう少し時事ネタを入れても良いかも。
「うぬぼれ屋」(花丸):△+
初舞台がトリイホールだったという話、
変わった落語会の話や浜村淳の話からネタへ。
おそらく「超古典の会」のネタなのだろう。
義太夫が好きだが下手な旦那が「うぬぼれ屋」で、
師匠が「辞めて下さい」と言うのを自分の良いように解釈して、という話。
小咄程度を引き伸ばしている、という感じはするが、
まあ、特に悪くはないネタ。
個人的には、「寝床」の話をする必要はないと感じる。
旦那の「うぬぼれ」がメインであり、
師匠とお店の人の会話はそこにつながる程度の位置付けで良いと思う。
その「うぬぼれ」も徐々に酷くなり、
最後は呂大夫の逸話に掛けて「亀ではなく蟹が出てくる」からサゲに至る、
という全体構造の方が良いかな。
もっと酷い「うぬぼれ」を見せても良いと思う。
「親子酒」(文治):○-
久し振りに見た。
前の方で見ると、非常に声の大きな人なんだと思った。
先代文治や志ん生の話がマクラ。
上下を振るのだが目線は正面を向いたまま。
ネタは何となく権太楼っぽい。
老夫婦の会話、表情付けをクサい程丁寧にやっていて、よくウケていた。
個人的には、特に江戸でのこのネタは
もっとあっさり演る方が好みではある。
色々現代的な入れ事をしたりしていたが、特に悪くはない。
酒の呑み方がイマイチ。
湯飲みの重さ、酒の量、徐々に酒が減っていくところが
あまり感じられなかった。
「音曲漫才」(姉様キングス):○-
桜にちなんだ都々逸、猫じゃ猫じゃ、最後に「金色夜叉」。
都々逸は「親子酒」とかぶっているネタもあった。
一言言っても良かったかも。
「猫じゃ猫じゃ」で「ピロリ菌」の話をしており、
それは面白かったが節にはつなげていなかったので、
次の「勘三郎」での節までの仕込が長く感じられてしまった。
「金色夜叉」はごくあっさりと。
これはまた聞きたいな。
たっぷり、良い色替り。
ジャクリーヌの紅が歯に付いているのが、少し気になった。
仕方ないけど。
「浮かれの掛け取り」(染丸):○-
脳梗塞後、見るのは初めて。
動きは問題ないが、喋りにはまだ少し後遺症が見られる。
ただ「分かる」という程度で、そこまで引っ掛かるものではない。
マクラで「リハビリ」てな話を振ってウケをとり、
あとは自由に喋っている感じがする。
狂歌、義太夫、喧嘩、歌舞伎。
男にしても掛け取りにくる人間にしてもそこまで本気ではなく、
表情も声も楽しんでいる様子が出ている。
男の「明日は正月、めでたいな」の言い方の愛嬌が可笑しい。
狂歌は普通に。
義太夫は流石。少し声が小さいが、丁寧に節が付けられている。
喧嘩はあっさりと、
「よう言わんやろ」「言えるわい」と言って勢いで追い返す形。
歌舞伎もじっくりと。
「返済時期を節を付けて語る」追い返し方が被っている、と
個人的には感じるので、
義太夫と歌舞伎を両方演るのはあまり好みではないのだが、
染丸に合ったやり方ではあると思う。