昨日の夜は繁昌亭へ。
年に1度、福笑が異色のゲストを呼んで開催する落語会。
今年のゲストは元憂歌団の木村充揮。
ライブを見たことはないのだが、CDで聞いたりしており、
独特な声が気になっていたので見に行くことにした。
そんな訳で個人的な目的は落語よりも唄。
前売は売り切れ、当日券がかなり出ていた。
2階席で立見の人も。
スーツ姿の男性が多いなど、普段とはかなり違う客層。
「寝床」(たま):○-
マクラで「AV浄瑠璃」を一節。
あまりハマっていなかったが、
パロディっぽく感じられた(「立ち騒ぐ」など)のが
受け入れられなかった原因では、と思う。
既存の、特に落語で使われるような部分を使うのではなく、
オリジナルの台詞にして、
元の台詞は気にせずAV(というよりエロ本っぽいか)のシーンを取り上げた方が
良いと思う。
「旦那が浄瑠璃が大好きだが下手」と最初に説明してネタに入る演り方で、
卑怯だろう、という感覚が個人的にはあるのだが、
まあ分かりやすいので、番頭が旦那に説明するところではよくウケていた。
長屋のやもめは元侍で「切腹した」と言うもの。
後で「生き返った」ではなく「介錯していなかったので」といって
長屋の連中がやって来ることに繋がる。
これはこれで悪くない。
娘さんが旦那の機嫌を直しにくる設定。
店の連中が旦那の浄瑠璃を聞きたがらないのが
「浄瑠璃を上達させるためにお師匠さんに言われている」というのは自然だし、
後の「命のあらん限り語る」にも繋がっていて良い。
「森田の倅」が老母を連れてやってくる説明で
位牌を胸に抱いていたり、
何となく浄瑠璃を語ったりするのは面白いな。
旦那の浄瑠璃を耳に入れまいとお師匠さんが三味線の音を大きくしたところ、
「ここで盛り上がるんだな」と勘違いした旦那がさらに声を張り上げる、
お師匠さんがさらに聞くまいと三味線を大きくする、という悪循環が良い。
「御簾が落ちる」「耳から血を流して倒れる」
「それを助けようと手を伸ばし、耳から手を離した他の人がさらに倒れる」
地獄絵図は映像的で面白い。
ただ「女殺油地獄」で玉子屋さんを殺した話が仕込になり、
「人間殺し浄瑠璃地獄」と地で言って降りる形にまでする必要はないかな、とも思う。
浄瑠璃の演題を聞くことで「難しい」と引いてしまう客もいるので。
或いは仕込みはなくして
最後だけ「女殺油地獄ならぬ人間殺し浄瑠璃地獄」と言い切ってしまっても
良いのでは、と感じた。
「入院」(福笑):○-
花見の話から老人が増えている、といったマクラからネタ。
医者と患者の会話はベタだが、まあまあ。
全体にツッコミまでの間を空けるところが多く、
そこは少し単調になっていたように思う。
医者のベタなボケの言葉遊びの積み重ねで、
徐々にウケが大きくなってはいたが。
患者が検査のために入院し、同室の全身包帯姿の「川柳好き」との絡み、
そこに友人がやって来てこれが様々な形で包帯姿の男にぶつかって
男の様々な痛がり方を見せる、という感じのネタ。
「逆立ち」など、「それをやったら当たって痛がるぞ」と客に期待させ、
実際にその描写でウケをとる、という形で作られている。
「下から煙が上がってきて、火事だと思って」というあたりは
少しやり過ぎかな、とも思わなくもない。
自分たちで運ばず、看護師を呼ぶのでは?という疑問を持ってしまった。
言っても仕方ないことだが。
実際には火事でなく、ぐるっと廻ってサゲへ。
熱演、ではあった。
唄(木村充揮)
スピーカーの陰に置いてあったウィスキーを飲み、
少し客と話をしてギターを弾きながら歌い始める。
喋り方や動きなど、「アル中?」と感じてしまうところもある。
歌の途中でギターを離して手を細かく動かすところ、
何かテントみたい。
ギターは丁寧に弾いているんだなあ。
きっちりしたそのリズムがベースにあるから、
歌は伸ばしたり刻んだりして崩せるのか、とも思った。
客が絡んでくるのを打ち返したり流したり、
巻き込んでいく喋りは流石。
繁昌亭は広いので、特に2階席までは巻き込みきれなかった印象。
またライブハウスでも聞いてみたい。
「裏切り同窓会」(福笑):△+
「体罰」の話などから「体が弱いと女と出来ない」といった話、
様々な性格の人間がいる、という話から「心配性」の出てくるネタへ。
割とよく纏まった印象のマクラ。
久し振りに聞いた。
二人の友人の絡み、感情や喋り方の変化など、よく整理されていた。
また、高校時代のマドンナ八千草さんが「皇潤」を飲んでいる、と言うのに対して
先生が青汁を飲んでいる、や、
「コンドロイチン」に対して「今度チンチン」など、
ギャグも増やされている。
ただ個人的には、あまり好きなネタではないなあ。
まだ私が30代で、定年を過ぎた年代の人間の同窓会、なんてものに
親近感を持てないからかも知れない。
出来としても、以前に比べて声は出ていたように思うが、
噛んで流れを損ねるところもあった。
また、病気の話から入ったり、
登場人物の年齢層や友人二人が会話したりする設定、
ギャグ(二人三脚で先生を引っ張って走るところ)など、
「入院」と被っている印象を受けた。
サゲはいい話風だが、個人的にはあまり好みではない。
途中で「今度風呂入れて」と先生が言うなど、
「ヘルパー」が嫌になっている、という仕込みも増やされており、
自然ではあるのだが。