瀬戸際の暇人

今年も偶に更新します(汗)

『何度も廻り合う』その19

2006年01月19日 22時40分13秒 | 桜トンネル(ワンピ長編)
前回の続きです】




迷路を脱出した頃には、午前10時を回っていた。


ナミから先の予定が狂うじゃないかと小言を食らう。


……ならもっと早くに迎えに来てくれりゃあ良かったじゃねェか。




急いで庭を突っ切り、宮殿入口へと駆け込む。

その頃には俺達以外の観光客の姿も有り、受付で数人がパスポートを提示し入館していた。



「美術館って、何を展示してんだ?」
「今年はオランダの名画家、レンブラントの生誕400年を記念して、『オランダ文化の400年展』を開催してるんだって。ハウステンボスが所蔵するオランダ関連の貴重な資料や絵画を何回かに分けて公開するってポスターに書いてあったわ。」
「貴重な資料ねェェ…。」
「良いじゃない。普段は中々行かない美術館。この機会に行くのも良い思い出になるでしょ?ルフィも観たいって行った事だしv」
「それが不可解でしょうがねェ。ルフィ、何でお前、美術館なんて行きたいっつったんだ?」
「あの貯金箱に付いてた絵を描いた奴…エッシャーっつったか??そいつの絵も有るってナミに聞いたからだ。俺、あいつの絵、面白くて好きだ♪」


…やれやれ…俺と同じくれェ絵心無ェ奴だと思ってたんだがなァ。




美術館に入館するには、パスポート以外にも観覧料200円取られるらしい。

これも今一気の進まねェ理由の1つだ。

自分の興味無ェ事に金使うのは、どうにも理不尽に感じるもんだ。


「何ケチな事言ってんの!?たかだか200円位で!!他んトコ行ったらもっとボッタクラレるんだから!!」


こいつに「ケチ」って言われると、妙に傷付くのは何故だろう?


大体美術館なんて、美術の校外授業でくれェしか行った事無ェんだ。

他と比較出来るかっつの!!……と返そうと思ったが、賭けに負けての約束だから仕方ねェと諦める。



券売機で券買ってパスポートと合せて受付に提示する。


受付の女から右に在る扉から入るよう案内されて中へと入った。




照明を落としたフロア内は、外観を裏切らない優雅な内装だった。


「うっひゃ~~~~~~~~!!!すっげーゴージャスなシャンデリア!!!」
「騒がないのルフィ!!てゆーか注目するヵ所が違うでしょ!?」(小声)


展示フロアは1階だけでなく、2階まで続いていた。


『オランダ文化』っつう謳い文句通りに、展示品は絵や工芸品、民族・海事資料と範囲が広い。

これ全部此処で所蔵してるっつうのか?そりゃ凄ェよな。


「ポスターによると、ハウステンボスが所蔵する美術コレクションは9,000点にも上るんですって。」
「へェ、9,000点もか?」


確かに世間的な意味での『テーマパーク』とは、ちょっと違ってるよな。



フロアを示されてる順路通りに廻ってく。


…まァ、色々展示されてて、それなりに面白い、大したもんだと感じはするが、正直芸術については良く解らねェっつか、ぶっちゃけ興味が薄い。

一々解説読みながら感心して観廻ってるナミを残し、早々に2階へと進む。


それはルフィも同じだったらしく、階段上った所で如何にも退屈だって風な奴と顔を合した。


「だってほとんど知らない絵ばっかだしよ~~。正直あきちまったからもう出たいんだよなァ~~~。」
「っておめェが観たいっつって来たんだろがっっ!!」(小声)
「俺が観たかったのはエッシャーだけだ。全部観終ったからもう満足だ。」
「……ったくきっぱりと…なら最初から来ようとすんな。専門の売店が在るんだから、そこで画集でも観とけば良いだろが。」
「もっと沢山エッシャーが飾ってあると思ったんだけどな~。どうせだったら全部エッシャーだけにしてくれりゃあ良かったのに。」
「………それじゃ『オランダ文化展』じゃなくて、唯の『エッシャー展』だろうよ。」


階段手摺から下を覗いてみる。


未だナミは、入って4枚目の絵の前で止ってた。


こりゃ全部観るまで長くかかるな…。

どうする?置いてって先出ちまったらえらい怒るだろうし…。



「なァゾロ、ちょっとこの絵観てみろよ。」

「んあ?」


ルフィが指差した絵を観る。

それは男女が裸で絡み合ってる様な物だった。


解説を読むと『パリスとオエノネ』…宗教画か何かか??


「何でげーじつってはだかばっかなんだろなー??」
「そりゃお前………本当の美とは『自然のままの姿に有る』っつう意味からじゃねェか?」
「すっぽんぽんが1番きれいっつう事か?」
「まァ……そうなんじゃねェの…?ほら、『有りの侭の君が美しい』とか言うだろ?」
「そうか、『ありのまま』がきれいなのか。服着てんのはげーじつじゃないんだなー。」
「その割にはAVやストリップショーなんかに対して世間の目は厳しいけどな。」
「露出狂にも厳しいよな。」
「ありゃお前、放っといちゃ拙いだろ?社会の迷惑だ。」
「皆はだかになりゃ良いんじゃねーかな?そうすりゃ、露出しても目立たねェ。」
「って何でおめェは露出狂の肩持つんだよ??露出してェのかよ??」
「男のそれは厳しくても良いけどよォ、女のそれは許してくんねーかなと。目の保養じゃん。」
「いや、女にも許し難いのが居るだろう?腹が出てる女、あれは悪ィが御遠慮願いてェ。」
「そういやあ、この絵の女も腹出てんなー。」
「ああこりゃ妊婦だからだろう。解説に有んだろ?『ニンフ』って。」
「お?本当だ!…そうか、妊婦だからかー。」
「…って勝手にいいかげんな解釈してんじゃないっっ!!!」
「「げっっ!?ナミ!!」」


何時の間に来てたのか、振り向けばそこにナミが居た。


「『ニンフ』ってのは、ギリシャ神話に出て来る精霊よ。トロイア戦争の発端となった王子『パリス』と、その妻でニンフの『オエノネ』を主題にした作品なの、これは!」

「へー、『ニンフ』って精霊の事か~~ちっとも知らなかったぜ!!」
「妊婦を題材にするなんて、おかしいとは思ったけどな。」

「2人共さっさか進んじゃうんだもん…連れて来た甲斐が無いったら。」

落胆の溜息吐いてナミが言う…悪かったなァ、甲斐無くて。


取敢えずは全ての作品を観終わり、そこそこの満足を得たんで先へ進む事にした。




美術館を出て館内を巡る。


途中、『17世紀オランダの時代部屋』ってのを見学したり、窓から庭園を眺めたり。




芸術は解らねェが…圧巻だと感じたのは『壁画の間』だ。


広いドーム状のホールの壁一面に絵が描かれていた。

1つの物語がどんどんと繋がって行き、最後また振り出しに戻るといった構成。

天井まで隙間無く、床はモザイクで模様が造られている。


360°壮観なその眺めには、3人揃って感嘆するばかりだった。


説明を聞けば、4年の歳月をかけて、観光客の前で、直に描上げた作品らしい。

中心となって描いてた画家は、製作途中でオランダの爆弾テロに遭い、両足を失くしたんだそうだ。

それでも絵筆を置かず描き切った…見上げた心意気だと思う。




館内巡った最後に売店に出た。


絵画をモチーフにした土産品が主流で、エッシャーのポストカードなんかが置いてある。


ルフィがその内の何枚かを選んで買った。

絵の好きなウソップへの土産にするんだそうな。

木と水面浮ぶ木の葉と水中の魚でもって、1枚の絵に3つの世界を描いたっつうそれは、中々シュールで面白い絵だなと自分も感心した。




退館して、昨夜行った庭園に出てみる。


昼って事でライティングはされてなかったが、噴水を中心に配置して、植込みで文様の描かれたそこは、明るい日の下で観ても見事な造形美だった。


「18世紀の造園家、ダニエル・マローが設計した図面を元にして造った庭園なんだって、ガイドに書いてあるわ。」
「アチコチ立ってるあの像は、誰をモデルにしたもんなんだー??」
「あれはギリシャ神話の神々の彫像だって。ポセイドン、アポロン、ヘルメス、ヘラ、アテナ、アルテミス、デメテル、アフロディーテ、ゼウス、ヘラクレス、全部で10体建てられてるみたい。」



昨夜の様に緑のアーチを潜って庭園を1周する。

所々開けられた窓から宮殿を覗き観るのが結構楽しかった。




急がないと、どんどん予定が狂うとナミに急かされ、次の目的地に向う。


戻りは来る時通った並木道の方でなく、庭園脇を抜けて海沿いの道を選んだ。



潮風吹かれて、紺碧の海を眺めつつ歩くのも、気持ち良いもんだ。


休憩用のベンチが並べてあんのも気が利いてるっつか。



「…良い天気だ。雨降るとはとても思えねェけどなァ。」
「何よゾロ?私の見立てが信用出来ないっての?」
「そうは言わねェけどよ…今一ピンと来ねェっつか…どう見たって澄み切った青空じゃねェか。」
「んでもナミの読みは当るかんな~~。」

「ちょっと空見て。……あそこ、飛行機雲が出てるでしょ?」


ナミの指差した上空を見る、確かに晴れた空、白墨で弧を描いた様な雲が出ていた。


「…飛行機雲が中々消えない時は、天気が悪くなる証拠なの。」


「「へーー。」」


……いやだから、そんな説明だけじゃ、常人にゃ理解出来ねえってっっ。




坂道を下りてった先に、日の出を拝んだ桟橋と、ルフィお気に入りの帆船が見えた。


…なんて視認した途端、ルフィは眼を輝かせて走ってく。


「…まるで猫にカツブシね!」

「正に猫まっしぐらだよな。」



ナミと顔を見合わせ笑った。





その20に続】




…ゾロ、ひょっとしなくてもルフィ以上にガイド向きキャラじゃないと見た。(汗)

や、私は『オランダ文化展』、楽しめましたよ?(汗)

写真の説明~、パレスから続く海沿いの道。

見渡す限りの大海原、絶景ですv観賞用にベンチも置いてありましたが、3月に行った時は片付けられてました。(涙)


長く伸びた桟橋の先には灯台が在りまする。
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『何度も廻り合う』その18

2006年01月18日 20時16分14秒 | 桜トンネル(ワンピ長編)
前回の続きです】




ナミが朝市で買った荷物を置いてきたいっつう事で、一旦コテージに戻る。




朝食会場だって言うレストラン『トロティネ』は、俺達の居るコテージの直ぐ側、同じ並びに在った。


これはかなり有難ェと思った。


窓から見えてた硝子張りの建物の中に入ると、もう早大勢の客が飯を食っている所だった。

朝食はバイキング形式、料理に群がってる客を見て、ルフィが不安そうな表情を浮かべる。

自分の分まで食われちまってねェか、気が気じゃねェんだろう。


朝食券を渡して席まで案内して貰う。

湖畔を眺める良い席だった。


着いたと同時に早速ルフィが飛び出してく。

入口横にずらり並んだ料理目にして、「すげー!!」とか「うひょー!!」とか奇声上げてのはしゃぎっぷりだ。



「…私達の分まで残しといてくれるかしら?」
「愚問だろ。あいつが食った跡はペンペン草1本残っちゃいねェって知ってるだろが。」
「………ちょっと釘刺しとく!」


ルフィを追って、ナミも飛び出してった。

早速ペカンと奴の頭を叩いてる。

店の人まで慌てて飛んで来た。


まったく、営業妨害甚だしいコンビだぜ。


今側行ったら間違い無く巻き込まれるな…。

そう考えた俺は、2人が戻るまで、我関せずの姿勢で居る事にした。




「やっぱバイキングは良いよなァ~♪好きなだけ食いもん取って食えるなんて天国みてェだぜ♪」
「だからって、ほぼ全種類のおかず攫って来てんじゃない!!…少しは私達や他のお客さんの事も考えて加減しなさいよ!!」
「ひゃんほはへんひへよほっひゃひゃほ~~!?」


口いっぱいに飯頬張ってルフィが返す。


…まァ、確かに、こいつにしては加減した方なんだろう、これでも。


ナミから1メニューにつき2掬いまでとか決められたらしく、しかもテーブルに乗り切れる様工夫してなのか、1枚の皿に全品少しづつ盛って重ねてある。


白飯近海産カマスの塩焼き南瓜のそぼろ煮込みおでんにキンピラ漬物有明産の焼海苔ヒジキの握り飯マカロニサラダ山芋とカイワレのサラダ海藻サラダ胡瓜レタストマトスクランブルエッグゆで卵ウィンナーフライドポテトクロワッサンホットサンド蒸しパンバナナマフィンその他諸々全部一緒に重ねて……てっきりピサの斜塔でも皿に盛って来たのかと思ったぜっつか、味全部混ざっちまうだろそれじゃ!??


「…料理人が見たら泣く食べ方よね。」

「クソコックが見たら蹴ってるな。」


「ひょうひゃ?へっほうひへふへほほっひゃへほは!!はひゃひほあはひひょひょっひゃひふっひゃひはほんへんひっひゃいほはっへあははひいあひひょへはいひゃひほはっへひ…!!」
「幾ら何でも混然一体カオスにし過ぎよ!!!」
「流石に汁物まで一緒くたにしなかったのは、ほんの少しだけでもこいつに残ってた良識からなんだろな。」
「ひふほほは………後にすんだ!今飲んじまうとすぐ腹いっぱいなっちまうからな!スープに味噌汁おかゆにヨーグルトにジュース牛乳そんで果物なんかも全部、後でちゃんと食うからな!!」

「普通、スープはコースの前の方で戴く物なんだけどね…。」
「ってか、飯食った後でそんだけ汁物腹に流し込んだら死ぬな、普通は。」
「まァ、良いわ……喜んで貰えてるみたいだし。」


溜息1つ吐いて、ナミが言った。

そりゃ食い放題っつったら、ルフィの為に在るもんだろうよ。




「じゃ、食べながら聞いててくれる?本日のスケジュール話すから。」

「スケジュール?」
「ふへふうふ??」


「昨日聞いた要望元に、予定組んでみたのよ。

 先ず9:30、パレスに入り『パレス美術館』を見学。

 11:00、陶磁器の美術館『ポルセレインミュージアム』を見学。

 見学後、クラシックバスでビネンスタッド地区へ移動し、12:00、『ア・クール・ヴェール』にて昼食。

 2:00、カナルクルーザーに乗船、ユトレヒト地区~キンデルダイク地区へと移動。

 2:20、チーズ農家を見学。

 2:40、クラシックバスで、ブルーケレン地区~ニュースタッド地区へと移動。

 3:00より、『ミステリアスエッシャー』、『天星館』、『フライト・オブ・ワンダー』、『ホライゾンアドベンチャー』といったアミューズメント施設を順繰りに体験。

 4:00、ミュージアムスタッド地区まで徒歩にて移動。オルゴールの博物館『オルゴールファンタジア』を見学。

 4:30、鐘の博物館『カロヨン・シンフォニカ』を見学。

 5:00、硝子の美術館『ギヤマンミュージアム』を見学。

 5:50、ユトレヒト地区、カナルステーションよりカナルクルーザーに乗船し、場内1周の船旅。

 6:10、『桜蘭』にて夕食。

 夜間、天候が荒れる可能性から、これ以降は未定。

 …と、この様なスケジュールとなっております。」
「って秘書かてめェはっっ!!?何だその大統領並に緻密で多忙なスケジュールはっっ!!?」

「しょうがないでしょお~?ルフィの要望全部入れてくようにしたら、こんなんなっちゃったんだもん…これでも余裕持ったスケジュールにしたつもりなのよ?」
「律儀に聞くなよそんな無茶!!!!」

「ま~~良~いじゃね~~か~~♪せっかく来たんだから目いっぱい遊ぼ~ぜ~~~♪」
「おめェは良いよな~~ルフィ~~要望ぜェ~んぶ呑んで貰えてよォ~~~!!」
「何よ、ゾロにもちゃんと要望聞いたでしょ?あんたが言わないから悪いんじゃない。」
「言ったけど聞き入れてくんなかったんだろてめェが!!!」
「コテージで1日ゴロゴロなんて……そんなの聞き入れられる訳無いでしょお!!?」

「…ああ、もういい!解った!!…その予定で行きゃいいだろが。」


何か言い合いしてて阿呆らしくなって来たぜ。

要望出した当の本人は、気にせず呑気にまた飯取りに行っちまったし…。



「高校最後の3人旅…無茶付き合ってよ、ゾロv」


こいつはこいつで、やたらルフィに甘ェし。

手を合わせてお願いぶりっこ、気に喰わねェ事この上無ェ。


何となく理由が察せるからこそ、余計イライラしてくる。




無事馬鹿が全メニュー完食、取敢えずの満足を得た所でコテージに戻った。


そしてまた準備整え、パレスに向かって出発進行。



昨夜辿った電飾並木通りは、昼も紅葉が見事で、結構な風情が有った。


枯葉舞う中なだらかな坂を上ると、昨夜は黄金色に輝いてた宮殿が姿を現した。




ライトアップされてないそれは、中世の宮殿そのままの、瀟洒な煉瓦の建物だった。


庭に敷き詰められた緑の芝生は、寝っ転がれたらさぞかし気持ち良かろうと思う。


「未だ俺達以外の観光客、殆ど来てねェな。」
「開園時間から間も無いもの。後30分位したら来出すわよ。」
「昼でもきれいなトコだよなァ~~、しばふなんかじゅうたんみてーだ…日がポカポカ当ってて……寝っ転がったら気持ち良いだろうな~~~♪」


…やれやれ、どうやらこいつと俺は発想レベルが似てるらしい。

どうにも苦笑しちまう。



「右の方行くとローズガーデンも在るんだって。行ってみる?」




誘われて入ってみたそこは、見頃は過ぎたとはいえ、未だ様々な色したバラが咲揃う、小さな花園だった。

中心には噴水に彫像、休憩者用にベンチまで置いてある。

後半月早く来てれば、正に少女漫画の世界そのものだったろう。


「秘密の花園をイメージして造ったんだって…綺麗よね~~vv」

「きれーだな~~!!すんげーでっかいバラも有るぞ!!赤・白・ピンク・紫・黄色…バラって色んな色が有るんだな~~♪」


記念に写真を撮ってく事になったが、俺は遠慮した。

男がバラをバックに撮ったって似合わねェよ。



「反対の左側行くと迷路が在るんだけど……そっちも行ってみる?」

「「迷路??」」




左に行くと、確かに生垣で造った様な迷路が在った。

迷路ったって、さっきのバラ園と同じくれェの広さだ…どう見たって子供騙しだけどな。



「どう?何なら挑戦してみる?」
「よぉし!!俺挑戦すっぞ!!」
「ゾロは?」
「…するかよ。恥かしい。」
「あら、自信無いの?」
「んなわきゃ有るか!!こんな子供騙し!!!」
「じゃ一緒に行ってみて来れば?中心まで行って、首尾良く抜けられたら、要望何でも聞いてあげるって事で!」
「面白ェ!!…じゃ、無事俺が抜けられたら、今日は全員コテージでゴロ寝な!!」
「んじゃ俺はナミのおごりで肉食い放題!!!」
「良いわ、賭け成立ねv…もしも2人が自力で脱出出来なかった場合は、今後私の組んだ予定に、文句を付けず従うって事で――用意…スタート!!




掛け声と同時に、ルフィと俺は中に入ってった。

そのまま奥まで一息に行く。

小さい迷路だ、程無く中心と思しき円の部分まで到達した――楽勝だぜ!!



それじゃあって事で来た道を戻る。


右折れて左折れて後ろ戻って前進んで………




………………んあ!!?




「…ゾロ、ここ、元居た中心だぞ?」
「おおおおっかしいな…よし!じゃ、今度はその反対に行ってみるぞ!!」




左折れて右折れて前進んで後ろ戻って………





………………おおぅ!!??




「………ゾロ……また、元のトコ戻って来たみてェだぞ…?」




――ば…馬鹿なァァ…!!!??




「よしルフィ!!!今度は目を閉じて進むぞ!!!見える景色に惑わされず、心の眼で見るんだ!!!!」
「大丈夫なのかァァァァ~~~~~????」
「煩ェ!!俺を信じろ!!!」





…………………………40分、経過。





「そろそろ降参するゥ~~!?そしたら迎えに行ってあげるわよォ~~~♪」



「「……………………。」」



「…じゃあ、置いてっちゃうからねェ~~~~!?」



「「……降参します。」」


「宜しいv」





……1分後、俺とルフィは、無事ナミの手により、迷路から救出された。





その19に続】





…そんな大した迷路じゃないんですがね。(笑)


私の友人は本気で出られなくなりました。(苦笑)

方向感覚に自信無い方は、入る時は目印道に落としながら入った方が良いですよ、念の為。(笑)


写真の説明~、パレスハウステンボスへ続く『レンブラント通り』、早朝の風景。


これは一昨年の冬写した物です。(汗)

毎秋~冬、紅葉が綺麗な場所で御座います。
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『何度も廻り合う』その17

2006年01月17日 23時16分02秒 | 桜トンネル(ワンピ長編)
前回の続きです】




遠くに見える稜線から太陽が顔を出す。


それと同時に空と海が、一瞬にして朱に染まる。


波に反射した光が1本に繋がり、海上に道が続いてるかの様に見えた。




「2人に、どうしてもこの、素晴しい風景を観せたかったんだ…どう?感想は?」


「寒ィ。」

「眠ィ。」


「……あんた達ねェ………日本人なら風雅を解する心を持ちなさいよォォーーー!!!!!




午前7:20――旅行2日目の朝は、日の出と、ナミのこの絶叫からスタートした。





11月28日    書いた人:ゾロ





「だぁっでよォ~~!!寒ィぼんば寒ィんだがらじょうがね~だろ~~!?もう1時間ばづっ立っでで…ふっっ…へ…へーーくっしょん!!!……俺どう死じぢまうよう~~~!!」


ガチガチ歯を鳴らしながらルフィが零す。

口から白い息立て続けに出して、鼻水垂らして時折くしゃみまでして。



然もありなん、ベッドで爆睡してた俺とルフィは、往復ビンタで言葉通り叩起された。

時刻にして午前6時、未だ空が群青色してた頃に、だ。


寝惚けた頭で今一反撃の台詞が思い付けず、訳解んねェままに着替えさせられ、ルフィと2人、引き摺られる様にして海の前まで連れて来られた。



漸く状況が解って来て理由を問えば、「海に日の出る瞬間を2人にも観せたかったから」なんてほざきやがった。



それからナミの言うベストスポットの、この灯台の在る桟橋の上で、冷たい海風まともにくらいながら待つ事約1時間………漸く拝めた時の感想は「美しい」とか「素晴しい」とかよりも、敢えて言うなら「ほっとした」だ。



「こんな光景、内地に住んでる人間にとっては、中々お目にかかれないんだから、ちゃんと目の中焼き付けておかないと!……そだ!ルフィ、カメラは!?」

「お、悪ィ!忘れたv」
「馬鹿ーーー!!!!あんた一体何しに此処まで来たワケーーー!!!?」

「いやだから俺達、自分の意志で此処まで来たんじゃなくて、てめェに拉致られて居るんだろが。」
「何よゾロ、その如何にも迷惑そうな口振は??」
「事実、迷惑だっつってんだ。昨夜は10:30まで散々引き回された挙句、寝たのは0時近く。そして今朝6時に叩起されたんだぞ?お前の辞書に『労り』って言葉は載ってねェのかよ?」
「載ってるわよ。ただ、あんた達相手にそれ出すと、付上るだろうから見せない様にしてるだけ。」
「毎回付上ってんのはてめェの方だろ冷血魔女!!!」
「寝たのが0時で起きたのが6時なら、成人の平均睡眠時間にちゃんと達してるんじゃない。あんた、普段寝貯めしてんだから、ちょっと位削っても差し障り無いわよ、きっと。」
「金と違って睡眠は貯めらんねェだろがバカヤロウ!!!」
「よー、ぞろぞろ戻らねェ??ごのままづっ立っでだら、全員札幌雪祭の氷像みだぐなっぢまうっで!!」


腕を擦って足を踏み鳴らしながらルフィが言う。

身に沁みて寒いんだろう。



そりゃそうだ、こいつが着てんのはどう見ても秋物の、丈の短い赤ジャケット。


長崎は東京より南に在るって聞いて、「じゃあ、あったけェ所だな♪」っつって上着それしか持って来てねェんだから…まったく馬鹿っつうか阿呆っつうか。



「そうだな。目的も果した事だし、帰って寝直そう。」
「俺は寝ながらTVを観よう!」
「寝直してどうすんのよ!?これから朝食でしょ!?」

「そうか朝食!!!よし直行だ!!1分で現場に急行するぞ!!!」
「あ!ちょっとルフィ!!…行っても朝食券持ってかなきゃ駄目だってばァーーー!!!」
「言っても無駄だ。あいつが走り出したら誰にも止められねェ。」



…と思ったが、桟橋途中で足を止めちまった。

ああ、成る程、橋に繋留されてる船観てんのか。


珍しい大型の木造帆船、ガキみてェに目をキラキラさせて眺めてる。


先刻、ナミとしてた会話を思い出した……




――ナミ!!ナミ!!このでっけー船は何だ!?海賊船か!!?


――それは『観光丸』って言う、江戸時代の長崎海軍伝習所の練習艦を、忠実に再現した物よ。……あんた帆船なら皆『海賊船』だって思い込んでんじゃないの?


――でっけェェなァァ~~~!!乗りてェェェ~~~~!!!


――乗れるわよ?しかもそれはパスポートで!


――本当か!!?じゃあ、そく乗ろうぜ!!!今日はパスポート使っても良いんだろ!!?


――悪いけど、今日の予定には組み込んでないの。明日、帰る前に乗ろ♪


――えええええ~~~~~~~~~~!!??




「……よっぽど好きだったんだな、船が。」

「前に海賊になって、乗ってた事有るんだって。」

「…………海賊???」

「夢の話よ!……まともに相手したら馬鹿見ちゃうわ。」



妙に険有る顔してナミが言った。


『海賊になって乗ってた』??……全然意味解んねェよ。



俺達が追いつくまで、ルフィはひたすら船を観ていた。


追着いた所で漸くゆっくりと先へ歩き出す。


歩き出してからも、何度も何度も振返って観る。



「…俺達が乗ってたのと違うな。あんなでっけーヤツじゃなかった。どっちかってーと、オレンジ広場の前に在るヤツのが似たタイプだ。」



独り言の様に言う……何のこっちゃ?


それ聞いてまたナミのヤツは、表情険しくしやがるし。



何だ何だ?俺が見てねェ内に何か有ったのか??




すっかり日が昇っちまって明るくなった海沿いを3人して歩く。


左側には城かと見紛う豪奢な建物――『ホテルデンハーグ』っつうらしい――が、在った。

大海原を目の前にして建つ赤煉瓦の城…中々高級そうだ。



朝日に照らされた静かの海。

鳥が囀る好天気。

…日頃の行いが物言ったか?



「残念だけど、多分夜には天気が崩れるわ。」
「え!??こんな晴れてんのにか!??」
「雲殆ど見えねェじゃねェか。」
「絹雲が出てる……『朝焼けの美しい日は雨、夕焼けの美しい日の次の日は晴』、あまり綺麗な朝焼けの見えた日には注意した方が良いのよ。」

「へ~~??成る程な~~~???」


ちっとも成る程な顔でなくルフィが感心する。

まァ、正直俺にも良く解んねェ。



ナミの天気を読む力は並じゃねェ。

天性の勘…最早超能力と呼んで良いんじゃねェかとすら思う。


お陰でガキん頃から俺やルフィは、殆ど雨雪に濡れる事無く育って来れた。

手の付けらんねェ暴力女だが、人間誰しも取り得は有る。




煉瓦と石畳に伸びた影を引連れ、閑散とした朝の港街を歩いてく。



宿に戻る途中で、間の悪い事に『朝市』にぶつかっちまった。

港街の1店舗裏に設えたそれは、小規模ながらもそれなりに賑っていた。


…って何でテーマパークで『朝市』開いてんだよ!?


蒲鉾すり身揚げ明太ちゃんぽん皿うどん中華街菓子に佃煮といった長崎の地の物が大集合といった体だ。

それ以外に此処の名物の焼き立てパンやチーズまで揃えてやがる。


これだけの豪華ラインナップ目にしたとあっちゃ、主にルフィが黙っちゃいねェだろう。

そう思った時には、既に試食求めて集ってやがった。


…ったく馬鹿食いチャンピオンがっっ。


気付けばナミまで行ってやがるし…まァ行くだろうとは思ってたけどな。


暫くかかりそうなんで、朝市開いてる店の後ろ…一際豪華絢爛、存在感出し捲りな建物の前の花壇座って待ってる事にした。

…って此処ひょっとして、昨日茶を飲んだホテルじゃねェか?

確か『ホテルヨーロッパ』っつったか…サンタクロースが窓貼り付いてる様な、派手なデコレーションしてたお陰で覚えてた。

ルフィの奴がこの貼り付いてるサンタ見て、袋持ってないからむしろ泥棒みたいに見えるよな、なんて笑ってたっけな…。



朝市は、獲れ立て生牡蠣をその場で焼いて食わせるコーナーも設けてたりして、それなりに『市』っぽく見えた。

っつかテーマパークで水産物売ってるって、凄ェギャップ感じねェか?


前に海が在るからか、ねェ~……そういや、日の出前から漁船が沢山海出てたな。



ルフィは嬉しそうだ、出てる端から端まで試食し捲ってる、よく追ん出されねェもんだ。


ナミはナミで外の市どころか、開いてる店ん中まで入って土産物色してやがる。



………おい……何時までかかるんだよ…?


頼むから早く帰らしてくれよ…。



いいかげん痺れ切らして、呼びに行こうか悩んでた所で、漸くナミが戻って来た。


「買っちゃったv甘鯛に鰯の蒲鉾、いか明太。長崎はやっぱり海産物の宝庫よねェ♪サンジ君が来てたら泣いて喜びそう♪」

「……楽しまれた様でよござんしたな。」

「本当!運が良かったわァ~~♪朝市って期間限定、それも日・月しかやってないんだって!しかもコテージに有ったサービス券持ってったら、ヒジキ只で貰っちゃったし♪」

「…おい、待てよ。サービス券持って来てたって事は……てめ!!最初から寄る予定で人此処まで誘導しやがったな!!!?
「あ、バレちゃった?ゴメンゴメンv怒んないで~~vv」


サービス品貰ったのが余程嬉しかったのか、マジ怒りしてる俺を気にもしねェで、機嫌良く頭イイコイイコして来やがる……っとに魔女めがっっ。



ルフィはルフィで未だ戻って来ねェ。生牡蠣焼いてるトコ、涎垂らして貼っ付いたままだ。

多分財布も持って来なかったな、貼っ付かれた奴も気の毒に…。



迷惑懸け続けるのも悪ィから引張って来るかとナミに聞いた。


したら「ルフィ!!早く行かないと、朝食全部、他のお客さんに食べられちゃうわよーーーー!!!」と怒鳴った。


その一言を聞き、即効ルフィが戻って来る。



天候だけでなく人心まで…まったく大した掌握術だよなと恐れ入った。





その18に続】





写真の説明~、スパーケンブルグ地区、『観光丸』船着場桟橋より写した、日の出の写真です。

晴女なのか、私が今迄撮った写真、殆ど晴ばっかなんですよね…。(良く一緒に行く友人は、雨女所か嵐女ですが…)


朝市、期間限定と出てましたが、ひょっとしたら大抵の土・日・月(期間によって曜日変更有、詳しくは泊ったホテルに置かれた『ハウステンボス・ステイ・ブック』参照の事)に出てるかも…スパーケンブルグ地区『シーブリーズ』裏で開いてます。
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『何度も廻り合う』その16

2006年01月16日 21時29分26秒 | 桜トンネル(ワンピ長編)
前回の続きです】




コテージに戻ったゾロは、有無を言わさず風呂へと直行した。


勝手に1番に入っちまって、ナミのヤツ怒るんじゃね~かな~と期待…もとい心配したけど、ナミはだまってゾロの分までむいたキウイを皿に盛り、冷蔵庫に冷やして置いといてやった。


そんでゾロが出て来たトコで、あっついお茶と良く冷えたキウイを出してやって、自分も一緒んなって食った。


なんとかそれを横から盗ってやろうと頑張ったけど、ナミのてっぺきのシールドにはばまれ手に入れる事は出来なかった…


ちくしょーナミのアホーケチー冷血女ーえこひいきーー。(←ってつい声に出しちまってなぐられた)


キウイを美味そうに食い終わるとゾロは、「ごちそう様」を言ってすぐに2階に上がり、そのまま部屋入ってねちまった。



残った俺とナミとで、次風呂入る順番をジャンケンで決める――またナミに負けちまった…。



1人残った俺は、ヒマんなったんで、TV観ながらイスをブランコみてーにゆらして遊んでた。


試しに思っ切し、勢い付けてゆらしてみたけど、全然たおれねェ。


見掛けより結構根性すわってるぞ、このイス。


気に入ったっつって土産にして持ち帰ったら、ホテルに怒られるだろうか…?


いや多分、ホテルに怒られるより先に、ナミにボコられる気がする………やっぱ止めとくか。




しばらくそやって遊んでたけど、さすがにあきたんで、今度は土産に買った貯金箱出して来て遊んだ。


ヨ……エッシャーか――の、『入れたお金が小っさく縮んじまう貯金箱』。


…何度観てためしても不思議だよなァ~~。


長方形の箱した上から、こやって唯の十円玉1枚入れてみっだろ?

で、そうすっと中に有る正方形した小っせェ箱ん中スーッと入ってくんだ。

チャリン♪て落ちた十円玉見ると……ほ、本当に小っさく縮んじまってんだぜ!?


――すっげェ~~~!!?


ガシガシ振ってみても全然仕掛解んねェ。

箱の後ろに、入れた金取り出せる引き出し付いてたんで、出してみるだろ?


したら、十円玉はまた、元の大きさ戻ってんだぜェ~~?


――やっぱ、謎だよな!?分解してみてェ~~~!!




「なァに~?あんた、ま~たそんなんで遊んでたの?」


風呂から上って、パジャマ姿のナミがリビング入って来た。


ほてったのか熱そーにして、手でパタパタあおいでる。


そば来ると、石けんとシャンプーの良いにおいがした。


「もうあんたも高校3年生、後もうちょっとで卒業しちゃうんだから、少しは頭の方もガキから卒業しないと!」


そんな風に言う声は、言葉とは違って、何故か優しく聞えた。



コーヒーを飲むかと聞かれたんで頼む。


テーブルの上にあっついコーヒーの入ったカップが2つ並ぶ。


リビングにコーヒーの湯気とにおいがフワフワ広がってった。


その内の1つをナミがハイとよこす、もう1つは自分の席の前に置く。


「寝る前だからね。お砂糖は控え目にしといたわ。」


カチャカチャとスプーンでかき混ぜ、イスをゆらしながらそれを飲んだ。


ミルク2つ入った熱いコーヒーは、飲むと腹ん中が温まって、まったりと眠くなった。


周り中静かで、TVの音しか聞えて来ねェから、なおさらだ。


窓からは前に在るコテージの明りが、カーテンのすき間から点のよーに見えた。




「出発は何時の御予定ですか?」


カップを手にしたまま、ナミが聞いて来る。


「そーだなーー……卒業式終わってそく直行!…ってトコか?…まァ、ノリしだいだ♪」


「それで、先ずは何処を目指すの?」


「んーー…そーだなーー……今、エースがカナダいるらしいから、まずそこ目指そーかと…その為には空港乗りついでかなきゃいけねーらしーから、ソウル……かん国か??」




エースってのは俺の兄貴だ。


俺と同い歳くれェに世界一周に出ちまって、今はカナダ居るらしい。


「居るらしい」ってのは、未だに1ヶ所に半年も居た事無ェような奴なんで、しかもいつでも行った後で連絡してくるよーな奴なんで、家でも現在位置が正確につかめらんねーんだ。


……まァ、1週間前にカナダから電話かけて来た時に、俺がそっち行ったら出迎えしてくれって頼んどいたから………多分、しばらくは、居てくれるだろう。




「実は未だよく決めてねーんだ~。卒業までは後4ヵ月近くも有んだし、それまでには決めるつもりだ!」


「……あんたねェェ~、海外旅行すんなら、早くからきちっと計画立てて、ちゃんと貯金もして、ちょっとは英語も覚えて、荷物も準備しとかないと、絶対泣きを見るんだからね!?」

「大丈夫だ!!パスポートさえ失くさなきゃ何とかなるだろってエースも言ってたしな♪」


「…その根拠無い自信に振り回される方はたまったもんじゃないんだから…!兎に角!計画はきちっと立てておいて!貯金もなるたけしとくようにしなさい!その貯金箱で!!………卒業したら、私はもう、世話してあげられないんだからね…!?」

「心配すんなって♪♪どっか着いたら必ずナミとゾロに手紙出すかんな!!」


「………当てになるもんですか…!」




何となくここで、会話が途切れちまった。




てもちブタさ…いや、手持ちぶさたになっちまったんで、また貯金箱いじって遊んだ。


チャリン♪と音立てて入った十円玉が、また小っさく化けちまう。




「…そんな繰り返す程、面白い物?」


何でか、ふきげんな声してナミが言う。


「面白ェ!!すっげ面白ェよ!!外では普通のサイズなのに、中の小っせェ箱に入ったとたん、一回り縮んじまうんだぜ!?まるでこの箱の中は、こっちとは別の世界になってるみてーじゃねェか!?」

「別の世界ィ~??」

「そう!!全部ミニチュアになっちまってる、パラ…パラ……パラパラワールド??」

「『パラレルワールド』って言いたいの?」
「それだ!!!『パラレルワールド』!!!――自分達の居る世界とは別の、けど近くに重なって在る似たような世界!!前にナミが話してくれたろ!?」

「『並行世界』。同一の次元に並行して在ると言われてる、別の世界……そこでは私達の世界に在る事物が、同様に、しかし微妙に変化して存在している……まるでSF的発想ね。」




「実はさ……俺、さっきその『パラレルワールド』行って、見て来ちまったんだ…!!」




「…………はァァ???」




「広場で花火観ただろ!?あの時に………どうやら入り込んじまってたらしいんだよ!!!」




ワケが解んねェって顔したナミに、俺はさっき見て来たその世界について話した。




その世界では俺は、『海賊王』を目指して、『ゴーイングメリー号』って名前の、羊の顔が付いた船に乗っていたって事を。



船には、ゾロやナミやウソップやサンジやチョッパーやロビン先生まで、一緒の仲間んなって航海していたって事を。




「ゾロは最強の剣士!

 ナミは世界地図!

 ウソップはゆうかんなる海の戦士!

 サンジはオールブルー!

 チョッパーは万能薬!

 ロビン先生はリオポーネ・グリフ!

 ――皆、それぞれの夢追っかけて、色んな島旅して回ってた!!

 楽しかったぜェェ~~♪♪」



「…おーるぶるー……?りおぽーねぐりふ……?何、それ…??」


「『オールブルー』ってのは、東西南北全種類の魚が生息してる、伝説の海だ!!サンジはその海を見つけて色んな魚料理い~っぱい作るのが夢なんだ!!『リオポーネ・グリフ』ってのは真の歴史を語る石…これは今一俺もよく解んなかったけどな!」



「…ちょっぱーってのは誰の事よ…?」


「ヒトヒトの実を食っちまって、半分人になっちまった青っ鼻のトナカイだ!!どんな病気も治しちまう名医に、『万能薬』になるのが夢だっていう面白ェー奴だ♪♪七段変形しちまうんだぜ!?」



「………ふーーん……」


「あっちの世界でも皆、らしいだろ!?…あっちでも皆一緒にいるって、何か嬉しくて、楽しいよな♪♪」



「……そうね……楽しい『お話』だわね……。」
「『お話』じゃねえって!!!俺ちゃんと実際に見て来たんだ!!!」
『お話』よ!!!!―――ルフィ…それ、あんたの『夢』なんじゃないの…!?」



「夢なんかじゃねェよ………皆して、船乗って、そんであっちの世界でも、こことおんなじ島に着いて、皆して花火観てたんだ…!!」



「『夢診断』したげるわ、ルフィ。………乗ってた船は、恐らく今、私達が通ってる『学校』をイメージした物。…その夢はきっと、あんたの置かれた現状、深層に潜んだ願望を映したものだわ。どう?納得出来るでしょ?」



「………俺の……『現状』…?『願望』……??」



「…あんたでも、卒業して、皆バラバラになっちゃうのが、嫌なのね…。」




少しだけ笑いながら、ナミが言う。




「………バラバラになるのが嫌…??――何でだよ?皆一緒に航海してるってので!?…大体ちっともバラバラになんかなってねェじゃねーか!!?」



「……あっちでも皆、それぞれの夢を追っ駆けてたんでしょ?――だったら何時かバラバラになるわ!!だって、皆違う夢追ってるのに、どうやったら一緒の道行けるって言うのよ…!!?」




「…………ナミ?」




「………唯の夢にムキになってゴメン…言い過ぎたわ…!私ももう寝ちゃうから……お風呂入って出たら、ちゃんと1階の電気全部切ってから寝てよね!」



残ってたコーヒーを一気に飲み切ってナミが立ち上がる。



そのまま振り返らずに、リビングを早足で出て、2階に上っちまった。




コーヒーはもうすっかり冷めちまってた。



飲み終わっても、俺はしばらく風呂に入らず、リビングでTVを観ていた。




TVには、向うで毎週観てる番組が映ってた。




長崎のTV番組も、東京とはそんな変んねェ事を知って、がっかりもしたけど何だか安心もした。





その17に続】





…第一部、『ルフィ編』完結~……何かよく解らない話になっちゃってすんません。(汗)

次回からは予告通り『ゾロ編』となります。



写真の説明~、フォレストヴィラの1階リビングの様子を写した物。

左後に有るのが『ルフィ椅子』(笑)…確かに根性有ったけど、調子に乗って揺らし過ぎて頭ゴンってぶつけないように。(笑)

テーブル上右には、ルフィが食っちまった『カスタマーズクラブ会員、ラッキーデーサービス』の、フルーツが置いてあるって事で。(笑)
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『何度も廻り合う』その15

2006年01月15日 21時57分42秒 | 桜トンネル(ワンピ長編)
――昨日は親戚の子が泊りに来て、ブログ書けませんでした。

…毎日連載するってのは、やっぱり色々無理有るな~と思いつつ、前回の続きです。







15ヵ所目の『ゴッホ橋』を渡る。


橋の上からは、真っ暗で真っ黒な夜の海が見渡せた。


耳を澄ませば、ザザーンとかチャプンチャポンとかキィン…キィン…とか、色んな音が聞えて来る。

側にマリーナが在る、キィン…キィン…と鳴ってる音は、そこにつながれたヨットが、風にあおられて出してる音じゃないか、とナミが言った。


「本当だ!ヨットが何そうも並んでるぞ!かっけーな~~♪…アレにも乗れんのか!?」
「あそこに並んだヨットから選んで乗れるかは知らないけど…ヨットクルーズは頼めば出来るみたいよ?勿論お金は取られるけど。」
「え~~?金取られんのか~~~??」
「当り前でしょ!元々ヨットクルーズはブルジョアの優雅な趣味だもの!」

「…にしても不思議だな。」
「何がだ?ゾロ?」
「ちょっと見上げてみろよ、2人共。」


顔を上に向けたまま、ゾロが言う。

言われた通り、俺とナミも上を向いてみた。



そこには、夜空いっぱいに星がまたたいていた。



「…な?満天の星だろ?」

「……本当だ…正に吸込まれそうな星空ね…!」
「すっげェ~~~~~~!!!まるで田舎の夜空みてーだ!!!」


晴れてて雲が見えなくて、月も出てなかったせいか、星がきれいに良く観えた。


あの、ひときわでっかく輝いてる星は、きっと金星だ。


『?』の形に似てんのは北斗七星、『W』の形してんのがカシオペア座。


冬の大三角形まではっきりと、前にナミに教えてもらった通りに皆観える!!


「…な?不思議に思わねェか?」
「何が不思議なの?ゾロ。」
「いや、こんだけ街中明るくイルミネーション点いてんのに、邪魔されず良く星が観えるもんだなと思ってよ。」

「良ーい所に気が付いてくれたわゾロ!!…ハウステンボスの照明はね、星明りを邪魔しないよう全て設計されてんだって!!」
「へェ…それでか!」
「そんな事出来んのか!?すっげーー!!!」

「更に!!女性の美しさが際立つようにも設計されてんのよ!!」
「それは良く意味解んねーけどすっげーー!!」
「つか、そっちはどうでもいい感じだよな。」

「このオレンジ色した街灯にも秘密が有ってね、『ナトリウム灯』って言って、虫はこの光の波長を嫌うらしいのよ。場内の照明の多くに、このナトリウム灯を使用する事によって、出来得る限り殺虫剤撒かずに済むように考えられてるって訳!」
「へェ、虫はこの色の光を嫌うのかァ。成る程なァァ。」
「……何、人の髪見ながら感心してんのよゾロ?」
「いや、何か納得しちまって…。」


――ゴィン!!!!


「いっ…てェェ~~…………目から星出るかと思ったぜ、今………。」
うっさい!!!…っとに、一言余計な奴なんだからっっ!!!」
「そうかー?俺はナミの髪の色、大好きだぞ??ミカンに似て見えて美味そうだ♪」
「……あんたはあんたで、よくそんなナチュラルに恥しくなる台詞言えるわよね……」
「何照れてんだ??ナミ???」
「照れてなんかないわよ!!!!」
「まァしかし、クラシックに見えて、案外進んでる街なんだなっつうか…。」

「建設当時から、最先端の技術を駆使して造り上げたみたいよ。電気・ガス・水道といった全てのライフラインを地下に潜り込ませたり。だから電柱なんか、1本も見えないでしょ?」

「言われてみれば無ェな~~!」
「道理ですっきりして見えると思ったぜ。」


「元々のこの土地は、1970年代に市が工業用地として埋め立てたは良いけど、工場誘致に失敗して以来、長く放っぽらかしにされてた場所で、ハウステンボス建設前なんて、表面の土少し剥ぐと黒いヘドロが噴出したりした、草木も育たない酷い荒地だったみたいよ。」


「へェ?此処がか??…今じゃ全然そうだった風に見えねェけどな。」





……………………。





「耕して耕して、耕すだけでも1年半………長い時間をかけて、造られた街なんだって。」





――アア、ヤッパリ、アレハ夢ジャナカッタンダ…………。





「……どうしたのルフィ?マジな顔して黙っちゃって。」





「いや、別に……」





「何でんな手間暇かけてまで、こんなトコに、こんな街造ったのかねェ…。」




「……『人』を、集めたかったんじゃないかな?」



「人を?」



「最初に来た時言ったでしょ?ゾロ。
 
 『周囲から浮いてる』って。


 周辺産業も開発されずに、云わば行政から捨てられた区域。
 
 住民はどんどん出て行き、過疎化の一途。


 だから……魅力的な街を造って、人を集めようとしたんだと思う。

 別荘地区を置いたのも、恐らくその為。
 
 
 新しく、人に訪れて貰えるように。

 出て行った人も、年を取ってからでも、戻って来て貰えるように。


 『京都の様に、千年も続く街を造りたい』――それが、この街の目指すテーマなんだって。」






近くから、鐘の音が聞えた。



16ヵ所目の『ビネンスタッド橋』を渡ると、さっきライティング・ショーを観に来た広場に出た。


『アレキサンダー広場』っつったっけ??


鐘の音は、その広場に建ってた、光る教会から聞えて来た。



教会の窓が鐘の音に合せて、赤に青に緑に黄色にと、どんどん色が変ってく。



この鐘の音は………―――そうだ!!


「『サンタが街にやって来る』だ!!!」


「綺麗……こんなのやってるなんて、全然知らなかった…」
「観られて得したな。」



あっなたっから♪

メッリークリッスマス♪


わったしーかーら♪

メリークリッスマス♪


サンタクロース・イズ・カッミィン・トゥー・ターウン…♪




教会の横には、木の実いっぱい生ったような、背ェ高ェクリスマス・ツリー。


教会の後ろには、ウェディング・ケーキみてェな、でっけーとう。


重なって3つ、どれもピカピカピカピカ、暗い夜を明るく照らすみてェに光ってた。



鐘が鳴っていたのはちょっとの間。


窓の色はまたすぐに、元の紫1色に戻っちまった。



けどゾロの言った通り、観れて得した気分になった。



散歩して良かったなと思う。





『アレキサンダー広場』を出て、17ヵ所目の『スワン橋』を渡る。


目の前にはクリスマス・ツリー……スタートした時に観た、青・緑・金と色が変ってくツリーだった。


「この色が変化してくクリスマス・ツリーの名前は『ギャザリング・ツリー』。そして此処はスタート地点の花火会場、『オレンジ広場』。…無事場内ほぼ1周、これにて夜のツアー終了、お疲れ様~♪」

「……………能天気に言いやがって………マジ疲れたぞ俺はァ………今夜ぜってェ夢も見ずに爆睡しちまうよ………」

「でもきれーなもん沢山観れて、俺は楽しかったぞ♪♪」

「……まァ、楽しかったかもしんねェけどよ…。」

「未だパレスとフォレストパーク付近は周ってないから……なんならついでに周っとく?」
「冗談じゃねェよ!!!……頼むからもう帰ろうぜナミィ~~~。」


泣きそうな声でうずくまりながらゾロが言った。


俺は別に周っても構わなかったけど、何かゾロが可哀想に見えたんで、そうは言わずにだまっといた。


「冗談よv夜遅くまで付き合せてゴメン!コテージ帰ったらお詫びにキウイ剥いたげるから、機嫌直して、ゾロv」
「本当かナミィィ!!?んじゃ早く帰って食おうぜェ~~~♪♪」
「あんたは駄目よルフィ!!……1人であんだけフルーツ食べちゃった人にまで上げる義理は御座いません!!」
「ええ!!?えええ!!!?えええええ~~~!!!!?そりゃねーよナァミィィィ~~~!!!!!」
「お前、未だ根に持ってたのかよ…食い物の恨みは恐ろしいっつうが、根に持つ女は醜いぜ?」
「そうだナミ!!!根に持つ女はブスになっちまうんだぞ!!!」
「誰がブスだ!!!!??」
「って俺じゃねェ!!!ゾロが言ったんだ!!!!」
「言ってねェ!!」

「なァ~~~許してくれよナミィィィ~~~!!バナナマフィン半カケやっからさァァ~~~!!」
「駄目ったら駄目!!!」
「じゃ2/3!なァァァ~~~~!!」
「……つまりもう、1ヶしか残ってねェんだな、それ。」





『オレンジ広場』のクリスマス・ツリーをバックにして、俺達は写真をとった。


その側、広場の前の真っ暗な海に浮んでた、光る海賊船(←ナミから、これは海賊船ではないって言われたけど)をバックにしても写真をとった。



コテージに向う頃には、辺りには誰も居なくて街は静かになっていた。




さびしー気もしたけど、何だかこのピカピカ光ってる街を独占したよーで、ちょっとだけ良い気分になれた。






その16に続】





写真の説明~、ハウステンボス、スパーケンブルグ地区の夜景、『ユトレヒト地区のカナルステーション』から写した物。

迎賓館前に架る『ハーフェン橋』辺りね。


連載その13で話に出した『かんころもち』について、ふくちゃんのブログで詳しく採り上げて有ったのでリンク貼って紹介させて頂きます。

ふくちゃん、勝手に貼って紹介しちゃって御免なさい。(汗)


あ、それと…前回『シティゲート、デルフト』出て直ぐに架る、『ミステリアス・エッシャー』前の橋の事をすっかり忘れてました――『エッシャー橋』と言うんだそうな。(街入って直ぐに架ってる橋だから、見逃し易いんですよと言い訳してみる…)(汗)

したがって――

「辿り着く街、ニュースタッド
 『エッシャー』の迷路に迷って
 飲む『チョコラーテ』で一休み」

――と、覚えてみるとか…。(苦笑)


第一部『ルフィ編』も後1回で最終回、の予定!(←第一部って…)


よぉし!頑張~るぞ~~。(苦笑)


…あ、そうだ…ハウステンボスに架る橋の数、地図で数えてみたんすが(←暇人)…35、在るような……どうなんでしょうね??
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『何度も廻り合う』その14

2006年01月13日 23時23分44秒 | 桜トンネル(ワンピ長編)
前回の続きです】




花火が終り、集まってた観客がいっせいに動き出す。


そしてそれぞれ、泊ってるホテルへと帰って行った。




「さてと…一先ずこれで本日のショーは終了だけど…花火を観た余韻も残ってる事だし、場内軽く1周しない?」
「するか!!!ってかいいかげんにしやがれよてめェ!!!俺は疲れて眠いんだっての!!!行きてェんならてめェ1人で行きやがれ!!!!」

「行きたくないなら無理には誘わないけどさ…良いの?鍵、私が持ってんだよ?」
「……ぐっっ……!!」

「夜のテーマパークを散歩するなんて滅多に経験出来ないんだし、一緒に行こうよ、ゾロもv」
「……こっちの足許見やがって…魔女がっっ…!!」




ガイド役のナミを先頭に、俺達は夜の街の散歩にくり出した。



花火会場の『オレンジ広場』をスタートして、1ヵ所目の橋の真ん中で、ナミが足を止めた。


目の前には紫色のイルミが点った建物、左には昼間お茶飲んだホテルがオレンジ色に輝いてる。

前に流れる河の水面に、2つの建物のライトが反射してて、とてもきれーだった。


「今私達の居るこの橋が『ハーフェン橋』。そして目の前の建物が――昼間クルーザーの上で紹介したけど――VIP御用達ホテル『迎賓館』。その左が『ホテル・ヨーロッパ』、私達がお茶飲んでチェックインした所ね。」
「…って名前付いてんのかよ?この橋?」
「勿論!この橋だけでなく、街に在る橋や通りや運河まで全てにね!」
「へー、全部に名前付けられてんのか!?すっげーなー!」
「確かに凄いが、付ける意味有んのか?」
「あら!私達が住んでる街の橋や通りにだって名前が付いてるでしょ!?此処ハウステンボスは街だもの、おんなじよ!」




1ヵ所目の橋を渡り、2ヵ所目の橋のトコまで歩く…またナミが足を止めた。

正面にはでっけーウェディングケーキみてーな光るとう。


「この橋の名前は『シンゲル橋』。正面に聳える光の塔は『ドム・トールン』。…そして橋の下を見て。両端の護岸にまでライトが点って素晴しく美しいでしょう?…さっきの迎賓館~ニュースタッドに架る『ジョーカー橋』までの護岸や橋にイルミネーションを点して輝かせるイベント、『光の運河』は今年から始められたものなんだって。」


「すげー!!!河が光ってるみてーだ!!!橋の光が水面映ってメガネみてーに見えるぞ!!!」
「本当だ。眼鏡橋とは長崎らしいな。」
「『シンゲル橋』の前に在る橋の事ね?あれは『トールン橋』、ゾロが言ったように、如何にも長崎名所っぽい写真が写せるって事で、撮る人多いらしいわ。」


下がトンネル2つにになってるその橋は、水面反射してる影まで合せて観ると、まるっきしメガネのように観えた。


面白かったんで写真をとっとく。




2ヵ所目のシングル…あ、シンゲルか!…を横切り、3か所目の『トールン橋』を渡る。



光の河に沿ってテクテク歩いてく。


道の左っかわには、やたらだだっ広いさびしー草っ原が在ったけど、ナミが言うにはここは『フリースラント』って言って、春~秋にはきれーな花いっぱい咲くらしかった…そーいや、そんな話も船の上で聞いたような??




途中、4ヵ所目の橋を横切る、『ハウスプリンカー橋』って名前だと教えられた。


「『ハンスブリンカー橋』だってば!!!」


『ハンスブリンカー橋』って名前だと教えられた。




5ヶ所目の橋まで来た、『ジョーカー橋』って名前で、ここもメガネ橋になっていた。


そして光の河はここで終っていた。



下をのぞくとドーナツみてーな形した橋が見える、良く見ると右の方にも同じ形した橋が見える、そんでその前には普通の形した橋が見えた。


「あの丸いドーナツみてーな2つの橋は何て名前なんだ?ナミ??」
「見たまんま、『ドーナツ橋』って、2つ共呼ばれてるみたいよ。」
「じゃこれが『ドーナツ1号橋』で、あっちは『ドーナツ2号橋』だな!」
「いきなり情緒無ェ呼名になったな…。」



6ヵ所目の『ドーナツ1号橋』を横切り、7ヵ所目の『ドーナツ2号橋』、8ヵ所目の普通の形した『アカデミー橋(←そー呼ぶんだそうだ)』を見送り、9ヵ所目の橋まで来た。


「此処は『チョコラーテ橋』。右に見える街が『ニュースタッド』よ。」
「チョコ!?何か美味そーな名前だな♪」
「橋の近くに、チョコ専門店の『チョコレートハウス』が在る事が由来みたい。」
「チョコ専門店!!?――行こう!!!すぐに行こう!!!!」
「もう今日は営業終ってるわよ…」
「じゃ明日行こう!!!ぜってー行くぞ!!!!」
「此処らの橋や護岸はライト点灯してねェんだな。どうせなら全部ライトアップさせりゃあ良いのに……予算不足か?」
「るっさい!!!あんたは一言多いのよゾロ!!!」
「なァ!何か河にいっぱい円盤みてーなの浮んでっけど、あれ何だ!?」
「あれは『バンパーボート』って言って、ちっさい子供用のボートよ。」
「へー!楽しそうだな♪明日乗ってみよーぜ!!」
「だからちっさい子供用だってば!!」




10ヵ所目の橋を渡ると、右っかわに3台の光る風車が見えた。


確か……船に乗りに来た所だっけ??


それにしてもすげーなー、風車まで光ってるなんて。


「この橋の名前は『バスチオン橋』、この先の通り行くと出国口に出るわ。」
「出国口に向ってんのか。………道理で人がゾロゾロ歩いてるなと思ったぜ。」


スタートした時からだったけど、俺達の前に後ろに右に左に、ずーーっと大勢の人がズラズラと歩いてた。


最初は俺達と同じく散歩してんのかなーと思ってたけど、流れがほぼ一方向にだけだったから、不思議には感じてたんだ。


「こんな遅くに皆、家帰んのかー。大変だろなー。」
「車で近隣から来た人も居るだろうけど、多分、場外ホテルに宿泊してるお客さんが多いと思うわよ。」
「え!?場内の以外にもホテルって在ったのか!!?」
「当り前でしょ?出国して直ぐ隣に2つ、大きなホテルが在るし、他にも在るわよ、そりゃ。」
「テーマパーク内に在るホテルのが珍しいよな、普通は。」




人の流れに乗ってそのまま、出国口まで来ちまった。

出国口前には鳥カゴ入ったクマみてーな形したクリスマス……ツリー??が、置いてあった。


「『フェアウェルツリー』って言うんだって!赤いマフラー巻いた熊さんが結構可愛綺麗でしょ!?これが主に観たくて此処まで来たのよねー実は♪」
「………お前……こんなん観るが為に、人連れて此処まで来たってのかよ…!?」


ゾロは何となく怒ってたけど、確かにピカピカ光ってて結構可愛かったんで、帰り客ん中の1人つかまえてカメラ渡して、このツリーをバックに3人写真をとってもらった。(この場合の真ん中はクマ)


「んじゃメインの目的果した事だし、後約半周、頑張って歩こーー!!」
「おーーし!!頑張るぞォ~~~!!!」
「………ルフィ……おめェはタフだなァ………。」




くるっとUターンして、風車の並ぶ島へとかかる11ヵ所目の橋を渡った。


『モーレン橋』って名前だとナミが教えてくれた。


風車や花畑がライトアップされて、夜でも明るく浮び上っていた。


「――あ…ゾロ!ルフィ!後ろ振り返って見て!」
「…あ?後ろって…」
「後ろに何か――おおおおお!!?」


振り返って見ると、前に在る城のかべに、緑のレーザー光線で、絵が映してあんのが見えた。


「へーー!!おっもしれーーー♪♪」
「出国者を送るサービスってトコだな。」
「ちょい地味ながらも、結構嬉しいサービスじゃない?」


クリスマスツリーからサンタから星へと、映像が繰り返し変ってく。

『シティゲート デルフト』って所から、レーザーが出てるんじゃないか?ってナミが言った。




花畑の続く道を歩き、12ヵ所目の『デルフト橋』を渡り、『ニュースタッド』って街に入る。


街の中心の広場には、はだかの女の彫刻像が何体も乗った、オレンジ色にぼんやり光ってる噴水が在った。


「誰だァ??このはだかの女達は???」
「下品な言い方すな!!!ギリシャ神話の美の女神『アフロディテ』が、自分の息子の恋人で人間の女『プシュケー』に、祝福を与えてる場面をイメージして造った像なの!!これは!!!」
「……アフロ…?????」
「『アフロディテ』!!…ほら!『ビーナス誕生』って絵を観た事有るでしょ!?あの『ビーナス』の事よ!!」
「あーー!!!あの絵に描かれてた女神か!!――何でいつもはだかなんだ?こいつ???」
「露出狂なんだろ、きっと。」

「……………あんたらの傍だと、全ての芸術が色褪せて見えるわ……」



クリスマスツリーなんかできれーに飾ってあったりはしたけど、全体的にさびしー街をぬけて(だって店全部閉ってたし、人1人もいなかったし…)、13ヵ所目の橋、『クリスタル橋』を渡った。




さらに先へ進むと14ヵ所目の橋に当った。


その前方にも橋が見えた……これで15ヵ所目か。


「この橋は『カロヨン橋』。で、その前に在んのが『ヴィンセント・ファン・ゴッホ橋』、名前の通りゴッホの描いた跳ね橋に似てるでしょ?」

「本~~っ当~に橋だらけの街だな~~~!!!」
「運河を張巡らした街だもの。必然的にそうなるわよ。」
「ってかナミ!よくそんなに橋の名前覚えてんなー!?全部覚えたのかァ!!?」
「俺もさっきからそれを聞こうと思ってた。」

「あはは♪…実はガイドブックで観て覚えて来たんだーv」


照れたようにナミが笑う。


「つっても俺だったら聞いても覚えらんねーよ!!ゾロは聞いてて覚えられたか!?」
「覚えられっこ無ェだろ普通!!」

「1ヶ1ヶ、個別に覚えようとするから駄目なんだってば!『歴史と同様、全ての事物を連続したものと捉え記憶する』――これ、ロビン先生が教えてくれた記憶術なんだけどね。覚え切れないだろうからって1つ2つ3つだけしか覚えないようにしようってやり方は、却って中々覚えられないんだって!」
「……何言ってんだか解んねェよ。」

「例えば詩にして覚えんの、こうやって――


 熊と面会、リンダ『リダー』

 『モーレン』渡れば風車の小島

 『デルフト』越えて、街へ出よう

 辿り着く街、ニュースタッド

 飲む『チョコラーテ』で一休み

 運河の煌きは『クリスタル』

 響き渡る『カロヨン』の音色

 『ゴッホ』が描く、静かの海原


 ――ね?こんな感じにすれば、覚えられるでしょ??」



「「覚えられる訳無ェだろっっ!!!!!」」



「…あ、あらら??……やっぱりv」



「……ま、1つだけ理解出来たのは……ナミ!!てめェには詩人としての才能が無ェェ!!!」(きっぱり)
「なんですってェェーーー!!?」
「うははははは♪♪いーじゃねーかナミ!!『シジン』にはなれなくても、誰でもいつか『シニン』にはなれんだか―――」



――ガゴォォォン……!!!!!



「………ブラックなジョークかましてんじゃないわよ、ルフィ。」


「…お、死んだ。」






その15に続】




写真の説明~、ハウステンボスのVIP御用達超高級ホテル『迎賓館』の『ロイヤルイルミネーション』。

映画『笑うミカエル』のロケも行われた場所です。

人生の内1度は宿泊してみたいねv(笑)


…で、宜しければ公式サイトの場内マップを御覧下さいませ。(苦笑)


橋の名前ね~、こんな感じで自分覚えてて、全部書こうかと思ってたんだけど……………やっぱ恥しいから止めときます。(汗)
それと前回、長崎カステラの老舗店舗『松翁軒』を、『松扇軒』と間違えて書いてしまいました。(汗)
誠に失礼致しました。(御指摘下さったちばさん、どうも有難う御座いました!)(礼)
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『何度も廻り合う』その13

2006年01月12日 23時36分09秒 | 桜トンネル(ワンピ長編)
前回の続きです】




歌い終ったミュージシャン達が、最後に1人づつ、ヴォーカルに名前呼ばれてあいさつしていく。

1人1人前に出てく度、集まった大勢の観客が、拍手と歓声で応えた。

もちろん俺もしてやった、口笛まで吹いて。


全員があいさつし終えて、手を振りながら、ステージ裏に去って行く。

最後は演奏してたメンバーも、手を振って去って行った。



「すっげ楽しかったなァ~♪♪」
「皆本当にすっごく歌上手だったよねェ~!」
「ちょー盛り上ったよな!!最後は皆でバカノリしちまってよォ!!」
「あんたはノリ過ぎよルフィ!!こっちまで引き摺られて恥しかったのなんの…ま、楽しかったけどさ。」
「…………俺は疲れた……早く風呂入って寝ちまいてェよ…もう、ショーは全て終了したんだろ?いいかげん帰ろうぜェ?」
「未だよ!最後の花火が残ってる!」
「未だ有んのかよ~~~!?……いいかげん帰りてェよ俺は…。」
「花火ってアレか!?ドーンと鳴って打ち上がるちょー特大のヤツか!?なら観る!!ぜってー観るぞ俺!!!」
「どうせ会場は此処みたいだし、やっぱ1日の終りは花火で〆ないと♪……後25分、間が有るみたいだから、どっか開いてるお土産屋入って暖まってよ!」




花火がやる時刻まで、俺達はてきとーに土産屋選んで、入って待ってる事にした。

…つってもたいがいの店が閉ってて、開いてるのは3けんくれェしか無かったけどな。


その内の1けん、酒をメインに売ってる店が在ったんで入る事にした――ゾロのたっての希望で。

しょーちゅーとかの日本酒が多く置いてある店だったけど、他にも明太子とかカマボコとかカステラとか…奥には焼物の器とかまで有った。

出てたししょくを片っぱしから食ってく、チョコレート味のカステラが甘くて美味かった。

しょーおーけんって名前の、長崎で有名なカステラ屋の物らしい。


俺の後ろでは、ゾロがかつて見た事無ェほどマジな顔して、1本1本酒ビン見つめながら考えてる。

そのゾロの後ろから、ナミがギャイギャイ騒いで注意してる…ようで、ナミ自身もゾロと一緒になって酒見てた。


何か長くかかりそうなんで、1人でとっとと店を出た。


店の出入口前には『かんころもち』って書かれた屋台が在って――実を言うと店入る前から興味持ってたんだけど――まんじゅうみてーな大福みてーな変ったもんふかして売っていた。

ふかしてるトコから白い湯気がホコホコ出てて、外寒かったんで余計に美味そーに見えた。

誘惑に負けてつい1個買っちまった。

手に持ったそれは、アツアツで紫色した大福みてーな形してた。

包まってたラップはがして、フーフー言いながら一口かじる。


「ってあんたは目を離した隙にまた食ってるし!」
「ブッッ!!…ファ、ファヒ!!?――アヂッッ!!!アヂアヂアヂィッッ!!!
「買い食いも程々にしとかないと、お小遣いあっという間に無くなっちゃうから!!……って何?その紫色の食べ物…。」
「『かんころもち』って名前の食いもんだ。餅っつうけど、今食ってみたら、これ餅じゃねェぞ?芋だ!」


食ってみたら、紫色の餅みてーな外側部分は芋だった、芋きんとんの味だ。

中味は白アン…不味くはねェっつか、まァまァ美味ェし甘ェ。


「なひゃひゃひはおもひへーもん売っへんひゃな~~。」
「成る程ねー、紫芋を餅みたいに練って、中に白餡包んで大福みたいにしたお菓子…なのかしら?変ってる~。」
「おー、悪ィ!待たせたかァ?」


ゾロがニコニコしながら戻って来た。


「……ゾロ…あんた、未成年のクセして焼酎一升瓶で買ったわね…?」
「家への土産だ。何も問題無ェだろが?」
「有るわよ!!!人がちょォっと目を離した隙にあんたはあんたはあんたはあんたは!!!私が大人しく我慢してんだからあんたも我慢すんのが気配りってもんでしょォォォ!!?」
「痛っっ!!痛痛痛痛痛痛ェェ!!!バッッ!!止めっ!!抓るな引掻くな!!…別に我慢しなきゃ良いだろっって――痛ェェェェェ!!!!
「おい!!これから花火やるって放送してるぞ!?」
「え!?ああ!!大変!!!早く会場戻らなきゃ!!!」
「会場って、さっきの海賊船の前か!?」
「オレンジ広場だって!より人だかり有る方目指せば良いわ!!」




店を出て、何か美味そーな名前の広場に急いで向う。


でっけークリスマスツリーの前が、1番人が多くて混雑してた。

来て初めて観たクリスマスツリーだ、青・緑・金色と、どんどん色が変ってってきれーだった。

後でこれをバックにして写真をとろうと思った。


「…凄ェ。此処、こんなに人が入ってたのか。初めて知ったぜ。」
「今までで1番活気づいてんなー!!」
「どうやら前に広がる海で上げるみたいね。」



開始を知らせる英語アナウンスがかかった。


曲に合せて空いっぱいにレーザーの光が反射される。


ドン!!!ドォン!!!とものすげー音させて花火が打ち上がる。


レーザーの光と重なって、空にぱぁっと広がる。


花火って名前の通り、本当に花みてーだ!!


散ってキラキラと、雪みてーになって降って来る。



また打ち上がる、ぱぁっと広がる。


色とりどりの空の花。


キラキラキラキラ、雪のよーに、星のよーに、降って来る…




「……きれーだなー……」


「綺麗でしょ?この島の花火は、グランドラインでも有名な美しさなんだって。」

「ふーーーん…。」




……………………ぐらんどらいん???




「ぐらんどらいんって、何言ってんだ?ナミ??」
「はァ??あんたこそ何言ってんのよルフィ!?『偉大なる航路』、私達が今、航海してる海じゃないの!!」

「いだい???こうかい????…何の事だそりゃ??????」

「おいルフィ…食あたりでもしたか?医者呼ぶか?」



「――ゾロォォ!??おま何だァ!?そのカッコ!??腹巻!!?刀!??いつ着替えたんだァァァ!!??」



目の前に立ってたゾロのカッコは、さっきまで着てたジーンズに緑のジャケットではなくて、半そでおやじシャツに緑の腹巻うでには黒バンダナしばってってな風に変ってた――しかも刀3本も差してるぞコイツゥゥゥ!!??



「ゾ!ゾロ!!何だよその刀!!?何処の店で買ったんだよカッコ良いじゃねーか!!!でもじゅーとーほーいはんだぞ良いのか!!?なァァァ!!??」


「……おい、クソコック。おめェ、ひょっとしてこいつに一服盛ったんじゃ…?」
「クソざけんなよ、マリモンチッチ。幾ら連日食料強奪しやがってるからって、コックのプライド捨ててまでそんな真似するかよ。」
「けどさっき、コックさんの強烈な蹴りが脳天に直撃してたでしょ?…それが原因で彼、一時的な記憶喪失になってしまったんじゃないかしら?」


「サ、サンジィィ!!??おまえいつここに来たっっ――ってかロビン先生まで居るしっっ!!??」


振り返ったそこには、黒スーツ着てタバコぷかぷかふかしてるサンジ、そしてなぜか俺達のクラスの担任のロビン先生まで居た!


「っておいサンジ!!!ロビン先生の前でタバコはヤベェだろ!!?いやそんな事よりいつここ来たんだよ!!?受験勉強は大丈夫なのかよ!?来てたんなら早く教えててくれよォーーー!!!!」

「…あ~~あ、そーとー打ち所、いや、蹴り所悪かったみてェだぞ。ま、何だ!此処はやっぱ医者の出番だろ!おゥい!チョッパー!!仕事だぜ!!」

「お、おう…!!!」

「――ウソップゥゥ!!??おめェも来てたのかァァァ!!??……っておまえは誰だァァァァ!!???



サンジの後ろにはウソップがいた!!

あの長い鼻は間違い無くウソップだ!!!

しかもさらにその後ろから、チョコチョコと奇妙な生物まで出て来やがった!!


ピンクのぼうしをかぶり、ツノを生やした青っ鼻の、見た事も無ェ動物。


…シカか??…タヌキか???


「解った!!シカとタヌキのキマイラだ!!!」
「トナカイだ俺はっっっ!!!」
「相当、重症ね。」
「まったく酷いわねー!!あんた、ウチの大事なドクターまで忘れちゃったってーの!!?」
「ナミ!?おまえまでいつの間にそんなうすいワンピースに着替えたんだ!!?風邪引くぞ!!!?」
「……あんたに言われたくないわよ…。」
「――え!!?あああ!!??俺ビーサンそで無しいつの間にィィィ!!???」


俺の服はいつの間にか夏服に、はいてるくつなんかビーサンに変ってた!!!




何だ何だ!??


どういう事だこれ!!???


いつの間にか全員集合、しかも妖怪まで混じって!!???


いったいぜんたいどーなっちまったんだよ!!!??


誰か説明してくれよ!!!!



訳解んねーよォ~~~~!!!!!!




コンガラガッちまった頭の上で、またドォン!!!とでっかい音が響いた。


見上げた夜空に、ひときわでっけー花が咲いた。



そしてまた雪みてーなって、キラキラ光りながら降って来る。



観ている皆の笑顔が、明るく浮き上がった。






「…ほら、あんたの大事な帽子が落ちてる!」





ナミが、俺の頭の上に、ポスッと何かをかぶせた。




手に持って見ると、それは古びた麦わらぼうし。





「………これ…俺の、か……?」


「そうよ!大事な誓いの帽子でしょ?……しっかりしてよ、船長!」



ナミがにっこりと笑う、その後ろには光る雪。





――ああ、そうだった!!



俺の名前はモンキー・D・ルフィ。



海賊王になる為に、船に乗って海へ出た。




そうして見つけた仲間達。




三刀流のすごうで剣士、ロロノア・ゾロ。


天才航海士で、怒ると鬼より恐ェナミ。


ウソが上手くて鼻の長ェウソップ。


グルグルまゆ毛の一流コック、サンジ。


医者で七段変型面白トナカイのトニー・トニー・チョッパー。


考古学者でものすごく頭の良いニコ・ロビン。





そうだそうだ!!


何で忘れちまってたんだ俺!?


…ゴメンな、チョッパー!シカとかタヌキとかキマイラとか妖怪とか言っちまって…



けど思い出した!全部思い出したぞ!!




海賊王、最強の剣士、世界地図、

勇かんなる海の戦士、オール・ブルー、

万能薬、リオ・ポーネ・グリフ……



皆一緒に、夢を叶える為に、俺達はグランド・ラインに入って、航海して来たんじゃねェか…!!





ドォン!!!と響いて花火が打ち上がる。


空に幾つもきれーな花が咲いてく。



「……きれーだ……。」

「綺麗でしょ?

 この島の花火は、グランド・ラインでも有名なんだって!

 毎日沢山の旅行客が、これを目当てに訪れてる。


 でもね、元々の此処は、草木も育たない、捨てられた荒地だったんだって。

 信じられる?こんなに緑豊かで、美しい花が咲き乱れてる街がよ?


 1年半、耕して耕して耕し続けて、気の遠くなる程の歳月をかけて、

 島は生まれ変り、そしてこんなに大きな街が造られた…」




ドドドォォン…!!!と連続で花火が打ち上がる。


今までで1番でっけー花火だった。


空に映ったレーザーの波の中、いっぺんに沢山の花が咲く。


広がっていっせいに散って、そうして空ん中だんだんと、溶けて流れてった……



今のが最後の花火だったらしい。


一気に歓声と拍手が上がった。




「……すげェ……すげェェェェェ~~!!!!」





「ね!?観て良かったでしょ!?ルフィ!…ゾロ!!」

「まァな、やっぱ花火はショーの華だな!」


「ウソップ!!サンジ!!チョッパー!!ロビン!!おめェらも…!!!」





――って、あ、あ、あれ!!!??





振り返ったそこに、ウソップやサンジやチョッパーやロビンの姿は無くて、知らねー観光客達が、びっくりした顔して立ってるだけだった――




「ああれあれ!!???おおゥい!!!ウソップ!!サーンジ!!チョッパー!!ロビーン!!!…皆どこ行っちまったんだァーーーーー!!!!??」

「…ウソップ?サンジ君?ロビン先生???……あんた、さっきから何言ってんの???」
「っつかおめェ、ロビンって…教師の名前呼び捨てっつうのは失礼じゃねェか?」

「なァおまえらもウソップやサンジやチョッパーやロビンを探してって――またいつの間に着替えたんだよおめーらァァァ!!?


目の前に立ってたゾロとナミは、また冬服に戻って居た!




――どどどどーなってんだ!!??こりゃーーー!!!???



「ウソーーップ!!!サーーンジ!!!チョッパーー!!!ロビーーン!!!おゥゥゥいーーーー!!!!!」


「…だから何てめェはウソップやグル眉毛やロビン先生の名前呼んでんだよ!??」
「居たじゃねーかさっきまで!!!!ウソップやサンジやチョッパーロビン全員!!!!」
「居る訳無ェだろウソップや眉毛が!!!最初っから此処に来てなかっただろが!!!!」



「……最初っから……?何で………?」
「…だから、2人とも受験が有るから、勉強しなきゃいけねェって……そもそも担任の教師が何で俺達と一緒に此処来るっつうんだよ…??」


「……受験…?勉強……??」


「ねェ…『チョッパー』って何よ???」

「わ…忘れちまったのかよナミィ!!?医者でトナカイで七段変形して、一緒に航海して来た俺達の仲間じゃねェかーーーー!!!!!」


「……………何で、トナカイが医者で、私達の仲間んならなきゃいけないのよ……??」

「後悔…??航海か???……何時俺達が航海したってんだよ……??」




ゾロとナミが、変な顔して俺の事見ている。




――そんな…だって…確かに、さっきまでいたんだ!!全員!!!!




「…夢でも見たんじゃねェか…?」

「立って夢見るなんて、ゾロより酷い寝惚けね!おっかし~!!」
「どうしてそこで俺が出るんだよ!!?」
「あら!?だって寝惚けはあんたの必殺技、酔拳ならぬ『睡剣』じゃない!」
「んだとっ!?てめェ!!!」




――夢じゃねェ、夢なんかじゃねェ!!





けど確かに今此処には、ウソップもサンジもチョッパーもロビンも、居なくなっていた……







その14に続】






…この話読んで「お前の企みは全て解った!!」と思った方も多かろうな~。(苦笑)

すんません、そんな妙な事企んでおりました。(汗)

付いて行けなかったらすんません。(汗々)


写真の説明~、ハウステンボス、スパーケンブルグ地区に在る、海賊船ではなく『デ・リーフデ号』にイルミを点灯させた『光の船』。


文中出て来たお酒の店は、スパーケンブルグ地区に在る『ぜーランド』って店の事です。

カステラの美味しい、長崎の老舗店は『松翁軒』ね。
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『何度も廻り合う』その12

2006年01月11日 22時31分37秒 | 桜トンネル(ワンピ長編)
前回の続きです】




「…7:10…ショーは20分位だって言うから、今から行っても間に合わないだろうなァ…。」


食い終えたテンプラ屋の前で、見るからにしょんぼり残念そうな顔してナミが言った。


「まーしょーがねーよ♪これも運命だと思ってあきらめ――ぐええっっっ…!!!!
「責任を摩り替えるな!!!!あんたがあんたがあんたがあんたが!!!!最後まで意地汚く噛付いてるから!!!!一体どんだけ食や満足するってのよもォーー!!!!」
「…ぶっっ苦じっっ…!!!止め…首じめんな…!!!ズドッブ!!ズドーーッブ…!!!」
「何時までもグダグダ言ってんじゃねェよナミ。たかがショーの1つや2つ見逃したくれェで人生大きく変んねェだろが。」
「変んのよ私はァ!!!」
「変んのかよ!??」

「……まァ良いわ…確かに何時までも悔しがってたって、時間を元に戻せる訳で無し…次の8時から行われる『ゴスペルライブショー』に懸けるわ!」
「ってまだショー観る気かよ!?…いいかげん、疲れたぞ俺は…。」

「未だ時間まで間が有るし…行く頃にはコンサートもう終ってるだろうけど…取敢えず食後の散歩がてら、パレスの方まで行くわよ!」
「………食後の散歩って……何回させりゃ気が済むんだよ!?おい!!」


しかめっ面して文句こぼしてるゾロを全く無視して、ナミが歩き出す。

店の裏に在る通りを、1人でどんどん歩いて行っちまう。

置いてかれちゃ困るんで、急いで後を追ってく…なんせコテージのカギ持ってんのナミだし。

後ろ振り返って見たら、しぶしぶといった感じではあったけど、ちゃんとゾロも付いて来てた。




その通りは今まで見て来たのとは全然違って、人の姿の見えない静かな場所だった。

幅の広い坂道で、店なんて1けんも無い。

両はじには背の高ェ木が、ずーっと上まで並んで立ってる。

枝には電飾が付けられてて、赤・白・緑とてんめつしてて、すんげーきれーだった。

まるで光の林だ。


「綺麗でしょう?『レンブラント通り』って言うんだって。『レンブラント』って言うのは、オランダ絵画の巨匠の名前。」

「なんか、ガキん時ナミと読んだ、おとぎ話に出て来た1場面みてーだな。」
「え?そんな話読んだっけ?ルフィ?」



『階段を下りると、人通りの無い、広い並木道が、遠くまで続いていました。

立並んだ木の葉っぱは、どれも銀で出来ていて、目がくらむほど、まぶしくかがやいています。

12人のお姫様の後を追っていた兵隊は、マントの影からうでをのばし、しょうことして枝を1本折り取りました。


――ぽきーん


進む内に、大通りの並木は、今度は金の葉っぱに変りました。』



「ああ!グリム童話の『破れた踊り靴』ね!12人のお姫様の行く先を知る為、後を追ってった兵隊が、銀や金やダイヤの並木道を進む場面…夢の有る、素敵な話だったわァ…。」
「そうか?どっちかっつうと極めて俗っぽい、欲に塗れた話に聞えるけどな。」

「うん!私も、見てて思い付いたわ!


その人通りの無い、広い並木道は、遠く遠く、黄金色に光り輝く宮殿へと続いていました。

並木は残らず黄金で出来ていて、枝にはルビーやダイヤやエメラルドが、鈴生りに光り輝いていました。


…どお?私ってメルヘン作家の才能有ると思わない??」

「すげーなナミ!赤・白・緑に光る電飾見て、ルビーやダイヤやエメラルド想像するなんて俺には出来ねーよ!」
「子供向けでは無ェよな。大人のメルヘン目指した方が良いぜ?」
「どおいう意味よそれ!??」




キラキラ光る林を抜けた前には、ナミの言った通りに、黄金色に輝くきゅうでんが在った。

きゅうでんの前には驚くくれェ大勢の人が居た。

それが、俺達が門をくぐるのとは入れ替わりに、門から出て坂道を下りて行っちまう…


「…どうやら丁度、クリスマスコンサートが終了したようね。」


ナミがボソッとつぶやいた、その顔に悔しさがにじみ出てる。

……ここで何か言うとタケヤブ、もといヤブヘビになりそうだからだまっておこう。

どんどんどんどん俺達の横を人が通り過ぎて、坂道を下りて行く。


あっという間に、きゅうでん前には数えるほどしか人が居なくなった。


「…きれーーなきゅうでんだなーーー……。」
「日本じゃねェみてェだな。」

「『パレスハウステンボス』って言ってね。このハウステンボスのシンボルで、モデルはオランダ、デンハーグに建築された王家の宮殿なんだって。この前庭も素晴しく綺麗だけど、ガイド載ってる写真観ると、後庭はまた更に美しいみたいよ。行ってみよう!」




ナミの言う前庭を抜けて、きゅうでんの中を通って後庭に出る。


観た瞬間、俺達全員「ほえーーー…!!!」とか「ふあーーー…!!!」とか……何てェの??言葉が上手く出て来なかった。

庭の真ん中には輝くでっかい噴水が在って、噴き上がる水は高くなったり低くなったり。

その前にはピカピカ光るクリスマスツリー??が何本も立ってる。

きれーな彫刻もあちこちに立ってる、ナミが言うにはギリシャ神話に出て来る神様らしい。

庭全体を囲むみてーな光のトンネル。

庭そのものがまるで、暗い夜の下で光り輝く絵みてェに見えた。


「……ビビに写真撮って送んなきゃ!!それとロビン先生にも!!」
「あ!!俺もとる!!とってウソップとサンジに見せねーと!!!」
「こりゃ…見事以外に言葉が出て来ねェよ…!」


写真をとりながら庭をうろつく。


ナミがトンネルくぐって庭1周しようってんで、そうする事にした。


「トンネルと言うか『アーチ』ね。『緑の回廊』って呼び方されてるみたい。光のアーチを潜って庭内1周出来るなんて、素晴しい設計だわ!」


トン…アーチはUの字みてェな形してて、所々開いた窓から景色が観えるように造ってあった。

くぐりながら、俺達は何枚も写真をとった。

きゅうでんをバックにしてもとった。


庭で写真をとってる人は俺達以外にも結構いて、さつえいには大分時間がかかった。

気が付けば次のショーが始まる10分前、またナミにせかされて、来た坂道を駆け足で下りてった。




ショーは港街のステージでやるって事で、戻って来た時にはまたすっげー人だかりが出来てた。

ステージは、初めてここに来た時に見た海賊船の前に、造られていた。

海ぞく船にも光が点っててきれーになってる。

広場だったんで、大勢客が入ってても、座る場所は見つかった。

ってかイスなんて並べてある訳でなく(あ、でも後ろに有るレストランの野外席座るって手も有ったってか…ステージからは遠くなるけど)、ステージ前てきとーに座るって感じだったからな。


座ってからちょっとして、やかましいくれェ大きな音楽が鳴り響いた。

クリスマスツリーや青くでっかい三日月で飾られた白いステージに、1、2、3……え~~と10人近くの歌手が上がって来た。

音楽に負けねェくれェの大声で歌う。

どいつもメチャクチャ歌上手ェ!!英語だから何て歌ってるか全然解んねェけど!


「あいつら黒人か!?」
「ゴスペルソングは元々、黒人ブルースやジャズに、聖歌の要素が加わって生まれたものだもの。本場のニューヨークから来たゴスペルグループ、『ハーレムメッセンジャー』だって!」
「どいつも歌上手ェな~!!何て歌ってんのか解んねェけど、ノリ良いし楽しいし俺好きだぞ♪♪」
「本当ねー♪どの人も声量が有って曲もリズム良くって、やっぱり本場のミュージシャンって感じで凄いわよね!」
「マイク要らねェんじゃねェか?はっきし言って。」


言葉は全然解んねェ。

でも歌が上手ェ事は良く解った。

自然とノッて手びょうし打っちまってた。

向うも言葉だけでなく、ジェスチャーで伝えて来た。

「立って!」と言ってるらしい。

言われた通り立ってやる。

周りに居る客も立ち上がる。

ゾロとナミも無理やりうで引張って立ち上がらせる。

「肩組んで!」とも言って来たんで、肩を組む。

恥ずかしがってたけど、ゾロとナミにも肩を組ませた。

俺の右にゾロ、ゾロの右にナミ、3人で肩を組む。

俺の左は知らない奴だったけど、こいつとも肩を組む。

肩を組んだまま、全員、右に左に体をゆらす。


オー!ハッピーデー♪

オー!ハッピーデー♪


…ああ、これなら俺にも解る!


――幸せな日、楽しい日。


やっぱりプロはすげェな。

歌上手ェだけでなく、ノせ方も上手ェ。


いつの間にか周り中立って肩組んで一緒に歌ってる。


「ミュージシャンって良いよな!歌だけで世界中渡って行ける!」

「…言われてみりゃ、そうだな。身一つ、ただ己の才能のみで渡る…憧れる生き方だ。」




「だから俺は、音楽家を仲間にしてェんだ!!!」





――………へ?何で…???




「………音楽家??音楽家を仲間にして何するってんだ??」
「何あんた?音楽家の友達が欲しかったの??」
「あ、いや……俺も何でこんな事言ったのか、自分でもよく解んねェってか…」
「自分で言っといて解んねェのか!?――おっかしな奴だな!」
「本っ当!」


ゾロとナミがあきれたように笑う。


俺も……よく解んねーけど、とりあえず笑っといた。





Oh!Happy dayー♪

Oh!Happy dayー♪






――今日は良き日、


神様に、この出会いを感謝します――








その13に続】





…ルフィの言う海賊船は、海賊船では有りません……再度、念の為。(汗)


写真の説明~、光の宮殿(パレスハウステンボス)、門前より…この素晴しさは、行って観なけりゃ解りません!!
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『何度も廻り合う』その11

2006年01月10日 22時44分28秒 | 桜トンネル(ワンピ長編)
前回の続きです】




「17:45に『ライティング・セレモニー』が始まるから観に行こう」とナミが言ったので、俺達はまた外へ出かけた。

ゾロだけコテージに残るって言い張ったけど、ナミとの口ゲンカに負けて、結局また3人で行く事になった。




「場所はお昼にクリスマスソングショーが行われたのと同じ、『アレキサンダー広場』って所よ。」
「行ったり来たり行ったり来たり行ったり来たり…何回リピートすりゃ飽きるんだ、てめェは!?」
「飽きずに惰眠貪リピートし続けてるあんたに言われたくないわよ。せっかく遊びに来たのに、普段と変らずただゴロゴロしてたんじゃ勿体無いでしょ?」
「何言ってんだ?せっかく遊びに来たからこそ、ゆっくりのんびり寛いで過しゃあ良いじゃねェか。誰にも気兼ね無くゴロゴロとよォ。」
「…だからあんたの場合、それじゃ普段の過し方と変んないじゃないの。」
「『ライティング・セレモニー』ってどんなショーだ?ナミ?」
「私も観た事無いからよくは知らないけど…ガイドに有る『光の街にイルミネーションを灯す感動的なセレモニーショー』との紹介文から推理するに、街の点灯式ってトコじゃないかしら?」
「てんとう??…でも何かもう周り中、明り点いてはいるぞ?」


夜になってすっかり暗くなった空の下、街にはポツポツと明りが点き始めていた。

道々通ってく途中に在る店に、オレンジ色のライトがピカピカ点っててきれいだった。


「けどドム・トールンとかツリーとか街路樹とか、結構点いてない箇所も多いでしょ?写真見る限り、未だ未だ、もっともぉっと綺麗になるみたいよ。」
「へー、ワクワクすんなァー♪早く点かねーかなー♪♪」




広場に着くと、野外ステージの前には人だかりが出来ていた。

すでにステージ前の席は全部埋まってる、どころか立観客でかべまで出来てる。


「今日は日曜だものねェ、もっと早くに来るべきだったわ!」


悔しそうに、ナミが言った。


しょうがないんで何とか背の低い立観客を見つけて、そいつの後ろに立って観る事にした。

こーいう時、背の高ェゾロはうらやましいよなー。




ショーが始まった、最初は話のろうどくからだった。


ある所にびんぼうな少年がいた。

そいつは親もいなくてさびしい奴だったけど、たった1人、いや、1匹のネズミが友達にいた。

だけどある日、そのネズミが死んじまうんだ。

独りっきりになっちまった少年は、悲しくて悲しくて、冷たくなったネズミの上に、ポロポロポロポロ止る事無く涙を流した。

その涙はいつしか光るしずくへと変り、どんどんどんどん辺りを明るく照らしてった……


「………てェか、『フランダースの犬』並に悲しい話だな。」
「…てゆーかクリスマス・ショーなんだから、もっと明るい話にして欲しいわよね。」


ゾロとナミの言う通りだと俺も思った。


ショーの最中にパカパカと馬の足音が聞えて来た。

足音する方へ首伸ばして見てみたら、そこには――


「サンタクロースだ!!!」


――そこには、光る馬車に乗ったサンタクロースが居た!


「やっぱクリスマス・ショーにはサンタが出ないとね♪」
「ま、盛り上がんねェわな。」
「くっそー!!人が多過ぎて上手く写真とれねーよ!!」


馬車から降りて、サンタがステージに上る。

白くて長いヒゲ生やしたサンタが、先が星の形したステッキを持ち高く振る。

ステージの上の奴等の歌声も高くなる。


――とたんに、街はいっぺんに明るくなり、歓声が上がった!


「すっげーー!!!とうが光ったァーーー!!!」
「見て見て!!後ろの大きなツリーも点灯されてる!!」
「成る程、こうやって一遍にライティングすんのか、巧い演出だな!」


まるでウェディングケーキみてェな、三段重ねの光るとう。

まるで光る実が沢山生ってるみてェな、でっかいクリスマス・ツリー。

周りに立ってる木も、1本残らずキラキラピカピカ。


ショーが終り、サンタはまた光る馬車に乗って行っちまった。

集まってた客も散らばってく、あっちこっちでさつえい会が始まってた。


ナミが自分達も写真をとろうと言った。


昼間見た、正面に花時計の飾られた教会の方へ行ってみる。

その教会も真っ白にキラキラ輝いてて、窓はうす紫色にピカピカしてて、もうメチャクチャきれーだった。

3人共真ん中に立つのを嫌がったんで、しょうがねーから今度は1人づつバラバラでとる事にした。

写す人の多い、人気さつえいスポットだったから大変だったけど、何とかスキ見つけて、でっけーツリー・教会・とうの3つ共入れて写真をとった。



「じゃあ、そろそろ夕食にしよーか?何食べたい?」
「おお!!さんせーだ!!!俺肉が食いてェェ!!!」
「俺は魚だな。和食が食いてェよ。」
「私も何となく和食が食べたいかな。洋食が続いてたからね。…2VS1、多数決により和食、魚食べに行こv」
「えええーー!!?肉ゥゥゥーー!!!!」
「肉は明日の昼!存分に食べさせてあげるわよ、ルフィ!」




魚料理食いに(←ちくしょー肉が良かった~)俺達は、元来た港街のスパ何とかに戻った。

その街の『サライ』って言う店のテンプラが美味くておすすめだから、そこで夕食にしようとナミが言った。


「『サライ』じゃなくて『真藍(さあい)』よ!!…以前私が来た時は『天狗』って名前の天婦羅料理屋さんだったんだけど、今は隣に在ったお寿司屋さんと一緒になって割烹居酒屋として営業してるんだって。揚げ立ての天婦羅が食べれて美味しいわよ~v」
「揚げ立てのテンプラか!?そりゃ美味そうだな♪♪」
「白い米の飯食えんなら何だっていいさ。正直洋食は飽きた。」



店の前に着く、料理の写真が貼られた板べいの真ん中が入口になってて、店名入った紺色ののれんが下がってた。


「なんかミスマッチだな」とゾロが笑う。

「建物は煉瓦造りの洋風、だけど和調。…このギャップが面白いんじゃない?」


のれんをくぐって扉を開けて中に入る。

だんぼうきいててあったけ~、ずっと外立ってショー観てたから、マジ有難ェと思った。

ここはおざしきだからくつ脱いで入るんだ、とナミに言われてくつを脱ぐ。

脱いだくつは、せんとうのゲタ箱みてェな所に入れて、カギかけるシステムなんだそうだ。

たたみに上がって店の人に案内されて、くるっと輪になってるような席に着いた。

下にしかれた座ぶとんが嬉しい。

真ん中には…調理場??どうやら俺達のちょうど前がテンプラ揚げる所らしかった。


「ああ成る程、客の前で揚げてくれるって訳か。」
「この席、変ってるな……床に穴開いてっぞ??」
「穴じゃなくて、掘り炬燵式って言って、座って下に足伸ばせる様なってるのよルフィ。その方が楽でしょ?」
「あそっかー!うん楽だ!確かに楽だな♪」

「で、何食や良いんだ??どれがお得でお勧めなんだナミ?」
「う~~ん………コースで頼んだ方が得だとは思うけど………1番安いコースで『華』、かしら…?」
「じゃあ俺はそれでいい。」
「あ!俺もそれ!!安くて量多くて美味いヤツが良い!!!」
「ルフィ、大声出さないで。…じゃ3人纏めて『華コース』でv」


注文すると同時に、お茶とオシボリが出て来た――ぬくい~~vv

「天つゆと先付けの『梅くじら』です」っつって、何か解んねー料理も出て来た。

どうやらこれ食って待ってろって意味らしい。

食ってみるとすっぺーけど結構イケた。

でもちょびっとしか無ェ……早くテンプラ食いてェなァ~~~。

周り見回すとまだそんなに人がいねェ。

「7時近くなったら入って来るんじゃない?」とナミが言った。

そのとなりでゾロが「やっぱ酒欲しいよなァ」とボソリとつぶやいてた。


しばらく待って、ようやく料理人らしきおっさんが、客席の真ん中開いてるスペース入ってって、俺達の前で料理し出した。

じーっと観てたら………粉といてコロモ作ってるっぽい??

ボールの下に氷当てて、シャカシャカかき混ぜてる……

考えてみたら、俺、テンプラ作るトコ初めて観るな~。

前にサンジにメチャ美味ェ天丼作ってもらったけど、サンジもこんなすげェスピードでシャカシャカかき混ぜんだろうか?

今度作ってるトコ観せてもらおう。


かき混ぜ終ったのか、おっさん手を止めた――で、店の奥に引っこんじまった。




……………ボールそのままにして帰って来ねェ………




…………………………。




……………………………………………………。






「ぐおおーーーーーー!!!!!メシメシメシメシ腹へったーーーーーー!!!!!早く食わせろーーーーーーーー!!!!!!」



「ルフィ!!!迷惑だからジタバタ暴れない!!!もう高校三年生なんだから、大人しく待ってなさい!!!!」
「あんだけ食い捲っててそれでも腹減らせるなんて、これも1つの才能だよな。」



またしばらく待って、よう~~~やく料理人のおっさんが帰って来た!!

今度はちゃんと野菜や魚にコロモ付けて、どんどん揚げてってくれた。

メシに味噌汁漬物も出て来た。

おっさん無言でジュワジュワ揚げてってくれる……なんかゾロに似たぶっちょう面だな~。

揚がったテンプラをかなあみ乗った器に盛って出してくれた――うおお!!!待ってました!!!!

天汁たっぷり付けて食ってみる。


「う……う……うんめェェェ~~~!!!!」


「涙流す程感動する事も無いでしょが、ルフィ。」
「いや確かに美味ェほほりゃ!!…やっぱ天婦羅は揚げ立てに限るな♪」


キスにメジナにサツマイモにシシトウにナスにイカにでっけーエビ3本。

どれもこれもカラッとしててあっつあつで最っっっ高に美味かった!!

赤だしの味噌汁もうんめェェェ!!

メシおかわりしてまで一気に食っちまった。


お茶のおかわりもらって一息入れる。


「あーーー………美味かった…!!」
「うん、美味かったな。ご馳走様!」
「2人に喜んで貰えて嬉しいわv…後は果物が来て終りだけど……待ってるとショーの時間に間に合わないなァ…」
「ショー??今度は何のショーだよ?」
「『光の宮殿クリスマスコンサート』。7時からパレスの方でやるみたい…後5分しかないわ……2人共、ゴメン!悪いけど、果物諦めて、急いで店出てくれる!?」
「えええーーー!!??なな何でだよォーーー!!???」
「明日って日も有んだから、今夜は諦めりゃ良いじゃねェか。」
「明日の月曜はこのショー休演なのよ。火曜には私達帰っちゃうから、今夜しか観る機会無いんだってば!」
「嫌だ!!!俺は果物食ってく!!!1品でも残したらもったい無ェし腹減るし、料理した人に悪ィじゃねェか!!!!」


「………ルフィ………あんたねェェェ~~……さっき1人で蜜柑3ヶ林檎1ヶ梨1ヶ柿1ヶバナナ2本も食っといてよくもそんな事言えるわね!!!?気付けばキウイ2ヶだけしか残ってないなんてざけんじゃないわよ!!!!あれは私が会員だったお陰でサービスとして貰ったもんなんだから!!!!あんた地上に有る食い物は全部自分のもんだとでも思ってんじゃないの!!!?ええ!!!?仰い!!!!!


「ぶっっ…!!!ぐええっっ!!!や…止め!!ナミ!!止めろ!!!腹ふみぐりすん…ぶへェ!!!ナスイカエビ味噌汁全部出ちまっっっ――ぐええっっっ!!!!」


――ぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐり!!!


「流石にキウイは皮付で食うと美味くないと踏んだんだろうな、こいつでも。」

「おぅい、此処のお客さん達に果物お出しして、早く!」



料理人のおっさんがさいそくしてくれたおかげで果物はすぐに出て来た。


果物は、ぶどうとオレンジだった。

もちろん残さず全部食った。(きっぱり)



急いで店を後にする俺達と入れ替わりに、10人ばかりの団体のお客が入って来た。


時間にして7:10…………結局、ショーには間に合わなかった。






その12に続】





写真の説明~、光の塔、『ドム・ツリー』…ドム・トールンにイルミネーションが点ったもの。

ライティング・ショーのクライマックスは、これを点灯するシーンで御座います。

今年の話はちょっと悲し過ぎっつか、真面目さがハウステンボスらしいとは思いましたが(笑)…やっぱクリスマスのショーは、個人的には楽しさだけにしといた方が良いかと。(汗)

ライティング・ショー自体は素敵でしたv毎年の楽しみで御座います♪


【2006年8/4追記】…【真藍】は8/1より、【花の家】と店名を変え、リニューアルオープンしました。

…残念ながら、話中で出したお座敷天婦羅コーナーは無くなってしまったらしいです。(涙)

とは言え天婦羅がもう食べられないって訳でもなく、今迄以上にお得なメニューも増えてますので、むしろ家族向けに改善されて悪くないかもしれない。

詳しくはまったりさんのブログにて。
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いんたーみっしょん

2006年01月09日 22時54分50秒 | ただいまおかえり(雑記)
――閑話休題、今更ながら今年の抱負っつか予定っつか。(汗)




↑で上げてますが、3/3までは、ハウステンボスを舞台にしたパラレルワンピース連載話(謎)書いてく予定です。

なるべく毎日書いてこうかと(今日ちゃっかり休んでるけど)…そんな頑張る必要無いでしょ言われそうだけど(笑)、毎日書いてくようせんと春までに終らないから。(苦笑)




んで、それが終りましたら漫画&アニメ話とハウステンボス話を交互に、水・金・土・日曜日に書いてくつもり。


以前曜日決めない~書きましたが、やっぱカテごとに曜日決めて書くようにします。

でないと、何時までも書けないカテ出来ちゃいそうなんで。(汗)

毎度コロコロ方針変えてすんません。(汗々)




…しかしアレですねー。

←此処のカテ分け見ると、全然ハウステンボス話書いてないように思えますね!!(大笑)

…実際には今迄ハウステンボス絡みでない回なんて、指で数える程しか……まったく嘘吐きな奴で御免なさい。(苦笑)




7月はワンピースの美少女天才航海士、ナミの誕生日が7/3にあるので、ワンピースの話を中心に書きたいと。




8月は夏なので、オカルト話を中心にしたいと思ってます。

特に怖い話~って訳でも無く、自分の見聞き読みした不思議な話を紹介して書くって感じで。




…何かこう書いてくと、如何にもバラバラ無節操纏まり無く思えますでしょうが(汗)、ハウステンボス・漫画&アニメ・オカルトの三本柱での語りは変らずって事で。(苦笑)

この三本以外の話は致しませんって言いますか出来ません!!(笑)

…興味無い事は覚えもし無いんで話せないんですよ、情けない事に。(汗)




11月後半~はまたクリスマス話中心にするって事で…クリスマスは自分にとってはオカルト絡みでして。(笑)




こんな感じでまた1年、どうか宜しくお願い致しますです。(礼)




写真の説明~、昨日の写真、ハウステンボス、フォレストヴィラに有る洗面所内蔵箪笥、扉を閉じたトコを写した物。

…ね?洗面所が中に有るなんて……見えないでしょう…?





【おまけ:本日の占い】

獅子座の本日の運勢は最悪。(某ニュースの占いより)


……獅子座の方、どうぞ御心配無く。


後、約1時間もすれば明日になりますんで。(寝ちまえ、1時間位。)(笑)


「今日の○○座の方の運勢は~♪」なんて能天気口調で、出勤前からやる気を殺いで下さる朝番組は良い度胸をしていると思う。


コメント (4)
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