仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

ひとりでいるよりいいかな。Ⅱ

2008年10月06日 17時32分48秒 | Weblog
眠そうな目をしながら、ヒカルはマサルを淡島通りまで送った。
「ゴメン、今度、土曜日にでも飲もうよ。」
「いいよ。下北で飲もう。」
そんな会話をすると、マサルはベンベーに乗り込んだ。軽く手を振り、車は発進した。青島通りを下って、いくぶん酔いを感じている頭は派出所の前をわざと通る道を選択し、裏道に入った。警官はマサルを一瞥したが、それだけだった。
「ハンっ。」
マサルは狭い裏道にもかかわらずアクセルを踏み込んだ。道を歩くまばらな人々を巧みなハンドルさばきで掻い潜り、下北に通ずる道へと左折した。マンションを通り過ぎて、空き地のような駐車場にベンベーを止めた。しばらく、ハンドルに頭をつけ、マサルは動かなかった。屋台のラーメン屋の声が聞こえ、マサルは車を降りた。茶沢通りまで降りて、ラーメン屋を探した。ガード下からすこし入ったところでオヤジが準備をしていた。
「まだ、食べれない?」
「えっ、いいよ。直ぐ作るから。」
椅子を並べるのを手伝った。細麺の、チヂレ麺、オヤジが手際よく作るのをマサルはじっと見ていた。
「ビールはあるの?」
「あるよ。」
オヤジは中瓶の栓をを抜いた。グラスを置き、一杯目は注いでくれた。マサルはそれを一気に飲み干し、ビールを注ぎ、また、注ぎ、オヤジがラーメンを出す前にはすべて飲み干していた。ラーメンをズルズル音を立てて食べ、千円札を二枚置いて立ち上がった。
「兄さん、多いよ。」
「いいよ。準備、急がせちゃったから。」
「そうかい。悪いな。」
マサルはポケットに手を突っ込んでマンションに向かう坂を登った。マンションと言っても、六世帯が入っているだけだった。一つの階に二部屋。一部屋、一部屋がとても広く、敷地を贅沢に使っていた。大きなリビング、台所、寝室が二部屋、書斎と言った感じでマサル以外は外国人だった。