マサルは三茶の信号ですこし悩んで、国道二四六を渋谷方面に走った。渋谷を抜け、明治通りで折れて、表参道に出た。車を止めた。窓を開けて、物色した。髪を茶色に染めたミニスカートのナオンがマサルのほうを見ていた。マサルは車を降りて、声をかけた。
「なにしてるの。」
「えー、なにってー。」
ナオンは車とマサルを見比べた。マサルのラフな格好とベンベー。何のもなのか、そう思うのは普通だ。しかし、ナオンは笑いながら話をした。
「もし、暇していたら、ドライブ行かない。」
ありきたりの会話をして、その言葉をかけた。
「いいけど。」
マサルはナオンの手を引き、助手席のドアを開けた。すこしためらうように、けれど拒否することはなくナオンはベンベーに乗った。ベンベーの加速は凄かった。首都高に乗り、中央道に出て、国立で降りた。マサルはレストレンによることもなくホテルの駐車場にベンベーを入れた。
「私、そんなつもりじゃ・・・・」
マサルは助手席のドアを開けた。
「何もしないよ。」
「うそ。」
ナオンの目をマサルは見つめた。
「綺麗だよ。」
ナオンの顔がすこし緩んだ。手を差し伸べるとナオンはその手に手をのせ、車を降りた。手を握ったままドアを閉めると、グッと引き寄せ、マサルはナオンを抱きしめた。キスをした。ナオンは腕を首に絡めてきた。唇をはなし、額に額をつけて、マサルはもう一度言った。
「綺麗だよ。」
そのホテルは、ケバケバしい装飾はほとんどなく、おしゃれで清潔な雰囲気だった。テレビのドラマに出てくるような部屋だった。部屋も広く、二人がけのソファーや大型のテレビ、ベッドの置かれた位置。セクスをするために作られたとは思えないような演出がしてあった。高級マンションの一室のようだった。マサルは極力、紳士的に振舞った。ドアを開け、ナオンを先に中に通し、まずソファーに座らせ、マサルはたったまま、顔を近づけた。キスをするわけではなく、耳もとで囁いた。
「何か飲む?」
目を閉じて待ったナオンは、赤面しながら肯いた。マサルは洗面台の横にある小さなキッチンのようなスペースへ行き、冷蔵庫からコーラを二本取り出し、栓を抜いた。グラスとコーラを持ち、ナオンの横に座った。二人で座ると密着するようにできていた。
「すこし飲める。」
ナオンは聞いている意味が解らなかった。マサルはバッグからウォッカの小瓶を出し、グラスに注いだ。
「それ、なーに?」
「気分がよくなる薬。」
「クスリー。」
「ははっ、お酒だよ。」
マサルはコーラを注いだ。
「こうすればコーラと変わらないよ。」
グラスをナオンに渡し、自分のグラスにもウォッカとコーラを注いだ。乾杯をした。
「名前、聞いていなかったね。」
「明菜。」
「エー、ほんとー。いい名前だね。」
「あなたは。」
「マサル。詰まらない名前だろ。」
「そんなことないわ。」
明菜はグラスをもったまま、飲もうとしなかった。マサルは一気に飲み干した。
「のど、渇いてないの?」
「そんなことないけど。」
明菜はグラスを口に運んだ。マサルは自分の二杯目を作った。
「ほんとね。お酒じゃないみたい。」
二人は素性がわかるような会話はしなかった。共通の話題を探して、音楽の話やテレビドラマの話、好きなタレントの話をした。
「どうして、原宿にいたの。」
「洋服を探していたの。」
「何の。」
「もう直ぐ、秋でしょう。ジャケットが欲しくて。」
「あった?」
「NKにあったけど、予算より高くて。」
「NK、よく行くの。」
NKは竹下通りの一つ裏の通りにあるブティックで輸入ものが多く、価格設定が高かった。
「NK、知ってるの?。」
「うん。このティーシャツ、NK。」
この会話が二人を近づけた。ファッションの話を中心に会話が弾んだ。明菜はグラスを空にしていた。マサルは明菜のグラスを取ると二杯目を作った。ウォッカの量をすこし多めにして。
会話が途切れた。
明菜の肩に後ろから手を回した。すこし震えた。頬を軽く押した。明菜はマサルのほうを向いた。マサルは優しい目で明菜を見つめた。明菜の顔は赤く高揚していた。目を閉じた。唇に軽くキスをして、頬にキスをして、耳元で囁いた。
「もう少し、飲もうよ。」
明菜は肯いた。マサルは空になったグラスとウォッカの小瓶を持って、鞄からエフェドリンの錠剤を取り出し、小さなキッチンに向かった。明菜はフーと息をついて、背もたれに身体を預けた。マサルがエフェドリンを持っていくのには気が付かなかった。マサルは錠剤を奥歯で噛み砕き、二つのグラスに落とした。ウォッカを入れ、コーラを入れた。ソファーに戻った。グラスを明菜に手渡した。マサルはたったままで一気に飲み干した。明菜もそれにつられて、一気に飲み干した。マサルが手を出した。一瞬、明菜は何のことか、解らなかった。マサルの目がグラスを見た。両手で持っていたグラスをマサルに渡した。小さなキッチンにそれを戻した。振り向くと明菜が立っていた。もう言葉はいらなかった。マサルは両手を差し出した。明菜を引き寄せ、強く抱きしめた。キスをした。
「なにしてるの。」
「えー、なにってー。」
ナオンは車とマサルを見比べた。マサルのラフな格好とベンベー。何のもなのか、そう思うのは普通だ。しかし、ナオンは笑いながら話をした。
「もし、暇していたら、ドライブ行かない。」
ありきたりの会話をして、その言葉をかけた。
「いいけど。」
マサルはナオンの手を引き、助手席のドアを開けた。すこしためらうように、けれど拒否することはなくナオンはベンベーに乗った。ベンベーの加速は凄かった。首都高に乗り、中央道に出て、国立で降りた。マサルはレストレンによることもなくホテルの駐車場にベンベーを入れた。
「私、そんなつもりじゃ・・・・」
マサルは助手席のドアを開けた。
「何もしないよ。」
「うそ。」
ナオンの目をマサルは見つめた。
「綺麗だよ。」
ナオンの顔がすこし緩んだ。手を差し伸べるとナオンはその手に手をのせ、車を降りた。手を握ったままドアを閉めると、グッと引き寄せ、マサルはナオンを抱きしめた。キスをした。ナオンは腕を首に絡めてきた。唇をはなし、額に額をつけて、マサルはもう一度言った。
「綺麗だよ。」
そのホテルは、ケバケバしい装飾はほとんどなく、おしゃれで清潔な雰囲気だった。テレビのドラマに出てくるような部屋だった。部屋も広く、二人がけのソファーや大型のテレビ、ベッドの置かれた位置。セクスをするために作られたとは思えないような演出がしてあった。高級マンションの一室のようだった。マサルは極力、紳士的に振舞った。ドアを開け、ナオンを先に中に通し、まずソファーに座らせ、マサルはたったまま、顔を近づけた。キスをするわけではなく、耳もとで囁いた。
「何か飲む?」
目を閉じて待ったナオンは、赤面しながら肯いた。マサルは洗面台の横にある小さなキッチンのようなスペースへ行き、冷蔵庫からコーラを二本取り出し、栓を抜いた。グラスとコーラを持ち、ナオンの横に座った。二人で座ると密着するようにできていた。
「すこし飲める。」
ナオンは聞いている意味が解らなかった。マサルはバッグからウォッカの小瓶を出し、グラスに注いだ。
「それ、なーに?」
「気分がよくなる薬。」
「クスリー。」
「ははっ、お酒だよ。」
マサルはコーラを注いだ。
「こうすればコーラと変わらないよ。」
グラスをナオンに渡し、自分のグラスにもウォッカとコーラを注いだ。乾杯をした。
「名前、聞いていなかったね。」
「明菜。」
「エー、ほんとー。いい名前だね。」
「あなたは。」
「マサル。詰まらない名前だろ。」
「そんなことないわ。」
明菜はグラスをもったまま、飲もうとしなかった。マサルは一気に飲み干した。
「のど、渇いてないの?」
「そんなことないけど。」
明菜はグラスを口に運んだ。マサルは自分の二杯目を作った。
「ほんとね。お酒じゃないみたい。」
二人は素性がわかるような会話はしなかった。共通の話題を探して、音楽の話やテレビドラマの話、好きなタレントの話をした。
「どうして、原宿にいたの。」
「洋服を探していたの。」
「何の。」
「もう直ぐ、秋でしょう。ジャケットが欲しくて。」
「あった?」
「NKにあったけど、予算より高くて。」
「NK、よく行くの。」
NKは竹下通りの一つ裏の通りにあるブティックで輸入ものが多く、価格設定が高かった。
「NK、知ってるの?。」
「うん。このティーシャツ、NK。」
この会話が二人を近づけた。ファッションの話を中心に会話が弾んだ。明菜はグラスを空にしていた。マサルは明菜のグラスを取ると二杯目を作った。ウォッカの量をすこし多めにして。
会話が途切れた。
明菜の肩に後ろから手を回した。すこし震えた。頬を軽く押した。明菜はマサルのほうを向いた。マサルは優しい目で明菜を見つめた。明菜の顔は赤く高揚していた。目を閉じた。唇に軽くキスをして、頬にキスをして、耳元で囁いた。
「もう少し、飲もうよ。」
明菜は肯いた。マサルは空になったグラスとウォッカの小瓶を持って、鞄からエフェドリンの錠剤を取り出し、小さなキッチンに向かった。明菜はフーと息をついて、背もたれに身体を預けた。マサルがエフェドリンを持っていくのには気が付かなかった。マサルは錠剤を奥歯で噛み砕き、二つのグラスに落とした。ウォッカを入れ、コーラを入れた。ソファーに戻った。グラスを明菜に手渡した。マサルはたったままで一気に飲み干した。明菜もそれにつられて、一気に飲み干した。マサルが手を出した。一瞬、明菜は何のことか、解らなかった。マサルの目がグラスを見た。両手で持っていたグラスをマサルに渡した。小さなキッチンにそれを戻した。振り向くと明菜が立っていた。もう言葉はいらなかった。マサルは両手を差し出した。明菜を引き寄せ、強く抱きしめた。キスをした。