仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

ほんとはねⅡ

2008年10月27日 16時04分23秒 | Weblog
そう言うと、ソファーの前のテーブルに置いたグラスを持って一気に飲み干し、ステレオやビデオの隣に位置する楽器のほうに歩き始めた。
「凄いねー。ほんとにスタジオみたい。」
ドレムスの前で止まると振り向いた。
「ねえ、触ってもいい。」
「いいよ。」
カーデガンを脱いで、マサルのほうに投げた。ドラムスの椅子に座った。
「スティックは?」
「フロアーの横にあるけど。」
「あった!」
明菜はベードラを踏み、簡単なエイトビートを刻んだ。
「ドレム叩けるんだ?」
「これしかできないけど。」
「誰かに習ったの?」
「習ったわけじゃないけど、彼がドラマーなの。」
「彼がいるの?」
「彼がいるから、働いてるの。」
「何で?」
「ねえ、ギター弾いて。」
マサルも一気に飲み干して、ギターを取った。明菜のドレムは単純だった。単純なせいか心地のいいエイトビートが感じられた。明菜の叩くテンポにのれそうな「スモークオンザウォーター」をマサルは試した。ビデオシステムとシイクロするときよりも自分の音が際立った。明菜のリズムはフィルインもなければ、ユニゾンもなった。ただ、ただ、エイトビートを刻んだ。
 スネアが少し遅れた。それが一拍目と三拍目を長くした。その微妙な遅れが二人で作る拍の長さにグルーブをつけた。マサルはライブインジャパンのフルコーラスを演奏した。エンディングのブレイクはさすがに外したが、明菜は必死で付いていった。
 音の止まった中で二人は余韻に浸った。