マサルはギターを持たなかった。ジミヘンのギターを聴いた。チューニングが完全とはいえないその音色は微妙なチョーキングやハマリングで、その音自体の正確性を問題にしなかった。それのフレーズもノートを外れても気にならない存在感があった。それはエロチックだった。性的興奮にも似た高揚感がマサルをとらえた。マサルが音量を上げた。立ち上がり、キッチンに行こうとした。電話が鳴った。ソファーに戻り受話器を取った。
「はい。」
「下北着いたよー。」
明菜だった。
「凄い音ね。あれ、ジミヘン聞いているのー。」
マサルは音量を下げた。
「ジミヘン知ってるの。」
「アッ、うん、たまに聴くの。」
「へー、びっくりだね。」
「どうして、いいじゃない聴いたって。」
「女の子でジミヘン聴くって、あまり聞いた事ないから・・」
「女の子はベーシティーローラーズでも聴いてればいい、なんて思っているんでしょ。」
「そんなことないよ。」
「ねえ、どこの住んでいるのよ。」
「ここくるの?]
「南口、北口、どっち?」
「南口。」
「ケンタッキーのほう、ロフトのほう?」
「ケンタのほう。」
「解ったわ。茶沢通りで電話するね。」
電話が切れた。切断音が聞こえていた。しばらくそれを聞いていた。けして、昨日のホテルがよかったわけではなかった。けれども期待が何処かにあった。受話器を置き、電話を見ていた。
電話が鳴った。
「ケンタッキーの向かいの本屋の前にいるから、迎えに来てね。」
返事も聞かずに切れた。切断音が鳴っていた。マサルは慌てて着替えた。トランクスも新しいのにした。バスルームで鏡を見て、鍵だけ持って部屋を出た。
マサルは坂を下った。明菜は本屋の前で雑誌を手にしていた。昨日とは違い、赤いコンバースのショートカットと緑と赤、黄色のボーダーのオーバーニーのソックス、チェックの膝上のスカート、胸にフリルの付いたブラウスに淡いピンクのカーデガンというスタイルだった。髪を結い、後ろでまとめ、顔の輪郭がはっきり解った。マサルの目はなぜかオーバーニーのソックスに集中した。昨日の事が頭の中で映像になった。ベッドの上で明菜はソックスを脱いでいなかった。バスルームに消える後姿、黒のオーバーニーのソックスが全裸でいるよりもエロチックだったことを思い出した。フラフラでわけもわからない状況だったのに、それは記憶されていた。突然、股間が反応していた。
マサルは茶沢通りの反対側で止まった。明菜は直ぐに気付き、手を振った。嬉しそうな笑顔が綺麗だった。昨日は顔の表情まで記憶に止めることはできなかった。とその後ろに、ケンタッキーの向こうのパチンコ屋のあたりに、ミサキがいた。マサルは慌てて手招きをした。明菜は車の来るのもかまわず、道路を渡った。クラクションの音が響き渡った。マサルは明菜の手を取ると走った。抱きつこうとした明菜はよろけながら、マサルにつられて走った。チラッとマサルは後ろを見た。ミサキは気付いていないようだった。
「はい。」
「下北着いたよー。」
明菜だった。
「凄い音ね。あれ、ジミヘン聞いているのー。」
マサルは音量を下げた。
「ジミヘン知ってるの。」
「アッ、うん、たまに聴くの。」
「へー、びっくりだね。」
「どうして、いいじゃない聴いたって。」
「女の子でジミヘン聴くって、あまり聞いた事ないから・・」
「女の子はベーシティーローラーズでも聴いてればいい、なんて思っているんでしょ。」
「そんなことないよ。」
「ねえ、どこの住んでいるのよ。」
「ここくるの?]
「南口、北口、どっち?」
「南口。」
「ケンタッキーのほう、ロフトのほう?」
「ケンタのほう。」
「解ったわ。茶沢通りで電話するね。」
電話が切れた。切断音が聞こえていた。しばらくそれを聞いていた。けして、昨日のホテルがよかったわけではなかった。けれども期待が何処かにあった。受話器を置き、電話を見ていた。
電話が鳴った。
「ケンタッキーの向かいの本屋の前にいるから、迎えに来てね。」
返事も聞かずに切れた。切断音が鳴っていた。マサルは慌てて着替えた。トランクスも新しいのにした。バスルームで鏡を見て、鍵だけ持って部屋を出た。
マサルは坂を下った。明菜は本屋の前で雑誌を手にしていた。昨日とは違い、赤いコンバースのショートカットと緑と赤、黄色のボーダーのオーバーニーのソックス、チェックの膝上のスカート、胸にフリルの付いたブラウスに淡いピンクのカーデガンというスタイルだった。髪を結い、後ろでまとめ、顔の輪郭がはっきり解った。マサルの目はなぜかオーバーニーのソックスに集中した。昨日の事が頭の中で映像になった。ベッドの上で明菜はソックスを脱いでいなかった。バスルームに消える後姿、黒のオーバーニーのソックスが全裸でいるよりもエロチックだったことを思い出した。フラフラでわけもわからない状況だったのに、それは記憶されていた。突然、股間が反応していた。
マサルは茶沢通りの反対側で止まった。明菜は直ぐに気付き、手を振った。嬉しそうな笑顔が綺麗だった。昨日は顔の表情まで記憶に止めることはできなかった。とその後ろに、ケンタッキーの向こうのパチンコ屋のあたりに、ミサキがいた。マサルは慌てて手招きをした。明菜は車の来るのもかまわず、道路を渡った。クラクションの音が響き渡った。マサルは明菜の手を取ると走った。抱きつこうとした明菜はよろけながら、マサルにつられて走った。チラッとマサルは後ろを見た。ミサキは気付いていないようだった。