仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

さて、その家のドアを開けるのはⅤ

2009年06月02日 17時40分15秒 | Weblog
 翌日の朝、一番最初にベルを鳴らしたのは清美さんだった。マサルはみなに清美さんを紹介した。
「僕のお姉さんみたいな人なんだ。」
「清美です。よろしくお願いします。」
清美さんはマサルと二人のときとは違い、緊張しているようだった。リビングの荒れた状態をみて、嬉しそうに溜息をつき、さっそく掃除にかかろうとした。
「今日はいいよ。」
「でも・・・・。」
「今日は、千葉に行くんだ。清美さんも来てくれるよね。」
「何時に出発するんですか。」
「十時くらいかな。」
「じゃあ、ちょっとだけ、皆さん、一度、キッチンに行っててください。」
仁とマサミはベッドルームでまだ寝ていた。ハルとマーがリビングで倒れ込んでいた。
「マー、ハル、おきろよ。」
ハルは清美さんに気付くと飛び起きた。マーも驚き、正座した。
「すみません。キッチンへ。」
マサルが手招きをして、三人はキッチンの椅子に座った。清美さんの手際の良さは素晴らしかった。酒瓶と乾き物、タオルケット、吸殻、その他もろもろが散乱していたのを一瞬で一まとめにしてしまった。掃除機の音がした。食器をシンクに運び、もう一度、掃除機の音がすると顔を出した。ほんの十五分くらいでリビングはよみがえった。
「今度はこちらに来てください。」
三人はゾロゾロという感じで場所をかえた。
「マサルさん、何人いるんですか。」
「えっ、今は五人、清美さんも入れて六人。」
「朝ごはん六人分でいいですか。」
「たぶん。いいと思うよ。」
清美さんは朝食の準備が済むとリビングに戻り、寝室に戻すものを取りに来た。
「朝食の準備ができました。」
ハルもマーも緊張していた。
「ありがとう。」
マサルがそういうと立ち上がった。清美さんは部屋の隅にまとめたタオルケットなどをヒョイと持ち上げると寝室に消えた。
「キャー。」
寝室から清美さんの叫び声がした。三人は寝室に駆けつけた。