マサルの音はマサミのを音を追いかけ、追い越し、また、戻り、マサミと絡まった。ヒカルの音はマサミの低音を引き継いだ。自由になったミサキの左手は四人の音に深い響きを重ねていった。音の重なりの中で、ヒデオはマサミの魂に触れた。アキコもその中にいた。涙が溢れ出てきた。ストレートジンを噛むようにして喉に運びながら、ヒデオは涙を拭こうともしなかった。ミサキもハルもその音が魂の嘆きであるように感じた。
突然、ハルがミサキの手を引いた。ハルとミサキは、すでに、マイクのセッティングを自分でできるようになっていた。二人は自分のマイクをセットした。ハルが声を出した。
ジンジンジン、オーイェ-。
ジンジンジン、ウーウァオ-。
ジンジンジン、オーイェ-。
ジンジンジン、ウーウァオ-。
涙目のミサキに目を合わせた。ハルの目がミサキを動かした。ミサキもハルに共鳴し、同調した。ヒカルもハルのエネルギーを感じた。音は同調から新しい方向を目指した。ヒカルはそのフレーズをかえることはなく、ハルのリズムに、ノリに合わせたタッチにニュアンスをかえていった。ヒデオもアキコもその変化に、違和感のない進行に、まるで、蝶の脱皮を見ているかのような美しい変容に驚きと共に感動した。
ハルは、感じていた、その悲しみのエネルギーを、ミサキの深い悲しみのフレーズを。その感情の中に染込んでいく自分をも感じていた。その感傷的な気分の中にいることで自分が慰められることも。同時に、このままでいたら、全てがそこで終わってしまうような恐怖、悲しみの穴に引きずりこまれ、二度と上がれなくなるような恐怖がハルをとらえた。
それに打ち勝つために声は自然と出てきた。マーのスネアがはじけた。マサルも悲しみの中にいた。だから、マサミのフレーズの中で沈み込みたかった。そんなマサルにマサミの変化が勇気を与えた。マーの弾けるスネアの音からマサミも力強い響きへと変容していったのだ。
グルーブが生まれた。
皆が基本的に深くものを考えるタイプではなかった。
グルーブの中でヒデオが動いた。ヒデオもその変容の中に入りたかった。そして
感動している自分自身を表現したかった。
ヒデオは服を脱いだ。引き締まった筋肉質の身体が現れた。音に連動して、筋肉が動いた。ヒデオはアキコに手を差し伸べた。アキコは涙を拭き取り、服を脱いだ。艶やかで女性的な肉体が露わになった。ヒデオはアキコを抱え上げ、その身体をリードした。手を取り、手を引き、抱きしめ、ポーンと空中に投げ上げ、抱きしめた。アキコの身体はまるで操り人形のようにヒデオのリードで舞った。自分では硬くてどうしようもない身体と思い込んでいた身体がすべての力が抜け、全てを託すことで、自分のものとは思えないほど自由に動くのだった。自然と指先が伸び、足先が伸び、身体の線が音と同調し、波打つのだった。
ジンジンジン、オーイェ-。
ジンジンジン、ウーウァオ-。
ジンジンジン、オーイェ-。
ジンジンジン、ウーウァオ-。
音は肉体を支え、肉体が音を導き出した。声は力を、エネルギーを、存在を称えた。皆は今はいない仁と清美さんが彼らにエールを送っているかのような感覚、魂の響きの中にいる自分たちを感じていた。
突然、ハルがミサキの手を引いた。ハルとミサキは、すでに、マイクのセッティングを自分でできるようになっていた。二人は自分のマイクをセットした。ハルが声を出した。
ジンジンジン、オーイェ-。
ジンジンジン、ウーウァオ-。
ジンジンジン、オーイェ-。
ジンジンジン、ウーウァオ-。
涙目のミサキに目を合わせた。ハルの目がミサキを動かした。ミサキもハルに共鳴し、同調した。ヒカルもハルのエネルギーを感じた。音は同調から新しい方向を目指した。ヒカルはそのフレーズをかえることはなく、ハルのリズムに、ノリに合わせたタッチにニュアンスをかえていった。ヒデオもアキコもその変化に、違和感のない進行に、まるで、蝶の脱皮を見ているかのような美しい変容に驚きと共に感動した。
ハルは、感じていた、その悲しみのエネルギーを、ミサキの深い悲しみのフレーズを。その感情の中に染込んでいく自分をも感じていた。その感傷的な気分の中にいることで自分が慰められることも。同時に、このままでいたら、全てがそこで終わってしまうような恐怖、悲しみの穴に引きずりこまれ、二度と上がれなくなるような恐怖がハルをとらえた。
それに打ち勝つために声は自然と出てきた。マーのスネアがはじけた。マサルも悲しみの中にいた。だから、マサミのフレーズの中で沈み込みたかった。そんなマサルにマサミの変化が勇気を与えた。マーの弾けるスネアの音からマサミも力強い響きへと変容していったのだ。
グルーブが生まれた。
皆が基本的に深くものを考えるタイプではなかった。
グルーブの中でヒデオが動いた。ヒデオもその変容の中に入りたかった。そして
感動している自分自身を表現したかった。
ヒデオは服を脱いだ。引き締まった筋肉質の身体が現れた。音に連動して、筋肉が動いた。ヒデオはアキコに手を差し伸べた。アキコは涙を拭き取り、服を脱いだ。艶やかで女性的な肉体が露わになった。ヒデオはアキコを抱え上げ、その身体をリードした。手を取り、手を引き、抱きしめ、ポーンと空中に投げ上げ、抱きしめた。アキコの身体はまるで操り人形のようにヒデオのリードで舞った。自分では硬くてどうしようもない身体と思い込んでいた身体がすべての力が抜け、全てを託すことで、自分のものとは思えないほど自由に動くのだった。自然と指先が伸び、足先が伸び、身体の線が音と同調し、波打つのだった。
ジンジンジン、オーイェ-。
ジンジンジン、ウーウァオ-。
ジンジンジン、オーイェ-。
ジンジンジン、ウーウァオ-。
音は肉体を支え、肉体が音を導き出した。声は力を、エネルギーを、存在を称えた。皆は今はいない仁と清美さんが彼らにエールを送っているかのような感覚、魂の響きの中にいる自分たちを感じていた。