仁は不思議だった。皆を圧倒する力を持っていながら、その一瞬が過ぎると気の弱い、人の良さそうな雰囲気になってしまうのだ。かつて渋谷のスペイン坂で見せた危険な雰囲気も消えていた。考えてみると普段の仁を知る人はマサミくらいだった。マサミの話からすると、秀ちゃんの堕胎から仁の雰囲気が変わった。マサミには普段の仁が仁そのものであるように感じられた。だから、仁の力もその仁の一部と思えた。清美さんの出現はマサミにも何か、気持ちの上で整理がつかないものを生んでいた。
その家の間取りの確認とどこが使えて、どこがつかえないか、ヒデオとヒカルが中心に検討した。マーとハルはヒデオとヒカルを手伝った。アキコはマサミとミサキと三人で家の周りを探索した。家に入るとき以外は仁は庭出たり、ヒョイヒョイと梁に上ったり、子供のようにはしゃいでいた。
マサルは清美さんを連れ出した。誰も二人の行動を気にしなかった。家の裏手に土手があった。土手を登ると江戸川が直ぐそこだった。マサルの右手が清美さんの前に出てきた。清美さんはためらいがちにマサルの手に左手をのせた。
「同じだね。」
「えっ。」
「清美さんの手の感触はかわらない。さっき仁さんとの接触で清美さんが違う人のように思えたから。」
「マサルさん。」
「いいよ。仁さんとのことは・・・話さなくても。」
「はい。」
「ほんとはハルとマーを紹介しようと思ってたんだ。」
「はい。」
「なんか、ヒデオさんとのからみで千葉行きになっちゃったけど。」
「はい。」
「清美さん、一人じゃないって気づいていたでしょ。」
「ええ。」
「仁さんとマミちゃんが増えそうだったから、その前に清美さんに言っておきたかったんだ。でも、また新しい展開になりそうだけど。」
「マサルさん。私もお話したいことがありました。」
「なに。」
「ええ、運転手の末吉さんが辞められて、今度、息子さんが来ることになったんです。」
「そう。」
「それで、旦那様が息子さんを気に入られて・・・・・」
「どうしたの。」
「息子さん、工場で働いていたんですけど、事故にあわれて、退職されていたんです。それで、末吉さんがやめて、代わりに・・・・」
「そうなの。」
「この前、お家に来られて、旦那様が気に入られて、独身と聞いたら・・・・」
「なんなの。」
「私と結婚しないかって・・・」
「どういうこと。」
「ええ、私もずっと、お世話になっていて。世間のことは知りませんし。旦那様も気にしてくれていたようなんです。」
「結婚するの。」
「はい・・・直ぐというわけはないんですけど。」
マサルは寂しい気持ちになっていた。
「おめでとう。」
マサルは清美さんの手をグッと握った。清美さんもその手を握り返した。二人は河原に降りた。背の高い草の間にぽかんと空いた場所があった。そこに腰を下ろした。座るとまわりからは死角になった。手を離し、マサルは空を見ながら寝そべった。
「みんな、元気。」
マサルは気のない質問をした。
「はい、奥様は、最近、お庭の手入れが気に入ったようで・・・マサルさん、旦那様はお優しい方ですよ。」
「何、突然。」
「私のことまで気にかけてくれて。」
「その息子さんのこと好きなの。」
「好き・・・・そんなこと考えたこともありませんでした。」
「好きな人じゃなくても結婚するんだ。」
「はい。」
「ねえ、清美さんがこなくなったら、今まで見たいにできなくなるのかなあ。」
「すぐにと言うわけではありませんから。」
マサルは横に座っていた清美さんを押し倒した。
その家の間取りの確認とどこが使えて、どこがつかえないか、ヒデオとヒカルが中心に検討した。マーとハルはヒデオとヒカルを手伝った。アキコはマサミとミサキと三人で家の周りを探索した。家に入るとき以外は仁は庭出たり、ヒョイヒョイと梁に上ったり、子供のようにはしゃいでいた。
マサルは清美さんを連れ出した。誰も二人の行動を気にしなかった。家の裏手に土手があった。土手を登ると江戸川が直ぐそこだった。マサルの右手が清美さんの前に出てきた。清美さんはためらいがちにマサルの手に左手をのせた。
「同じだね。」
「えっ。」
「清美さんの手の感触はかわらない。さっき仁さんとの接触で清美さんが違う人のように思えたから。」
「マサルさん。」
「いいよ。仁さんとのことは・・・話さなくても。」
「はい。」
「ほんとはハルとマーを紹介しようと思ってたんだ。」
「はい。」
「なんか、ヒデオさんとのからみで千葉行きになっちゃったけど。」
「はい。」
「清美さん、一人じゃないって気づいていたでしょ。」
「ええ。」
「仁さんとマミちゃんが増えそうだったから、その前に清美さんに言っておきたかったんだ。でも、また新しい展開になりそうだけど。」
「マサルさん。私もお話したいことがありました。」
「なに。」
「ええ、運転手の末吉さんが辞められて、今度、息子さんが来ることになったんです。」
「そう。」
「それで、旦那様が息子さんを気に入られて・・・・・」
「どうしたの。」
「息子さん、工場で働いていたんですけど、事故にあわれて、退職されていたんです。それで、末吉さんがやめて、代わりに・・・・」
「そうなの。」
「この前、お家に来られて、旦那様が気に入られて、独身と聞いたら・・・・」
「なんなの。」
「私と結婚しないかって・・・」
「どういうこと。」
「ええ、私もずっと、お世話になっていて。世間のことは知りませんし。旦那様も気にしてくれていたようなんです。」
「結婚するの。」
「はい・・・直ぐというわけはないんですけど。」
マサルは寂しい気持ちになっていた。
「おめでとう。」
マサルは清美さんの手をグッと握った。清美さんもその手を握り返した。二人は河原に降りた。背の高い草の間にぽかんと空いた場所があった。そこに腰を下ろした。座るとまわりからは死角になった。手を離し、マサルは空を見ながら寝そべった。
「みんな、元気。」
マサルは気のない質問をした。
「はい、奥様は、最近、お庭の手入れが気に入ったようで・・・マサルさん、旦那様はお優しい方ですよ。」
「何、突然。」
「私のことまで気にかけてくれて。」
「その息子さんのこと好きなの。」
「好き・・・・そんなこと考えたこともありませんでした。」
「好きな人じゃなくても結婚するんだ。」
「はい。」
「ねえ、清美さんがこなくなったら、今まで見たいにできなくなるのかなあ。」
「すぐにと言うわけではありませんから。」
マサルは横に座っていた清美さんを押し倒した。