「ベース」に移り住んだのは宿無しの三人とヒデオ、アキコ、ヒカル、ミサキだった。ヒデオとヒカルの現場は遠くは小山、前橋あたりまでお呼びがかかった。朝は早かった。アキコは「ベース」への移住が決まった段階で職場を退職し、市川市内の開業医の病院に職場を移した。
マサルは通いということになった。リビングの機材が全てなくなったことを森口さんに問いただされ、返答に困ったマサルは売ったと言ってしまった。何に使った。金が足りないのか。音楽は飽きたのか。森口さんの質問攻めが始まり、マサルは閉口した。そんなこんなで一様、大学にいくというたてまえ上、下北に住み、週末に「ベース」に出かけた。
森口さんは母親よりマサルを心配していた。森口さんは清美さんとは違い、電話もなく、マサルの部屋に現れた。平日だったが、マサルがまだ寝ている時間に来るのだった。時々、独り言のように清美さんはいい子だった、どこに行ってしまったのだろう、結婚などすすめなければよかった、ともらした。
「マサルさん、ほんとうに知らないのですか。清美のこと。」
いつも、最後に、マサルに聞いた。マサルは苛立ち、何も言わなかった。
「学校の時間じゃないですか。」
マサルの気分など、ものともせずにつぎの言葉が飛び出した。森口さんにはかなわなかった。
「ベース」の庭に畑ができた。
最も熱心だったのがミサキだった。図書館に出かけ、農業の本をかり、近くの農家に出向き、いらなくなった農機具を分けてもらい、種まきの時期、その地に適した野菜を教えてもらい、手作業で畑を作り始めた。自分にそんなことができるとは思ってもいなかった。が、そうした行為が地域の人たちとの交流を可能にした。大規模な改修工事を横目で見ていた地域の人々はミサキの人柄、熱心さに心を開き、「ベース」自体を完全にではないが受け入れてくれるようになった。
「ベース」は誰が何をやるということは決まっていなかった。ただ、ミサキ、ヒカル、ヒデオのストイックな生活態度に後の者も少しづつ変化していった。
農作業を面白がったのはハルとマーだった。肉体労働などしたら、壊れてしまいそうなミサキを見て、彼らは不思議だった。むしろそれを遊びの感覚にしてしまう二人が参加することで作業は楽しいものになった。時として、邪魔をしているのではないかという時もあったのだが。
マサルは通いということになった。リビングの機材が全てなくなったことを森口さんに問いただされ、返答に困ったマサルは売ったと言ってしまった。何に使った。金が足りないのか。音楽は飽きたのか。森口さんの質問攻めが始まり、マサルは閉口した。そんなこんなで一様、大学にいくというたてまえ上、下北に住み、週末に「ベース」に出かけた。
森口さんは母親よりマサルを心配していた。森口さんは清美さんとは違い、電話もなく、マサルの部屋に現れた。平日だったが、マサルがまだ寝ている時間に来るのだった。時々、独り言のように清美さんはいい子だった、どこに行ってしまったのだろう、結婚などすすめなければよかった、ともらした。
「マサルさん、ほんとうに知らないのですか。清美のこと。」
いつも、最後に、マサルに聞いた。マサルは苛立ち、何も言わなかった。
「学校の時間じゃないですか。」
マサルの気分など、ものともせずにつぎの言葉が飛び出した。森口さんにはかなわなかった。
「ベース」の庭に畑ができた。
最も熱心だったのがミサキだった。図書館に出かけ、農業の本をかり、近くの農家に出向き、いらなくなった農機具を分けてもらい、種まきの時期、その地に適した野菜を教えてもらい、手作業で畑を作り始めた。自分にそんなことができるとは思ってもいなかった。が、そうした行為が地域の人たちとの交流を可能にした。大規模な改修工事を横目で見ていた地域の人々はミサキの人柄、熱心さに心を開き、「ベース」自体を完全にではないが受け入れてくれるようになった。
「ベース」は誰が何をやるということは決まっていなかった。ただ、ミサキ、ヒカル、ヒデオのストイックな生活態度に後の者も少しづつ変化していった。
農作業を面白がったのはハルとマーだった。肉体労働などしたら、壊れてしまいそうなミサキを見て、彼らは不思議だった。むしろそれを遊びの感覚にしてしまう二人が参加することで作業は楽しいものになった。時として、邪魔をしているのではないかという時もあったのだが。