仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

さて、その家のドアを開けるのはⅦ

2009年06月04日 17時15分40秒 | Weblog
仁はベッドの上でブルンと震えた。
「仁ちゃん、起きて。」
頭を振り、仁が起き上がった。全裸であること。背後に人の気配がすること。仁は恥ずかしそうに振り向いた。
「オ、オ、オ、おはよう。」
そのしぐさに皆が噴き出した。清美さんも笑っって仁のほうを見た。仁はすまなそうに身体を丸め、向き直って座った。

 この時、それが始まった。
それは、清美さんと仁の目が合ったときだった。薄くすまなそうに開いていた仁の瞳がカッと開いた。その視線が清美さんの目を捉えた。清美さんも恐る恐る仁を見ていた瞳が変わった。そして、仁の視線と重なった。清美さんの目もカッと開いた。ハルの手をすり抜けるようにして清美さんが立ち上がった。

グリシュラ、シュクナ、ヘクナ、ヒラ
トリューシュ、ヘクナ、サラビナシュ、ヘナ

リヴェリ、ホエ、キンゴ、クラリュイネ、スマシュ、ラベ、キュエンゴ
リヴェリ、ホエ、リヴェリ、ホエ、リヴェリ、ホエ、リヴェリ、ホエ、

ハイダ、リヴェリオ、ハイダ、キュリンガ
ホセ、フウオー

 二人の声は完全なユニゾンだった。声の質、音程は違うものの、ひとつのタイミングの狂いもなかった。今度は周りの四人が緊張した。仁の背筋が伸び、肩が開き、組まれた足の上に手をのせ、座禅をしているような姿は僧侶のようだった。清美さんも手を胸の前で合掌し、仁を見つめていた。空気が変わった。マサルが驚きと恐怖を感じながら叫んだ。
「キヨミサン。」
その声は二人の間に流れたいた電流を遮断した。仁はフッと我に返り、恥ずかしそうに目覚めた時の仁に戻った。清美さんも周りを気にしながらオロオロし始めた。
 どうしたらこの状況が変わるのだろう。皆、同じ気持ちだった。ベルの音がした。
マサルはベッドを飛び降り、玄関に向かった。
「おはよう。」
ヒデオの元気な声がした。