階段を降りた。鉄ドアを開けると金子さんの店とは違って、ハデだった。広かった。トイレの奥に事務所があった。都心に比べると全体にスペースのとり方に余裕があった。入り口からいかにもパンクといった格好の女子が案内してくれた。
「シャッチョー、お客さんだよ。」
「オオ、オオ。」
事務机の向こうから声がした。ムクッと顔がでてきた。鬚もじゃの顔にレイバン系のサングラスを掛けた大男だった。頭だけが出ていた。
「美幸チャン、ドア開ける前にノックしてよ。」
「金子さんの紹介で・・・・。」
「アー、マー君だったっけ。ちょっと、ドアの外で待ってくれるかな。」
ドアの外で待っていると乳房が覗きそうなギザギザに引き裂かれたティーシャツにジーンズを切ったホットパンツ、鼻と頬にピアスを刺した女子がマーたちを押しのけるようにして飛び出してきた。細身だがバストはティーシャツを大きく押し上げ、尻のラインはほっとパンツからくっきりとのぞいていた。エロチックな体型の子だった。続いてドアが開き大男が言った。
「お待ちどうさま。どうぞ。」
事務机の向こうにはソファーがあった。案内され、座った。甘い臭いがしていた。
「マーです。それとギターのマサルです。」
「昭雄です。テープもってきたんでしょ。」
「ハイ。」
受け取ると壁際にセットされているコンポーネントステレオのデッキに入れた。音が始まった。
「金子さんの紹介だから、心配してないけど。うちは新人バンドは日曜の夜か、月曜に出てもらうことになっているんだよ。」
音を聞いているのかいないのか、解らなかった。
「ノルマもそんなにはけないんだろ。」
「はあ。」
「一番近いところで来月の頭の日、月は空きがあるからその辺でどう。」
「えっ、出れるんで、いや、出していただけるんですか。」
「金子さんの新しいボーイフレンドを断るわけにいかないでしょ。」
「そ、それは・・・・。」
「金子さん、いい子がいるんだって、べた褒めしてたよ。」
「そうなんですか。」
「ああ、ウチはね、新人バンドは完全ノルマ制なんだ。千五百円のチケットで四十枚ね。それ以上は全部バックだから・・・・、金子さんの紹介だし、三十でいいよ。面子多いんでしょ。割ったらバック出るよ。」
「はい・・・・。」
「チケット売るときにワンドリンク分別にかかるって言っておいてよ。最低で四百円。いい。」
「はい。」
「で、どうする。日曜か、月曜か。」
「今日決めるんですか。」
「なに、言ってるんだよ。直ぐに埋まっちゃうよ。いいの。」
マーはマサルの顔を見た。声を出さずにマサルの口がニ、チと動いた。
「じゃあ、日曜日。」
「うーと、二日の日曜、出番は最初か、ラストになるけどいいね。それと機材持込もできるけど、ドラムはウチの使ってよ。あ、機材表あるから、有料だけど、楽器だけ持ってくればできるからいいでしょ。」
ノックの音がした。さっきの女子がコーヒーを持ってきた。
「飲んで。」
「いただきます。」
「早紀、スケジュール表に入れといて、二日の日曜、ビーエスエイトね。」
返事もなく女子は白板に青いペンで記入した。刺すような視線をマサルは感じた。女子はドアの前で振り向いた。昭雄さんに見えないようにしながら、マサルを見た。女子は舌を唇にそって一周させた。マサルはじっと女子を見つめた。欲しそうな目で睨みつけるとフンという感じで振り向き、ドアをバタンと閉めた。
「ありがとうございます。でもなんで・・・・。」
「金子さんから情報は入ってるから。」
昭雄さんは立ちあがるとデッキからテープを取り出し、マーのほうに差し出した。
「もう、いいんですか。」
「レベルは解ったから、いいよ。」
「そうですか・・・・。よろしくお願いします。」
マーは立ち上がって、頭を下げた。マサルも慌てて立ち上がり、頭を下げた。
「あ、言い忘れたけど、持ち時間はセッティング込みで四十分ね。そのサイズでリハしといて。」
「解りました。失礼しま・・・」
「コーヒー、飲んでいってよ。ウチの意外と旨いよ。ドリップだから。」
「はい、いただきます。」
「その日は早紀と美幸もタイバンだからよろしく。」
昭雄さんは店の自慢をした。ウチからメジャーデビューさせたいんだ、とも言っていた。飲み終わると二人はもう一度、頭を下げて、事務所を出た。
鉄ドアの前の受付カウンターに早紀と美幸がいた。挑発的な目で二人を見た。マーがジーと早紀を見ながら近づいた。美幸の握りこぶしがマーの腹に入った。
「何すんだよ。」
「タイバンよろしくね。」
反撃をしようとするマーをマサルが抑えた。
「ああ、よろしくな。」
そういうと店を出た。
「シャッチョー、お客さんだよ。」
「オオ、オオ。」
事務机の向こうから声がした。ムクッと顔がでてきた。鬚もじゃの顔にレイバン系のサングラスを掛けた大男だった。頭だけが出ていた。
「美幸チャン、ドア開ける前にノックしてよ。」
「金子さんの紹介で・・・・。」
「アー、マー君だったっけ。ちょっと、ドアの外で待ってくれるかな。」
ドアの外で待っていると乳房が覗きそうなギザギザに引き裂かれたティーシャツにジーンズを切ったホットパンツ、鼻と頬にピアスを刺した女子がマーたちを押しのけるようにして飛び出してきた。細身だがバストはティーシャツを大きく押し上げ、尻のラインはほっとパンツからくっきりとのぞいていた。エロチックな体型の子だった。続いてドアが開き大男が言った。
「お待ちどうさま。どうぞ。」
事務机の向こうにはソファーがあった。案内され、座った。甘い臭いがしていた。
「マーです。それとギターのマサルです。」
「昭雄です。テープもってきたんでしょ。」
「ハイ。」
受け取ると壁際にセットされているコンポーネントステレオのデッキに入れた。音が始まった。
「金子さんの紹介だから、心配してないけど。うちは新人バンドは日曜の夜か、月曜に出てもらうことになっているんだよ。」
音を聞いているのかいないのか、解らなかった。
「ノルマもそんなにはけないんだろ。」
「はあ。」
「一番近いところで来月の頭の日、月は空きがあるからその辺でどう。」
「えっ、出れるんで、いや、出していただけるんですか。」
「金子さんの新しいボーイフレンドを断るわけにいかないでしょ。」
「そ、それは・・・・。」
「金子さん、いい子がいるんだって、べた褒めしてたよ。」
「そうなんですか。」
「ああ、ウチはね、新人バンドは完全ノルマ制なんだ。千五百円のチケットで四十枚ね。それ以上は全部バックだから・・・・、金子さんの紹介だし、三十でいいよ。面子多いんでしょ。割ったらバック出るよ。」
「はい・・・・。」
「チケット売るときにワンドリンク分別にかかるって言っておいてよ。最低で四百円。いい。」
「はい。」
「で、どうする。日曜か、月曜か。」
「今日決めるんですか。」
「なに、言ってるんだよ。直ぐに埋まっちゃうよ。いいの。」
マーはマサルの顔を見た。声を出さずにマサルの口がニ、チと動いた。
「じゃあ、日曜日。」
「うーと、二日の日曜、出番は最初か、ラストになるけどいいね。それと機材持込もできるけど、ドラムはウチの使ってよ。あ、機材表あるから、有料だけど、楽器だけ持ってくればできるからいいでしょ。」
ノックの音がした。さっきの女子がコーヒーを持ってきた。
「飲んで。」
「いただきます。」
「早紀、スケジュール表に入れといて、二日の日曜、ビーエスエイトね。」
返事もなく女子は白板に青いペンで記入した。刺すような視線をマサルは感じた。女子はドアの前で振り向いた。昭雄さんに見えないようにしながら、マサルを見た。女子は舌を唇にそって一周させた。マサルはじっと女子を見つめた。欲しそうな目で睨みつけるとフンという感じで振り向き、ドアをバタンと閉めた。
「ありがとうございます。でもなんで・・・・。」
「金子さんから情報は入ってるから。」
昭雄さんは立ちあがるとデッキからテープを取り出し、マーのほうに差し出した。
「もう、いいんですか。」
「レベルは解ったから、いいよ。」
「そうですか・・・・。よろしくお願いします。」
マーは立ち上がって、頭を下げた。マサルも慌てて立ち上がり、頭を下げた。
「あ、言い忘れたけど、持ち時間はセッティング込みで四十分ね。そのサイズでリハしといて。」
「解りました。失礼しま・・・」
「コーヒー、飲んでいってよ。ウチの意外と旨いよ。ドリップだから。」
「はい、いただきます。」
「その日は早紀と美幸もタイバンだからよろしく。」
昭雄さんは店の自慢をした。ウチからメジャーデビューさせたいんだ、とも言っていた。飲み終わると二人はもう一度、頭を下げて、事務所を出た。
鉄ドアの前の受付カウンターに早紀と美幸がいた。挑発的な目で二人を見た。マーがジーと早紀を見ながら近づいた。美幸の握りこぶしがマーの腹に入った。
「何すんだよ。」
「タイバンよろしくね。」
反撃をしようとするマーをマサルが抑えた。
「ああ、よろしくな。」
そういうと店を出た。