仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

純ケツを捧げよとは言わないがⅤ

2009年07月17日 13時22分18秒 | Weblog
 階段を上がり、歩道に出たところで二人は後ろからいきなり、体当たりをくらった。バランスを崩し、倒れそうになった。持ち直して、振り向くと美幸がいた。
「忘れ物だよ。」
大き目の封筒を突き出した。
「何。」
「チケットだよ。もうそんなにないから今日から売らないとハケないよ。」
マーは右手で受け取り、左手の人差し指を美幸の乳房の輪郭に沿ってスーっと走らせた。
「アン。」
美幸は両手でバストを覆い、腰を引いた。
「何すんのよ。」
「タイバンよろしくな。」
「もう。」
また、プイッという感じで振り向くと店のほうに走った。
「チケットありがとねー。」
マサルが叫んだ。美幸は、振り向くといたずらっぽい目でマサルを見て、投げキッスをした。マサルも送り返した。
「何だよ。アイツ。」
マーがいった。
 少し離れた場所にベンベーを止めていた。歩きながらマサルがいった。
「ライブできるのか。」
「ああ。」
「金子さんって何者なんだ。」
「俺もよく、知らない。でも・・・金子さんの関係でいろんな人の名前を聞いたことがあるよ。」
「ふうん。」
会話は終わった。マサルはそれ以上聞かなかった。車の中でマーは独り言のように話し出した。
「あの店も同じかな。」
「何が。」
「ライブハウスさ。」
「わかんないよ。」
「ハルは前のバンドの時みたいな。ライブを期待してるのかな。」
「なんだよー。」
「店が客を持ってるわじゃないんだよ。」
「悪い、完全にそっち方面は素人だから、わかるように話してくれよ。」
「ライブハウスはバンドのノルマで儲かってんだよ。だから、客を集めるのも、宣伝も、自分らでやるんだよ。」
「そんなもんか。」
「だから、バンドなんてどんなのでもいいんだよ。金さえ払ってくれれば。」
「マー、あの子達のこといっているのか。」
「いや、そうじゃないけど。」
「聞いてみなけりゃわからない。あいつらの音だって。」
マーは黙った。
「僕は嬉しいよ。人前で演奏するなんてことなかったから。」
「えッほんとか。」
「ああ。いつも一人だった。」
「信じられない。でも・・・。」
「でもなんだよ。」
「自分らで客呼べなかったら、たぶん、客はいないと思う。」
「ふうん。」
沈黙。マーが音のテープをカーステレオに入れた。
「マー、おまえ、すごいぜ。」
「何が。」
「このテープさ。聞いてて、ほんとに自分らが演奏してるのかって、思うよ。」
「演奏してるんだよ。」
「今回、ライブのことで頑張ったから、何か、物足りないのかも知れ泣けど、いいじゃん、やってみようよ。」
「それはいいんだけど・・・・・ちょっと昔のバンドのことを思い出して・・・。」
「なに・・・・。まあ、いいよ。経験者には経験者の思うところがあるんだろうけど、今回は、ここから始めようぜ。」
「ああ。」