仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

それがライブというものさⅢ

2009年07月27日 16時59分28秒 | Weblog
 マーが吹っ切れると後は簡単だった。集中を切らさないように演奏を続けることがリハーサルの中心になった。それでもスタートには時間がかかった。集中していてもその場の気分で音を出すことはなく、お互いを意識しながら、最初の一音を選んだ。一音、誰から始めるということは決めなかった。その日、一番、感じている誰かが、一音を発した。時に、スタートまで、十分もかかることもあった。でも、マーは何も言わなかった。それはビーエスエイトに必要な時間なのだと思うようになった。
 ただ、時間に制限があるライブ、エンディングについてはマーの提案が受け入れられた。マーはドラムスの横にヒデオに台を作ってもらい目覚まし時計を置いた。そこにマイクをセットし、始まってから大体、三十分でなるようにした。目覚まし時計の音がなると、ヴォイスが仁のテーマを歌い始め、楽器の人間から一人づつ、音から離れた。ヒデオとアキコはその音にハッという感じで反応し、動きを止めた。そのままのポーズで、音がヴォイスだけになるのを待った。ハルとミサキが最後にマイクを離れ、ヒデオとアキコをストップモーションから開放した。
 一日、一度のリハーサルが限界だった。激しい集中の後、倒れこむように各自、眠りについた。

 問題があった。ヒデオとアキコが全裸なることだった。アキコは全裸になることでリープできた。トランスに入れた。ヒデオも全裸になることで跳べた。だが、ライブで全裸はどうか、ということになった。
 そんな中、ハルがマーの荷物の中から、エロ本を見つけてきた。「ベース」にきてから一度もあけていない荷物の中にあった。その通販の広告の中からボディーストッキングを見つけた。販売元は五反田にあった。
 次の日、マーとマサルが五反田に出かけた。男性用と女性用を一枚ずつ、買ってきた。その夜、早速、ヒデオとアキコが試着した。それは全裸よりもエロチックな感じがした。極部が際立った。そこで墨で極部を塗りつぶした。もちろんアキコの乳首も塗った。なぜだろう。普通の時なら、かなり抵抗がありそうなことなのに、ライブを前にすると羞恥心が消えていた。
 まあ、この時は、ヒデオもアキコも一人で着ることはできず、皆で英語の説明書を見ながら、やっとのことで装着したのだが。
 アキコの体型は完全に変わっていた。引き締まり、筋肉質になっていた。ボディーストッキングに締め付けられても、というよりも、それを跳ね返すように体のラインが際立った。
 そのスタイルでリハーサルを始めた。なぜか、いつもより、エロチックな演奏になった。