マーは苛立ち、ルームをでた。マサルが追いかけた。独り言のようにマーが言った。
「同じ演奏が・・・・同じ演奏ができなかったら、客には伝わらない。」
「マー。」
「曲の雰囲気が違っただけで、客は理解できなくなるんだ。」
マサルはそれ以上何も言わなかった。
次の日、マーはルームに入らなかった。マーが入らないことで皆が楽器の前で止まってしまった。時間が過ぎた。ハルは涙をこぼした。こぼしながら、マイクを取った。
ジンジンジン、オーイェ-。
ジンジンジン、ウーウァオ-。
「ベース」が完成したとき、仁と清美さんの幻影を見たとき、自然と始まったヴォイスが泣き声の中から、しぼりだされた。ハルは自分の言葉がこの違和感を作ってしまったと思った。だから、悲しかった。仁に捧げる歌を、魂の支えとしての仁を自分の言葉で感じたかった。
その気持ちが皆に伝わった。気持ちがつながれば、後は簡単だった。ハルと同調する音が始まった。ミサキのヴォイスがハルのヴォイスと絡んだ。二人の絡みにベースが答えた。ベースが決まれば、全てが決まった。マーは二重ガラスから振動として伝わる音を感じていた。
これでいいのか。
ライブを愛していたマーはライブを恐れていた。
ニュアンス変えない。ビートをかえない。テンポを保て。
同じ演奏ができなければ客は覚えてくれない。
一曲、一ノリ、一メッセージ。
客は自分らの曲を知らない。だから、二度目も同じインパクトを、あるいはそれ以上のインパクトを与えなければ、ついてこない。
マーはライブが決まってから、かつて、タイバンで一緒になった集客力もあり、知名度も拡がりつつあったサーサスのヴォーカルの幸弘の言葉が頭でなっていた。そのときは別に関係ないと思っていたのだが・・・・・
喉に引っ掛かった棘のようにマーを苛立たせた。それだけ、マーは今度のライブを重要だと考えていたのだろう。
が、ハルを支えようとする音の渦をガラス越しにマーは感じた。
そうだ。いいんだ。
マーはまだ、全裸になれないヒデオとアキコを見た。マーはルームのドアを開けた。
「同じ演奏が・・・・同じ演奏ができなかったら、客には伝わらない。」
「マー。」
「曲の雰囲気が違っただけで、客は理解できなくなるんだ。」
マサルはそれ以上何も言わなかった。
次の日、マーはルームに入らなかった。マーが入らないことで皆が楽器の前で止まってしまった。時間が過ぎた。ハルは涙をこぼした。こぼしながら、マイクを取った。
ジンジンジン、オーイェ-。
ジンジンジン、ウーウァオ-。
「ベース」が完成したとき、仁と清美さんの幻影を見たとき、自然と始まったヴォイスが泣き声の中から、しぼりだされた。ハルは自分の言葉がこの違和感を作ってしまったと思った。だから、悲しかった。仁に捧げる歌を、魂の支えとしての仁を自分の言葉で感じたかった。
その気持ちが皆に伝わった。気持ちがつながれば、後は簡単だった。ハルと同調する音が始まった。ミサキのヴォイスがハルのヴォイスと絡んだ。二人の絡みにベースが答えた。ベースが決まれば、全てが決まった。マーは二重ガラスから振動として伝わる音を感じていた。
これでいいのか。
ライブを愛していたマーはライブを恐れていた。
ニュアンス変えない。ビートをかえない。テンポを保て。
同じ演奏ができなければ客は覚えてくれない。
一曲、一ノリ、一メッセージ。
客は自分らの曲を知らない。だから、二度目も同じインパクトを、あるいはそれ以上のインパクトを与えなければ、ついてこない。
マーはライブが決まってから、かつて、タイバンで一緒になった集客力もあり、知名度も拡がりつつあったサーサスのヴォーカルの幸弘の言葉が頭でなっていた。そのときは別に関係ないと思っていたのだが・・・・・
喉に引っ掛かった棘のようにマーを苛立たせた。それだけ、マーは今度のライブを重要だと考えていたのだろう。
が、ハルを支えようとする音の渦をガラス越しにマーは感じた。
そうだ。いいんだ。
マーはまだ、全裸になれないヒデオとアキコを見た。マーはルームのドアを開けた。