予想された事だが、トランプは吠えた。
ズラを剥ぎ取られたハゲ爺の如く狂った様に吠え捲った。
ゼレンスキー大統領との首脳会談でも、事実上のドクターストップが掛かり、トランプは切れ捲ったが、今回は先の首脳会談の倍にあたる100分に渡り、吠え続けた。
「ゼレンスキーの正論」に寄せられたコメントにある様に、”アメリカンドリームの復活”とか”黄金時代の幕開け”とかホザくが、(関税対策だけでも)世界中から総スカンされるのは確定した様なもんである。
事実、トランプの強引な関税対策により、アメリカ経済を支えてきた自由貿易は破綻し、飾り立てた上辺だけの民主主義は破綻し、結果、世界から孤立し絶滅の道を辿るのだろう。
まさに、繁栄どころか衰退、アメリカンドリームどころか悪夢の展開である。
世界中が老いたトランプ帝国を見捨てる時、超大国による力の論理が1つ消え去る。アメリカの様な超大国の衰退こそが、世界にとって新たな時代の幕開けになる事は、”秩序なき世界”と見れば矛盾してる様だが、今や人類に託された希望の1つでもある。
それに少なくとも、戦時の独裁者の様な演説だけは聞きたくなかった。
以下、NHKWEBやBBCの記事を参考に今回の大統領演説を大まかに纏めます。
繁栄か衰退か?誇りか悪夢か?
”我々は43日間で、殆どの政権が4年又は8年で達成した以上の成果を上げた。そしてこれは始まりに過ぎない”と語り、トランプは独特の誇張表現を交え、”多くの人々が(自分の政権について)アメリカ史上最も素晴らしいスタートを切ったと見なしている”と述べた。また、”アメリカの精神が誇りと自信に変わった。そしてアメリカンドリームはこれまで以上に大きく膨れ上がり、誰も止める事はできない”とし、初代大統領のJ・ワシントンに自らの偉業をなぞらえ、バイデンを”史上最悪の大統領”とこき下ろす。
更に、殆どのの経済学者がインフレを招くと警告してるにも関わらず”関税がこの国の魂を守る”と胸を張り、”関税はアメリカを再び豊かにし再び偉大にする”と言い放つが、楽観的もここまで来ると狂信に近い。
事実、連邦政府機関の人員削減では多くの物議を醸しだし、強引な関税対策に手は既に多くの国々から反発を買い、カナダやメキシコや中国からは”これは貿易戦争だ”と抗議され、全面衝突に突入する勢いである。更に、ロシア=ウクライナ戦争を巡る和平交渉や援助では欧州との同盟関係に亀裂が入り、パレスチナ・ガザ地区についても”再開発”案を示したが、早くもアラブ諸国の反発を招いた。
一方で、ゼレンスキーからの(鉱物資源や安全保障をめぐる合意について)”いつでも署名する用意がある”との書簡はトランプを勇気づけ、”ヨーロッパはウクライナの防衛に費やした金額よりも、ロシアの石油とガスを購入した金額の方が遥かに多い。そして、バイデンはヨーロッパが費やした以上の資金をこの戦争に使ってしまった”とデタラメ?に近いデータを引用して勢いづく。
勿論、野党民主党も黙ってはいない。
スロトキン上院議員は反対演説で”国民は変化を求めたが、責任ある方法と無謀な方法がある”と忠告し、外交や安全保障政策を巡っても”トランプ大統領は<力による平和>という言葉を好んで使う。これは故レーガン大統領も使ったが、本当の強さは軍事力や経済力と共にモラルが必要な事を理解していた。1980年代にレーガンが大統領だった事に感謝する。もしトランプなら冷戦に負けていただろう”と返した。更に、”トランプ氏はプーチンの様な独裁者にすり寄る一方で、カナダの様な友人を蹴落としている”とも非難した。
この彼女のコメントには、英国BBCも”トランプ氏よりも遥かに簡潔で落ち着いた演説を行った”と高く評価し、彼女の反対演説の詳細を紹介したが、以下に紹介する。
彼女は”トランプ氏が億万長者の友人たち(ロシアのオリガルヒ)への前例のない贈り物を行った”と非難し、”彼は我々を不況に導く可能性がある”と警告。マスク氏が主導するDOGEにも言及し、変革は必要だが”混乱を招き安全性を低下させる必要はない”と斬り捨てた。
インフレ対策にても、”食料品や住宅の価格は逆に上がっており、大統領はどちらにも対処できる計画を示していない”と指摘し、(民主党が支持を得られない)移民対策においても”壊れた移民制度を修正する事なく国境を管理するのは、症状に対処してるだけで病気を治してる訳でない”と釘をさす。
また、ゼレンスキー氏との会談にも触れ、”破局の場面はリアリティ番組の悪いエピソードではなかったし、それはトランプ大統領の世界へのアプローチ全体を要約したものに過ぎなかった”と破綻の本質を述べた。
因みに、CIAにアナリストとして勤務していたスロットキン氏は昨年、激戦州のミシガンで上院議員に当選。48歳での当選は民主党の女性上院議員としては最年少だった。但し、昨年の大統領選で民主党候補だったハリス前副大統領がミシガン州で敗北した事を考えると偉業とも言える。
また、民主党のシューマー院内総務は、彼女を党の反論役に選んだ際、”党の新星”と称賛し”経済と国家安全保障の両方のトピックで優れている”と評価していた。
ハッタリとイカサマの主張の果てに
一方メディアでも、トランプの演説の評価は真っ二つに分かれ、ワシントンポストは”トランプ大統領の支持者には傲慢で楽観的なメッセージを、支持しない者には悲観的で絶望のメッセージを示した”と伝え、”大統領の発言にはウクライナへの支援額など誤解を招くものや事実が疑わしい主張があった”と指摘し、その26か所を挙げていた。
政治専門サイト「ポリティコ」は、トランプ大統領の1期目の2017年に行われた施政方針を示す演説と比較し、”最初の演説では全てのアメリカ人の大統領になろうと試み、団結や超党派の連携を示したが、それとは全く対照的だった”とし”大統領選での支持者に向けた演説をそのまま思い起こさせただけだった”と伝えた。また、CNNテレビは”大統領はいつまでも選挙戦モードである事を浮き彫りにした”とトランプを揶揄した。
それに対し、FOXニュースは”大統領は不法移民の入国を減少させ、この6週間のうちに政権が達成した事を誇示した”と伝え、CBSテレビは(直後に行った世論調査として)大統領演説をみた人の中で”<支持する>と答えたのが76%で<支持しない>と答えたのが23%だった”と報じた。但し、演説を見た視聴者は民主党支持者が20%で、共和党支持者が51%としている。
確かに、2度に渡り、対ロシア政策に失敗したバイデンを”史上最悪の大統領だ”とこき下ろすのは理解できなくもない。だが、トランプが続投してたとしてもプーチンは平気で停戦を破り、ウクライナ侵攻を水面下で進めてたであろう。
演説でも、前政権の政策批判を繰り返し、就任以来僅か43日間で”米国は復活した”と自画自賛するのは狂言以外の何者でもない。
その上、グリーンランドを”手に入れる事になる”と強調し、”多様性や性的少数者の権利を重視する政策を覆した”と誇示し、温暖化対策の「パリ協定」を”ばかげたグリーン詐欺”と罵る。更に、政権に反発する政府職員は直ちに解任すると強権発動もいとわなかった。
全く、今回のトランプの大統領演説はデタラメもいいとこであり、そこから見えてくるのは、修復不可能なまでに分断と対立が進む米国民主主義の崩壊と危機である。
また、こうしたトランプ帝国の限界はアメリカ以外の国々も同じ様に映った事だろうが、ヒトラーやプーチンと同じく、戦時の独裁者の演説とは狂言という名のハッタリでもある。
先の首脳会談が決裂した事で、トランプは一時的に軍事支援を打ち切る事を明らかにしたが、これに大喜びしたのはプーチンだ。彼はゼレンスキー批判を繰り返し、トランプはそれに呼応するかの様に、ゼレンスキーに揺さぶりをかけてきた。
因みに、米国の調査会社は”今年の10大リスク”の2番目に”トランプ支配”を挙げているが、それを実感させる演説でもあった。
最後に
因みに、イアン・ブレマーが率いる調査会社「ユーラシアグループ」(米)は”2025年10大リスク”を発表し、最大のリスクとして”深まるGゼロ世界の混迷”をあげた。”Gゼロ”とは”国際秩序を主導する国家が存在しない状態”をさし”トランプ政権になり、世界は無秩序へと向かうだろう”とブレマーは指摘。以降のリスクも2位”トランプの支配”や3位の”米中決裂”、4位”トランプ政策”、9位”統治なき領域の拡大”、10位”アメリカメキシコの対立”など、トランプの返り咲きに伴うものが半数以上を占める。
但し、2024年の10大リスクの上位も①アメリカの分断②中東の危機③ウクライナの分断と、同じ症状を今年も引きずっている。
事実、沖縄タイムズの「社説」では、”かつて米国が世界のリーダーとして国際秩序の形成に大きな役割を果たしてきたのは圧倒的な経済や軍事の力だけではない”とし、”法の支配の尊重、文化の多様性、人道支援などのソフトパワーが評価され、それが外交面で大きな力を発揮したからだ”と繋げ、”それが今、米国から急激に失われつつある。その結果、国際社会で起きているのは不安定化と不透明化である”と纏めている。
確かに、アメリカの衰退は”秩序なき世界”を加速させ、国際社会は混乱するかも知れない。だが、1つの時代の終わりは1つの新たな時代の始まりでもある。勿論、中国がアメリカに代わり、世界の秩序に君臨する事が国際社会にとってプラスになるかは全くの不透明で、ロシアの様に悪の帝国になる可能性もあるだろう。
だが、”大国の論理”を掲げてきたアメリカの分断や衰退は、”力の論理”が限界にあり、新たな秩序を見出すきっかけになるのかも知れない。
一方で”今そこにある危機”とは言え、近未来に起こりうる事を予測するのは難しい。
事実、24年の10大リスク予想で言えば、1〜3位は的中と言えるが、22,23年でも予測されてた事で、現行の危機が過去から現在へ進行形で続いてるだけである。一方で、それ以下の的中率は半々の様な気もする。
"偶然の確率"で言えば、悪い事が重なる事も、いい事が続く事もよくある事で、現行の危機からそれに影響される危機を予測するのは容易でもある。難しいのは、現在の危機から新たな別の危機を予見する事だろう。
但し、トランプの政策は結果論ありきのそれに過ぎず、単に民主党と真逆の政策を表明しただけである。それが効力を発揮するかは全くの不透明で、多くのメディアや専門家が予想する様に、悪い方向へと傾く公算と確率が高い。
少なくとも、前政権を批判するだけでは政策とは言えず、スロットキン氏が指摘する様に”症状に対処してるだけで病気を治してる訳ではない”。
補足〜日米安保の危うくも不透明な未来
日米安保に関してトランプは、”我々は日本を守らなければならぬが、日本は我々を守る必要がない”と不満を顕にし、NATOの防衛費に関しても”全く不十分だ。彼らが払わないなら私は彼らを守らない”とまくし立てた。
これに対し石破首相は”日本はアメリカを守る義務は負わないが、基地を提供する義務を負う。それがどれ程重要な意味を持つか・・”と語ったのがやっとだ。
一方、元駐米大使の藤崎氏は”またかという感じで、安倍政権の時も同じ発言を・・損得で物事を見てる為に、大局で見れば米国の為になっていても・・・発言をまともに相手にする必要はない”と釘をさす。
全く、”医者は患者の病気を治すが、患者は医者の病気を治さない”と言ってるのと同じで、”戦争は2度としない”との日本国憲法を侮辱した発言であり、もっと言えば、安全保障条約と軍事同盟を履き違えている。
こうしたトランプのやり方は取引ではなく明らかにインチキであり、不公平で(結果的には)高く付き過ぎる日米安保の本質を国民は再考する必要がある。
そこで、巷でよく囁かれるのが、日米安保は軍事同盟ではないのか?有事の際は本当に日本を守ってくれるのか?の2点に要約される。例えば、防衛庁のデータベース「世界と日本」(1972年)にある様に、日米安保は戦争が起きた時の為にあるのではなく、戦争を起こさせない為にある事も日本人は知っておくべきだ。事実、日本で戦争が起きれば米軍がいても100%負ける。
故に、絶対に日本では戦争を起こしちゃアカンのだ。つまり、日米安保は外交的で政治的色合いに特化し、軍事同盟にはなり得ないとも言える。
しかし、そうした状況も今や”強い”中国の存在と台頭、それに北朝鮮やロシアの危険な挑発によリ、かつて東アジアや極東の安定と平和に大きく貢献してきた日米安保が、今や軍事的側面の色合いを強めてきたのも事実である。
確かに、中露が日本に攻めてきたら”米軍は本気で日本を守る事はないだろう”と(私も含め)考えてる日本人は少なくない筈だ。
日本人にとって、日米安保条約の一番の問題点は”米議会に委ねられる”との点にあり、米国は日本を守る"義務"はあるが、それより強い義務"も存在する。露骨に言えば、自国がヤバくなったら米軍は日本を守らない。つまり、日本との約束が国内法を上回る事はない。
特に、”自国1st”のトランプに日本を中国の脅威から守ろうという気は更々ないと思った方がいい。だが、トランプは自国の損得のみに特化した取引から、”守って欲しければもっと金を出せ”と日本政府をしばし挑発する。
一方で、アメリカにとって日米安保が流動的であったのに対し、日本にとってのそれは絶対的であるかの様に思える。多くの日本人は”アメリカに寄り添っておけば平和と安全は保証される”と本気で思ってる節があるが、昨今の老いたアメリカでは、その保証はどこにもない。
この様に、”防衛義務”が真の意味で担保されないのが日米安保の大きな問題点だが、日本はアメリカにとって多数いる同盟国の1つに過ぎないし、流動的とはそういう意味である。
現実として、日米安保は米国議会が事実上の決定権を持ち、大統領ですらそれより強い存在にはなり得ない。更に、有事の際に”100%守ってくれる”という保証はなく”どの程度の範囲で協力するのか”も明記されてはいない。米国依存が危険な理由がここにある。
だったら、日米安保を破棄し、新たな国との安保条約を模索するか?新たな核の傘を探すのか?それとも自国で核武装するのか?
結論から言えば、どれも現実的ではなく、効率もよくないし、それに危険すぎる。故に、新たな形の日米安保に巧く変異させる必要がある。
少なくとも、いたずらに防衛費を拡大し、精度の低いミサイル防衛システムでは、今やアジアの超大国に君臨した中国には対抗できる筈もないし、日本全国に散らばる原発を狙われたら、それだけでお終いである。
つまり、アメリカや中国やロシアなどの大国は戦争に耐えうるかもだが、日本はアカンのだ。
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