「マクナマラの誤謬」に寄せられたコメントに、ウクライナの起源はキエフ大公国(9世紀後半~13世紀初め)にあり、”ロシアもベラルーシもキエフ大公国を文化的祖先とし、両国の名の由来もキエフ大公国の別名である”ルーシ(Rus)”とされる”とあった。
プーチンは、ロシアがウクライナから誕生した歴史を理解し得なかったのだろうか?それとも理解する気がなかったのか?
後にロシアは、モスクワ公国として独立し、分裂したキエフ公国を侵略した。そして、今の世界一の核保有国であるロシア帝国に至る。
”マクナマラの誤謬”と同様に、単純な数的優位性を盲信し、ウクライナの歴史の全体像と今回の戦争の本質を見誤ったプーチンだが、これもまた”プーチンの誤謬”とも言えるかもしれない。
因みに、マクナマラは途中で自分の失敗に気づいたが、プーチンはロシア軍の置かれた不利な状況などを一切考えず、猪突猛進状態である。だが、プーチンにはまだ策が残ってるようにも思える。それとも単に”腐った野心”で終わるのか。
事実、ウクライナの大規模な反抗開始を見抜いてたかの様なタイミングで、ウクライナ南部のカホフカ水力発電所の巨大ダムが決壊した。
ウクライナの保安局は、ロシアの破壊工作グループが爆破した事を示す証拠(電話の傍受)を明らかにした。更に、ダムの決壊が爆発による事は、ノルウェーの地震研究機関が裏付けている。
アメリカの情報機関もロシアを疑ってるが、ロシア=ウクライナ戦争が(これまでのロシアの一方的な展開から)ウクライナの本格的な反撃という新たなステージに突入したのは明らかである。
そこで今日は、今回の戦争でウクライナの歴史が変わるかもしれない、その歴史について簡単に触れたいと思います。
対立と内戦と弾圧の歴史
現在のウクライナで人類が現れたのは旧石器時代初期で約30万年前とされる。12万年前から旧人(ネアンデルタール人)が登場し、4万年前には新人(クロマニョン人)が出現した。
その後、様々な民族や文化がウクライナの地を支配し、6世紀には東スラブ人がキエフ周辺に住み着いた。
9世紀に建設された(北は白海から南は黒海までを占める)広大なるキエフ大公国は、その後、分裂&衰退を繰り返し、13世紀初めにモンゴル帝国によって滅ぼされる。
因みに、ロシアの起源であるモスクワ公国はキエフ公国の北東辺境地にあった小さな公国だったが、周辺の諸公国を併合し、1480年にはモンゴル族の支配を脱し、モスクワ大公国となった。
その後、ウクライナの地は長い間、他民族による支配が続き、14世紀にはリトアニア大公国とポーランド王国がウクライナ北部に勢力を伸ばし、リトアニア=ポーランド王国となるも、16世紀にはポーランド王国に統合される。
その頃からポーランドやリトアニアからの逃亡農奴を中心としたウクライナ・コサック集団が現れ、コサックによる独立の動きが強まったが、18世紀末のロシア皇帝エカテリーナ2世により、完全にロシアの一部となる。
しかし、1917年2月のロシア革命以降、ウクライナで中央議会が誕生し、ロシアのポリシェビキ革命政府との対立が起き、やがて内戦が勃発。1918年には、中央ラーダ軍がドイツと組んでボリシェヴィキを撤退させた。が、その後も各政府が対立して内戦をくり返し、ウクライナの歴史は複雑化する。
そんな中、1919年にウクライナ社会主義共和国が成立するも、1922年にはロシアのボリシェヴィキ政府は内戦に勝利し、同年12月には、ロシア・ベラルーシ・ウクライナ・ザカフカースの4つの共和国を連合し、ソビエト連邦を結成。
当時、経済的に大きな役割を果たしてたウクライナだが、ソビエト連邦化による農業の集団化政策が進み、1932年にはスターリンによる人為的大飢饉が起き、ウクライナの人口の約20%が餓死。更に、ウクライナ指導者や共産党幹部など多くの人々が粛清され、長い間弾圧政策がとられた。
15の共和国で構成されたソビエト連邦は、ロシアが実質的な主導権を握り支配してだが、1985年にゴルバチョフ政権がグラスノスチやペレストロイカを実行するも経済は悪化。結果、共和国に独立を求める動きが次々と起き、1991年12月ソビエト連邦は崩壊する。
ウクライナはソ連崩壊と同じくして独立したが、ロシアは”15の共和国がNATOに入らない”との条件付きで独立を認めた。
独立後の1994年、「ブタペスト覚書」で(旧ソ連の核兵器が集中してた)ウクライナだが、核の放棄を認め、米露が安全保障を約束するも、結果的には反故にされた形となる。
その後、ウクライナ東部と南部はロシアの支配下にあった為にロシアとの結びつきが強く、一方で西部と南部はオーストリアやポーランドに隣接する為に欧米との関係が深くなっていく。お陰で、国内では親欧米派と親ロシア派の対立が続き、2014年2月にヤヌコビッチ政権下で起きた政変により対立は激化。結果、ヤヌコビッチ大統領はロシアに逃亡し、親欧米派の野党が暫定政権を樹立。
親欧米政権の発足に対し、今度はロシア系住民が人口の多くを占めるクリミア共和国がウクライナからの分離運動を起こす。これにロシアが軍事介入し、14年3月にクリミアのロシアへの併合を強行した。
2019年に誕生したウクライナのゼレンスキー政権はNATO加盟方針を立て、親欧米路線を取る。一方で、ウクライナがNATOに加盟すれば、NATOがロシアの国境に迫り、脅威となるし、更に、EU加盟となれば親欧米路線がより強まる事を、プーチンは強く警戒した。
ウクライナのNATO加盟を認めないプーチンだが、国境付近でロシア軍の増強させ、欧米との関係は更に悪化していく。
2008年、ウクライナとジョージアのNATO加盟を認めたNATO首脳会議の決定にロシアが反発すると、2022年1月にアメリカがロシアの要求を拒否する書面を公開。
対抗措置としてロシアは2月、ウクライナ東部のドネツクとルガンスクの2つの共和国の独立を一方的に承認し、ウクライナへの軍事侵攻を開始した。いわゆる、今も続くロシア=ウクライナ戦争である。
以上、「知っておきたいウクライナの歴史」やウィキを参考に纏めました。
最後に
ロシアとウクライナと言えば、(旧ソ連以降の歴史からすればだが)兄弟のイメージが強いが、キエフ大公国まで遡ると、親子の関係にある事が理解できる。勿論、母親はウクライナである。
プーチンは、かつての大国復活を目指し、勢力と領土を取り戻そうと躍起になっている。
しかし、ピョートルやエカチェリーナが支配したロシア帝国や、スターリンやフルシチョフが君臨したソ連とは、時代背景も戦争の形態も大きく異なる。
もし、”世界一の核保有国”という単純な数的指標だけで”戦争に勝てる”と判断したのなら、これこそがプーチンの誤謬であるし、腐った野心でもある。
かつて、ピョートルは自然科学の力を導入し、四等国家からの脱却を図った。エカチェリーナは数学アカデミーを作り、広大な帝国を築き上げた。フルシチョフは民主化や軍縮を進め、ソ連の宣伝も念頭においた宇宙開発ではアメリカを引き離し、更にキューバ危機ではアメリカを丸焦げ寸前にまで追い詰めた。
しかしプーチンには、これといった明確なコンセプトがない。勢力と領土拡大という幼稚で狂った邪心が存在するだけの様に思える。
歴史は形を変えて繰り返す。
もしそれが真なら、ロシアはモスクワ公国というちっぽけな辺境地に追いやられるであろうか?それともウクライナは、キエフ大公国という広大な国家に復活するのであろうか?
いや、ロシアはかつて全盛を極めた大帝国に君臨し、一方でウクライナは分裂と衰退を繰り返し、悲しい記憶からも忘れ去られるのであろうか?
少なくとも言える事は、この戦争が西側やプーチンが思ってる以上に長引くかもしれないし、一方でウクライナは(北ベトナム軍と同じく)ロシアが降伏するまでは”100年後も戦い続ける”であろう。
つまり、日本の歴史ほどには平坦で平和ではない。勿論、黒船以降の日本は複雑で激動の時代を生きてきたが、ウクライナは生まれつき、悲しき激動の時代を生き伸びてきた。
ロシア=ウクライナ戦争が台湾有事における日本に飛び火しない為にも、日本人が知っておくべきウクライナの悲しくも複雑な歴史ではある。
それにしても、実質はウクライナのほうか優位であるはずなのにプーチンのような狂った指導者が現れると事態は混沌としてきますね。転象さんがお書きでしたか、ウクライナは核を手放したのが間違いだったという記事を読んだ記憶がありますが、ウクライナも絶対に負けられない戦争ですね。たとえ百年戦争になっても…。
日本に非核三原則などというお約束があっても、守らない国があれば、素手で鉄砲を持った人達と闘うようなことになりますね。近隣国の中には、国民が飢えるほど貧しい国なのに核を持っているために態度のでかい国がありますが、日本はこのままでいいのかどうか。
ウクライナも含め、ヨーロッパの歴史ってとても濃密で複雑で、そして悲しい。
大半が平坦な歴史しか持たない日本人でいる事が良かったのか?
それともそれが悪い方向へと繋がるのか?
ビコさんも今はウクライナ戦争みたいな状態になってますが(勿論ビコさんはウクライナですよ)
情報化の時代、真にいい人は悪者にされ、真に悪い人は英雄とされる傾向にあります。
どんな時代においても我々は色んな国の歴史を勉強し、精度の高い尺度を持って人間を判断する必要がありますね。
いつもコメント有り難うです。
これも、大国による安全保障というものが如何に脆くも危ういかを見せつけられた気がします。
同じ様に、日米安保も台湾有事の際には、最悪ですが反故にされるでしょうね。
プーチンの腐った野心による失墜で済めばいいんですが、色んな所にも飛び火しそうな気もします。
ウクライナを交え、米露と共に三カ国でもっと踏み込んだ話し合いが必要だったでしょうね。
例えば、ウクライナが(米露間の)戦争に巻き込まれた時の為に、一部の核を配備したままにするとか・・
特に今の時代は国家間の戦争というより、政権同士の戦争です。つまり政策次第では簡単に国は滅びます。
結局、ブタペスト覚書も大国の論理だけで話が進み、プーチンの侵略戦争を生んだと言えます。
台湾有事も米中の大国の論理だけで進めば、安全保障なんてないのと同じで、国防費を増強しようが、日本の未来は丸焦げですよね。
勿論、米中に軍事力の明確な差があれば日米安保は有効に働くかもですが・・・
想定されてはいた事だが
ワグネル創設者プリゴジンは正規のロシア軍を内部から壊滅させ、新たな軍隊を作ろうとしているとの噂だけど
実際に、ロシア軍は我々の行動を歓迎してるとまで言い放っている。
CNNも中国メディアも速報で伝えてるから、噂は本当だろうね。
しかし軍事クーデターとみなすには、僅か2万5千人規模の民間軍隊ではロシア軍に簡単に潰される。事実、モスクワ進軍を急遽断念したらしい。
簡単にプーチン政権が転覆するはずもないけど、大きく局面が変わったとだけは言える。
こうした気まぐれな反乱は
各地で様々な連鎖反応を引く起こすのよ
プーチン政権が孤立するのは目に見えてたし
ロシア軍もバラついてきたから
ウクライナを含めた西側は
クリミアを攻め落としやすくなったのかな
もともと腐った政権に統率力はないし
プーチンのハゲ爺はモスクワを逃げ出し
故郷のサンプトペテルブルグに迷走する運命だったのかもね
歴史は形を変えて繰り返す
転んだサンの予言通りになりそうな(^^)
プーチン政権に亀裂が入るとすれば、軍内部の反乱だと思ってましたが、今回の武装蜂起は最悪のクーデターには繋がらなかったものの、戦局としてはウクライナに有効に働くと思います。
まるで2.26事件のロシア版を見てるようで、今回のクーデター未遂も後のロシアの歴史に重要な転換期を迎えるかもですね。
プーチン政権崩壊の引き金の一つになるかもですね。
クーデターは未遂に終わったものの、プーチンの強気な顔は、プリコジンに泥を塗られた形となりました。
Hoo嬢の言葉を言い換えれば
プーチンの腐った野心はそれだけで政権を内部から崩壊させ、自身の迷走を生む。
こうしたシナリオが現実になるのかは不透明ですが、ゼレンスキーは勝利を確信しつつある事だけは確かですね。