”The Infinitive Fight”というタイトルで、デュランとゴロフキン(GGG)のファンタジーマッチのポスターが目に入った。
いい感じに仕上がってると思った。ゴロフキン優位というのも、デュラン贔屓にしては悔しいが。実にリアルでもある。
デュランvsGGG、夢の対決
さてと、”デュランvsロマチェンコ”ブログでは、ウエイトの違いもあってか、実質上デュランの圧勝(10RTKO)であった。
この仮想対決の予想は比較的楽だった。というのも、フェザー級上がりのロマチェンコとライト級を主戦場としてたデュランとの力量の違いが明らかだったからだ。
それに、デュランが過去に闘った相手で、ロマチェンコのモデルに一番近いとされるエルネスト•マルセル(元WBA世界Sフェザー級王者)がいた。
ロマチェンコをも凌ぐ圧倒的なスピードと華麗なテクニックで、アルフレド•マルカノ、アントニオ•ゴメス、サムエル•セラノ、アレクシス•アリゲリョといった歴史上のレジェンドを撃破したマルセルは王者のまま現役を引退します。しかし、デュランとのノンタイトル戦では、デュランの”石の拳”に耐えきれなく、自ら闘うのを止めてしまいます。
しかし、相手がミドル級を主戦場としてるゲンナジー•ゴロフキンだと話は大きく違ってきます。かつて、ライトヘビーのアンドレ•ウォードやセルゲイ•コバレフも対戦を躊躇したというから、全盛期のゴロフキンの猛牛並みの突進力とスタミナには、流石のデュランも苦労するでしょう。
事実、ちまたの予想でも圧倒的にゴロフキン有利とされてますし、イラストを見てもゴロフキンの圧勝的な絵面ですね。
しかし、デュランのモデルに一番近いとされるセルゲイ•デレビヤチェンコには、ゴロフキンの僅差の判定勝ちだったものの、私のジャッジでは2Pほどデレビヤチェンコが有利だったような気もします(”ゴロフキンの限界と復活”も参照)。
勿論、既に37歳のゴロフキンはピークを過ぎ、明らかに劣化と老化が露呈していました。一方で、37歳当時のデュランは、”ヒットマン”ハーンズを2度も下したアイアン•バークレーに敢えて打ち合いを挑み、判定勝ちするなど、ハグラーに劣らないミドル級の超強打者にも、互角以上に渡り合える事を証明した。
デュラン贔屓の私としては、互いの若いピーク時にデュランとゴロフキンが拳をまみえたらどうなるだろうか?
私なりに描いてみたりもする。
勝つのはどっちだ?
同じ72kgでも、179cmのゴロフキンと170cmのデュランでは、やはりパッと見の体格差は明らかだ。
しかしリングに上がるとその体格差が全く消え去るのも、デュランのオーラと言うか、存在感と言うか、凄みと言うか。
本来なら公平をきたし、ウエルターで対戦させてあげたいが。80年代の”黄金のミドル”と2010年代の”衰落したミドル”とのハンデを考慮すれば、やはりミドル級での対戦が理想的だと思う。
事実、ウエルター上がりのカネロ•アルバレスはミドル級のゴロフキンを圧倒した。ライトヘビー級最強と謳われたコバレフも、力で押しながらも最後はカネロの強打に呆気なく沈んだ。
故に、力量も技量もカネロと同等のパフォーマンスを持つデュランと、ゴロフキンの夢の対決はさぞもつれる事になるというのが、私の予想です。
デュランが現役の時のように、慌てずに1年ほどの期間を掛けじっくりと調整し、ミドル級の身体に馴染んだ状態でゴロフキンと戦ったら?という仮定で話を進めます。
互いに接近戦を得意とするオーソドックスタイプで、無類のスタミナを持つ突進力のゴロフキンか?”石の拳”の破壊力を持つデュランか?で評価は分かれそうだったが。オッズは6対4ほどでゴロフキン有利だ。
運命のゴング
1R、体格に優るゲンナジーが一気に攻勢を掛ける。左右の重いストレートに、ボディへのロングフックを浴びせた。
デュランは”もっと掛かってこい!アンタのパンチはそんなもんか!”と笑って挑発する。
しかし、ゲンナジーは挑発には乗らず、ガードを上げてデュランのテンプルとボディを注意深く攻め込んだ。
多彩なコンビネーションに、デュランは戸惑った。剥きになってパンチを繰り出すも、冷静なゴロフキンの頑強なガードに弾かれる。
流石の”石の拳”も虚しく空を切る。
ゴロフキンはデュランのハードパンチを警戒してか、無理に攻め立てる事はない。序盤でポイントを稼いで、後半に仕留める作戦だ。
終了間際、デュランのショートアッパーがゴロフキンの顎を揺らした所で、1Rが終了する。
デュランのセコンドは何やら大声で喚き立てた。”もっと身体を柔らかく使え、レナード戦を思い出せ!左右上下にパンチを打ち分けろ”
2R、少しは冷静になったデュランだが、ゲンナジーは左右のストレートで距離をとり、相手の懐に潜り込み、ボディフックをのめり込ませる。
デュランもボディのショートで対抗するが、この日のゲンナジーは全てに冷静だった。
3Rも4Rも同じ様にゲンナジー有利の展開で、試合が進む。
リングサイドにいた親友のシュガー•レイ•レナードは叫んだ。”このままだとお前は確実に負ける。少しは頭を使え、本能だけで闘うんじゃない!”
デュランは閃いた。
”ボクシングはスラム街の喧嘩じゃない、ルールのあるスポーツだ。1ポイント差でも勝ちは勝ちだ”
試合が動いた
5R、デュランは珍しくガードを上げ、ゆっくりとゴロフキンに近づいた。ゲンナジーお得意のストレートを的確にブロックし、左右のウィービングを使い、その反動で左右のフックを見舞う。ダッキングでゴロフキンのフックをかわすと、その反動でアッパーを突き上げる。
堪らずゴロフキンは、クリンチで逃れようとするも、デュランは頭をゲンナジーの頸動脈に押し付け、スタミナを奪い、ボディをしつこく小突きあげる。
6Rも全く同じ様な展開で、ゲンナジーのスタミナを奪い、ボディと顔面にショートパンチを打ち分ける。
流石のゴロフキンにも疲れが見え始め、リズムが明らかに狂ってきた。戦況を打開しようと、力任せに打ち下ろしの右を放つ。
しかし、今日のデュランは冷静だった。レナードのアドバイスが効いたせいか、剥きになって打ち合う姿はそこにはなかった。
ゲンナジーの力任せの右には、左をコンパクトに合わせる。肩の力を抜いたデュランのコンビネーションは、”カザフスタンの猛牛”の突進を見事に食い止めた。
ゲンナジーのガードが少し下がったのを見たデュランは、”石の拳”をゲンナジーの左目尻に合わせた。相手の右と相打ちだったが、ダメージはゲンナジーの方が大きかった。
すぐさま左右のコンビネーションを左目に集中し、お陰でデレビヤチェンコで負ったゲンナジーの左目尻の傷がぱっくりと開いた。レフェリーが試合を止め、傷口のチェックをする。
デュランの視線の先には、リングサイドにいるレナードがいた。
”デュランよ、俺が言ったとおりだろう”
デュランも勝負を急がなかった。ボディと顔面にコンビネーションを打ち分け、ゲンナジーの力任せの強打にはスウェーとガードを上手く使い、見事に封じ込んだ。
試合は完全にデュランの優位かに見えた。誰もがそう思った。
6Rの終了間際、今度はゲンナジーの狂気のロングドライブがデュランのテンプルを見事に撃ち抜く。
堪らずデュランは、マットに大きく尻もちをつく。そこで6Rが終了した。
デュランの左目尻からも派手な鮮血が飛び散った。ハーンズ戦で負った傷口がぱっくりと開いてしまったのだ。
リングサイドのレナードは笑っていた。”これで試合は全くわからなくなったな”
突進か?石の拳か?
7R、息を吹き返したゲンナジーは一気に勝負をかけた。
体格差に物を言わせ、強引に攻め込んだ。破壊力あるストレートでデュランを棒立ちにさせ、ガードが上がった所をボディを滅多打ちにする。くの字に折れ曲がったデュランに、慢心の力を込めたアッパーが唸りを上げた。
白目を剥いたデュランに、ゲンナジーは一気に襲いかかった。勝負はそこで終わる筈だった。しかし、頭を突っ込みすぎたゲンナジーとダッキングで必死にかわそうとしたデュランの頭が強くぶつかったのだ。
互いの頭部から激しい鮮血が飛び散った。
試合が止められ、互いにドクターチェックが入る。
この休息で狂気に火が着いたのはデュランの方だった。本能が全てを支配した瞬間だった。
試合が再開されると、今度はデュランの”石の拳”が唸りを上げた。左右のフックをテンプルに見舞うと、ガードの隙間めがけ思い切り突き上げたアッパーカットは、ゲンナジーの戦意を打ち砕くに十分過ぎた。
白目を剥いたゲンナジーの顔面に”殺戮の拳”が雨あられと集中する。ゲンナジーも負けじと応戦するも、狂気が違いすぎた。
会場も狂気が支配した。
再びデュランのアッパーがゲンナジーの鼻骨を直撃すると、真っ赤な鮮血がほとばしり、呼吸が出来ないゲンナジーの口が大きく開いた。左右上下に顎を打ち分けると、ゲンナジーの口からも大量の出血が溢れ出た。
まるでドス黒い素手の殴り合いだった。メキシコ製の薄い10オンスのグローブがここに来てデュランに味方した。
セコンドはタオルを投げた。レフェリーは殺し合う二人の間に入り、試合を止めた。
カザフスタンの猛牛は棒立ちになったまま宙を見上げていた。
最後に〜試合が終わって
勿論、ゴロフキンとデュランを入れ替えれば、ちょうど真逆の展開になりますね。GGGのファンならあり得ない展開でしょうが。
しかし、ゴロフキンとカネロの2度の試合を見ると、80年代の”黄金のミドル”に耐え得るだけのタフさがゴロフキンにはあるのかな?と勘ぐってしまいます。
どうも私には、デュランの”スラムの狂気”が”猛牛の突進”を上回る様な気がするんですが。そう思えるのも単に、デュランのファイトスタイルが大好きなんでしょうね。
デュラン、ハーンズ、ハグラー、レナード…。黄金のミドルは、名勝負数え唄が観戦できた素晴らしい時代でした。僕も同じくデュランファンです。パナマの怨念、スラムの反骨を込めて突き出す石の拳の戦いは、まるで矢吹丈のように見えたものです。
やや線は細いですが、ヒットマンも嫌いではありません。デトロイトスタイルの奥から相手のダメージを観察し狙撃のタイミングを測る眼光は、怖ろしく、カッコよかったなと思います。
では、また。
多分、私と年代が近いんでしょうね。
”黄金のミドル”を知らない若い世代はゴロフキンやカネロがPFPだと信じて疑わないでしょうが。
今のボクシングはバードウォッチングみたいになってますもん。昔はガチンコの拳の殴り合いでした。日本でも昔はボクシングの事を”闘拳”と言ってました。
勿論、ゴロフキンも嫌いではないですが、カネロに完敗した時点で幻滅しました。そのカネロも私生活では色々と問題児らしく、今は質の低いのがそのまま王者に君臨するんですかね。
でも若い人からすれば納得いかないでしょう。
彼らは80年代の黄金のミドル級をユーチューブでしか知りません。レナードやハーンズはともかく、ミドル級最強のハグラーなんて名前すら知らんです。
ただGGGの全盛期なら、判定にもつれ込むのが妥当かな〜
ただゲンナジーはテクニックがなさすぎです。カネロ戦ではそれが露呈しました。少し悲しかったんですが、これがGGGの限界でしょうか。
一方デュランは試合を重ねる内に、テクニックに磨きがかかります。無気力な試合もありますが、相手が強いほどに狂気が唸るタイプですね。