世界中を襲った未知のウィルスに感染した”リターンド”が徐々に増殖し、それに対する人間たちの様々な葛藤と反応を描いたヒューマンドラマとも言える作品である。
因みに、”リターンド”(Returned)とは未知のウイルスの名前であり、そのウイルスに(潜在的に)感染した人を指す。
しかし、それら感染者の中でも(一部はだが)開発中のワクチンが効果をもたらせば、日常復帰(リターン)できるが、24時間毎にワクチンを打たないと、ゾンビの様に凶暴化する。
が故に、”リターンド”と呼ばれる人たちは常に偏見の目にさらされ、監視や排除の対象になる。
政府や軍はワクチンを供給し、感染者たちを管理保護するが、やがてリターンドへの反発は大きくなり、反リターンド派だけでなく一般市民による差別やデモが相次ぎ、各地で感染者らが襲撃され、殺される事件が多発する。
一方で、ワクチン在庫の枯渇の噂が一般市民にリークすると、各都市はパンデミックに陥っていく・・・
よくあるゾンビ映画やドラマの様に、凶暴化したゾンビが暴れまくるというマンネリ化した子供騙しのB級作品では決してない。
確かに、残酷で暴力的な描写は少なく、ド派手アクション展開を期待するゾンビマニアにとっては、序盤は拍子抜けするかもしれない。が、それでも徐々に何とも言えないデジャブ(既視感)にも似た不条理な展開に、深く考えさせられる皮肉な人間模様でもある。
作品の中では、感染者(リターンド)は社会的弱者のマイノリティであり、彼らを攻撃し批判する反リターンド派の市民は、次々と感染者らがかくまれてる病院や施設を襲撃する。
まるで、コロナ渦に端を発した”ヘイトクライム”を見てるようだ。つまり、リターンドがアジア系人種であり、反リターンドが白人層。日本人の私は複雑な思いで見てるしかなかった。
(両親がゾンビ化したという)小さい頃に暗い過去を持つ主人公のケイトは、リターンドを必死で救おうとする医療従事者で、彼女の最愛の恋人アレックスも実は”リターンド”であったのだ。つまり、ワクチンが途切れれば、その時点で彼も凶暴なゾンビになる。
彼女は医者の立場を利用し、非合法なやり方でワクチンを高値で買い漁る。しかし、全ては(過去の後悔を拭いさり)愛する恋人の為でもあった。
しかし、アレックスが親友にリターンドである事を勇気を持って告白した時、ドラマは一層複雑で理不尽な方向に傾いていく・・・
「The Returned」
以上、”ザ・シネマ”のバックナンバーを一部参考にして自分なりに纏めましたが、あんまり詳しく書くとネタバレになるので、この位で丁度いいかと。
てっきり北欧系のサスペンスホラーかなと思いきや、スペインとカナダ合作の映画(2013)である。しかし、「REC」シリーズの製作スタッフという事で、さすが斬新な何かを仕掛けてくるなって予感がした。
ただ、幕切れが中途で微妙な感じだったので、ぜひ続きをと期待したが、続編の噂はない。
全世界で5億8500万ドルという驚異的な興行収入を記録した今となっては伝説的なソンビ映画である「アイ・アム・レジェンド」(2007)だが、続編に関しては様々な噂がリークし、続編は無理だろうと思っていた。が、ここに来て、続編の製作がほぼ決まったという。
前回では、主役のウイル・スミスは死んだ筈だが、脚本次第では凡作になる可能性が高い。
ただ個人的には、「アイ・アム・レジェンド」よりも「ゾンビ・リミット」の続編の方がより現実味があり、シリアスでミステリーな人間ドラマとしても見応えがありそうに思える。
多くのゾンビ作品は、”人間対ゾンビ”という単純な構図である。故に、展開も結末も簡単に予想できるし、ウンザリ感や限界もある。
ゾンビホラーがサスペンスやミステリーやヒューマンの領域に踏み込めないのも、そういった理由によるのだろうか。
しかしこの作品では、ゾンビ(リターンド)を救おうとする医者と、リターンドをゾンビとみなして排除(ヘイト)しようとする市民との戦いをシリアスに描いている。
原題は「The Returned」だが、私的には「ゾンビ・リターンド」でも良かったかな。
つまり、ゾンビが生き返る筈もなく、潜在的な”隠れゾンビ”がワクチンのお陰で(表向きはだが)普通の人間として復活(リターンド)する。
近未来のゾンビ映画がどうあるべきかを教えてくれた映画に出会ったような気がした。勿論、「アイ・アム・レジェンド」も今やゾンビ映画の金字塔とも言えるが、「ゾンビ・リミット」も続編を作る事で、これからのゾンビ映画のあり方を変えてほしい気もする。
まさに、その作品こそが「ゾンビ・リターンド」ではないだろうか。
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